俺はただ君の名を知りたかっただけなのに、修羅な世界で生きることになった
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プロローグ
第1話:とっても長いプロローグその1
夢、夢を見ている。
そう紛れもなくこれは夢に違いない。
何もない真っ白の空間の中に俺 ―
「さあ、お前の願いを言え」
急に蛇はそのようなことを言ってきた。
その脈絡の無さに俺は目の前の異形の存在による恐怖よりも、自分の夢のバリエーションのあまりの無さに呆れの感情が先に沸き上がってきた。
(もしかして、寝る前に読んだインフレバトルマンガの影響か……)
「いきなり変な夢見だが付き合ってみるのもいいか」
俺はすかさず告げる。
「世界征服」
「無理だ」
蛇はすかさず告げて来やがった。
(まあ、そうだろうな)
いくら異形の存在とはいえ、そこまで大層なことが出来そうとはとても見えなかったので不思議と納得できた。
「なら、巨万の富を……」
「無理」
言い終わる前にぶったぎられる。
「美女だ。可愛く美しい女性を俺の嫁に……」
「無理」
「俺を絶世の美男子に」
「不可能」
「気に入らない上司が退職」
「無理」
(ギャルのパンティはお約束すぎるか)
(無理だ)
(こいつ直接脳内に!!)
「なら何が出来るんだよ。お前夢のくせして無理、不可能ばかりで融通が効かないな。俺の夢なら良い夢見ぐらい見させろよ。大体、絶世の美男子イコール不可能ってどう言う意味だよ! 仕事で酷使された早朝会議待機リーマンなめんな!!」
ストレスが溜まっており、一気に叩きつける様に言ってしまったが相手は白い巨体の蛇だ、怒らせた場合絞め殺されるか丸のみにされるかと冷静になって思いヒヤリとする。
「その……申し訳ありません。こちらにも色々と事情があって、その……出来ることなら叶えてあげたいのですが……」
急にしおらしい態度、それも半泣き謝って来たので、何か仕事でクライアントの無理を何とかかわそうとする自分と被る感じがした。
「いや、あのすまない。夢だからといって無理言い過ぎた。何か事情があるなら聞くから、そんなしょげた顔しないでくれ」
蛇の表情なんて分からないがなんとなく落ち込んでいる様子は分かったので取り敢えず慰めてみた。
白い蛇は何処から取り出したのか、俺の布団ぐらいのサイズほどあるハンカチ?で器用に鼻をかんでいた。
「では、事情をお話しますので、それを踏まえた上で願いをおっしゃって頂いてもよろしいですか」
頷いた俺に合わせるように白い蛇は語り始めた。
「まずはこれを見てください」
白い蛇は俺の前に口から吐き出した、バスケットボールほどの大きさの水晶玉が転る。
「これは人の煩悩を溜め込んだ宝珠です」
白い蛇は更に語る。
「この煩悩は現在107人分の願いを叶えた叶えた分蓄積されています。 あと、1回108回目の願いを叶えればこの宝珠は煩悩珠として完成します」
「なら、俺の願いを叶えれば良いじゃないか。もしかして内容に何か問題があるのか?」
「はい。実は宝珠に貯められる願いの煩悩は同系統の願いは重ねて貯めることが出来ないのです」
「同系統?」
俺の疑問に白い蛇が答えた。
「貴方が先ほど言われた願いは、既に過去の別の方々が願っておりますので、先ほどの願いを叶えても煩悩を溜めることが出来ません」
ちょっと待て
「願いを叶えたって、誰かパンティおくれなんて願いを叶えたのか」
「はい。いらっしゃいましたよ。ただ、願いが叶ったのにこの世の絶望みたいな顔をしておりましたが」
ネタで言ったのだろうけど、気の毒過ぎる。
せっかく楽に自分の願いが叶うチャンスだったのに、宝くじで一等が当たって当たり券を紛失したようなものだな。
「それで貴方の願いはある程度限られたものになりますが、何かお願い事はありますか?」
そう言われても俺はどうしたものかと悩む。
(しかし、108回目の最後の願いと言うことは、普通人が願う様な願いは、もう叶わないと言うことだよな)
「なら悪人をこの世の消してくれとかそんな願いとかは?」
「欲しいのは煩悩に属するものなので、殺意とか害意とかそういうものはちょっと… 以前も○○に死をとか、サイコパスな方々は結構居ましたので、そっちの願いは断ることにしております」
「あと、崇高なものも無理です。戦争を止めてくれとか世界平和とか煩悩じゃないでしょうそれ……」
確かに、煩悩じゃないなそれ
だが、そうなると難しい。普通の煩悩が秘める願いはほとんど叶っている。それ以外の願いか……
(あ、あった)
そう俺以外、多分誰も願わなそうな願いで俺が求めている欲求が
「願いはあるにはあるけど、一から説明するとなると少し時間がかかるが」
「時間については大丈夫ですよ。この空間の中では時間の流れはある程度調整可能ですので」
「よし、なら説明したいから俺の部屋にあるノーパを持ってこれるか? ちなみにこれは願い事ではないぞ」
「それくらいの融通は利きますので大丈夫ですよ。 あと貴方の所有物なら念じればすぐ手元に届きますよ」
その言葉を聞いて俺は愛機1号のノートパソコンと長方形の大きめの箱のゲームディスク(エロゲ)を召還し、プレゼンの為の準備を始めることにした。
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