第34話 ケーキバイキング2-陽一視点

このエピソードから視点が陽一に変わります。

時系列がチョットずれることがあるかもですが、

そこは笑って許して下さいませ。


・・・・・・・・・・


矢野先輩が木村君を連れて、

バイキングに入って来た。


“あれが木村君か……


パッと見た目は目立たなそうだけど……

でも…… 雰囲気のある人だな……”


それが僕が木村君へ感じた第一印象だった。


僕達の所へやって来た木村君は、

少し緊張しているのか、

挨拶の声が上ずっていた。


だから僕も彼の緊張が解れるように自己紹介した。

彼も僕に自己紹介してくれた。


話し易そうな人ではあるようだ。


「木村君、一緒にケーキ取りに行こう!」


そう誘うと、木村君はカウンターまで僕に付いて来た。

見回すと、今まで見たことも無いようなケーキも沢山並んでいた。


「どれも美味しそうだね~

木村君はケーキはイケる方?」


お皿を渡しながらそう尋ねると、


「種類にもよるかな~」


と答えてくれた。


「どういうのが好きなの?」


「う~ん、フルーツ系だったら結構いけるかも……」


そう言ってキョロキョロとして、

フルーツタルトを見つけては目をパッと輝かせた。


“そうか……

タルト系が好きなんだな……”


瞬時にそう思った。

確かにフルーツがたっぷりと乗って、

美味しそうなタルトではある。


色んな種類のタルトを眺めていると、

木村君が


「陽一君はどういうのが好きなの?」


と尋ねて来たので、

彼の問いをちょっと考えてみた。


ケーキに対しては、

余り意識をしてこれが好き!と思ったことが無い。


「どうだろう? 

何でも行けるかも? 

でも沢山は食べれないかなぁ~

かなちゃんは結構いける方なんだけどね~」


「そう言えば陽一君、

お母さんの事かなちゃんって呼ぶんだね」


「そうだね~

僕、フランスで生まれたんだけど、

小さい時はママって呼んでたんだよ。

でも、親戚のお兄さんが要君って呼んでたから、

だんだんかなちゃんになっちゃった!」


「へ~ 陽一君、フランスで生まれたんだ。

凄いね!」


「う~ん、まあ、両親に色々とあったみたいだからね~

僕は小さかったから覚えて無いんだけど、

小さい時はお父さんと離れて暮らしてたんだ~」


「そうなの?」


「うん。

お父さんも、かなちゃんも、詳しい事は教えてくれないんだけど、

お父さんの家族と何かあったんじゃないかな?


僕、お父さんの家族に会ったこと無いもん!」


「え~ そうなの?

寂しくない?」


「まあ、最初からいなければ、

それが当たり前だからね~


僕にはお父さんも、

かなちゃんも、

妹のあ~ちゃんも、

矢野先輩もいるから寂しいと思った事は無いけどね~」


「そうなんだね。

そう言うものか~


でもさ、陽一君って矢野さんの事も先輩って呼ぶよね?


それはどうして?」


僕は木村君にそう聞かれてチラッと矢野先輩の方を見た。


矢野先輩はまたかなちゃんと何かイチャイチャ?としていた。


その光景を見たくなく、

僕はサッと二人から目をそらした。


「かなちゃんと矢野先輩が高校生の時の

先輩・後輩だったのは知ってる?」


「うん、うん、それは前に聞いた」


「フランスに居る時にね、

かなちゃん、

僕のお父さんと、矢野先輩と一緒に写った写真をずっと飾ってたんだ。


その時に、二人の思い出の話を一杯してくれて、

その時にかなちゃんが呼んでた、

矢野先輩っていうのが僕にも移っちゃった、

ていうのが始まり!


だからかなちゃん、今でもお父さんの事も、

佐々木先輩って呼ぶんだよ」


「へ~ 面白いね。

今度陽一君のお家にも遊びに行って、

是非お父さんにも会ってみたいな」


「うん、何時でもおいでよ!

お父さん忙しくって余り家に居ないけど、

週末だったらほとんどいるから!


矢野先輩も同じところに住んでるから、

みんな集まってご飯とかしたら楽しいかも!


かなちゃん、お料理上手なんだよ」


そうやって僕達は割と打ち解けて仲良くなった。


お皿一杯にケーキを取って席に戻ると、

先輩がかなちゃんの頭をポンポンとしていた。


それを見た瞬間、僕の血が沸騰したみたいになって、

嫉妬を覚えた。


先輩がかなちゃんの事を好きだったのは

昔の事だと分かっているけど、

時々先輩は疑うような行動をとる。


だから少しジョーダンっぽくしつつ、

つっけんどんに言ってしまった。


「何いちゃついてるんですか!

早くケーキ取りに行ったらどうですか?


かなちゃんも早く!

一杯美味しそうなのあるよ!」


それが僕の嫉妬をごまかす

精一杯の言い方だった。


2人が席を離れている間も、

僕と木村君の会話は弾んだ。


でもそこからは、

もっと折り入った会話となった。


そして席について、

木村君が一番最初に僕にした質問は、


「ねえ陽一君、君は発情期は?」


だった。

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