擬人の旅人 完結

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第1話


出会い、出会いとは、時に輝かしく 時に残酷なるもの。


それゆえ人々は、 もがき苦しみ続けるのだ。


その先にある 新たなる出会いのために。


新たなる幸福のために。




有る国の山岳地帯、空から一艘の宇宙船が飛来し 不時着した。


宇宙船と云っても、 その大きさから見てどうやら脱出船のようだ。


その宇宙船には‘ミパ.ン.ルゴ’成る宇宙放浪族が2体乗っていた。彼らは宇宙船の不時着時に作動させた反重力装置の起動により辛うじて生き残る事ができたようだ。


脱出船と思われる宇宙船に大きな損傷はなく何とか怪我もなく生き残った彼等は、船外のこの星の様子を探るため 外の情報を調べてみる事にした。


そして調査の結果、どうやら 地球の大気内では彼等がその身体のままでこの星で生きてゆくのは不可能だと云うことが分かった。


彼らミパ.ン.ルゴの身体ではこの星の大気が猛毒となり、直接触れたならば5分と持たずチリと化すだろう。


彼らの精神波で動く有線式船外探索ピットによって 船体自体も年密に調べて見たのだが、宇宙船が再び宇宙飛行をする事は無理であろう事も分かった。


それは墜落の衝撃で燃料が漏れ出た事によって、この星の大気圏を突破出来るだけの推力をえられそうにないからだ。


だが 幸いなことに、 船内では生命維持装置がなんとか機能しており、 脱出船を動かさなければ4ヶ月の間ならなんとか生きて行く事ができるだろう。


ほんの僅かな間だが命を繋ぐことは出来そうだ。


そこで彼等はこの星の生態系を調べようと、 ステルス機能を搭載した探索ピットを四方に放出し広範囲を調べることにした。


この探索ピットは先程の有線のものとは違い、セスナ機程の大きさがあり、ピット内のバッテリーで探査距離にして100km圏内を、時速90kmのスピードで1ヶ月程は自動で動くことが出来るのだ。


一ヶ月間の探索で 探索ピットが持ち帰った情報からこの星では、人間と云う生物がもっとも進化し繁栄している生き物だと云う事が分かった。


次に、その人間の言語、歴史、生活水準などを

分かる範囲で調べ上げ、それらの知識を彼等の脳にインプットした。


それとどうしても生きたままの人間の身体、サンプル、遺伝子情報が欲しかった。


それは彼等自身が人間に、人間の身体に再構成する為には必ず必要な情報なのだ。


彼等の宇宙船には分子分解再構成装置なる装置があり、それはいったん分子レベルまで戻した肉体を再び再構築し、遺伝子情報が解明された生物なら99%同じ姿に蘇生再生出来る装置で、彼等にとっては最後の希望なのだ。



遥か1億6千光年の先、ミパ.ン.ルゴの母星カイ・ン・ルペは有った。


かつては彼等に的した大気に緑が満ち溢れ、それはそれは美しい星だったのだが、


はるか3億年前、彼等の太陽系は、太陽は、寿命を迎えその活動を止めてしまったのだ。


彼等の先祖は住めなく成った母星を捨てて、 それぞれに新たな新天地を求めて宇宙空間へと旅立っていった。


彼等 ミパ.ン.ルゴは 平均で3千年前後の寿命を有している。


遥か果てしない宇宙空間での永遠にも等しい放浪の末、彼等自身も進化順応していったのだろう。


幾多にも分かれ放浪し続けるそのウチの一艘、そのまた脱出船が、 偶然にも地球に不時着したのだ。


隕石と衝突したのか、ワープ装置の故障か、はたまた長い宇宙空間での放浪の末 母船自体にも限界がきていたのか、なんにしろ 彼等は地球にやって来た。


そして、今にも死に絶えようとしている。


船内の生命維持装置もあと1月と半月持つか否かかというところ、即急に蘇生再生のための被験体を見つける必要が有った。


彼等にとって 唯一の救いは、生き残った2体のミパ.ン.ルゴのそのうちの1体が、我々で云う処の科学者だったこと。それも極めて優秀な。


彼等が飛来した時点での地球の暦は、16世紀後半の大航海時代真っ只中。南米大陸にもスペインやオランダなどの国々が進出し、領土を広めていた時代。


彼等はスペインの目をした美しい娘から遺伝子情報を得る事に成功した。


超小型の偵察ピットによる採取のため娘は蚊に刺された程にしか感じなかった事だろう。


運良く山の麓の町に父親と旅行で来ていたのだが、なんでもかなりの土地を納める領主の娘だったらしく詳しい情報を調べる暇は無かった。


肝心の遺伝子情報を手に入れることは出来たが、彼等には一抹の不安があった、脱出船の不完全な設備では再構成の成功率が20%にも満たないのだ。


それでもとにかく 彼等には時間が無かった。

その遺伝子から情報をえると、早速 彼等は 分子分解再構成装置による転生蘇生に取り掛かることにした。


僅かではあるがその望みに賭けるしかないのだ。

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