第16話 死闘!オークジェネラル
俺はオークジェネラルの足元に入り込んで足を斬った…が意外と硬い。
オークジェネラルの攻撃を避けながらもう一撃入れるとやっと血が滲み出てきた。ん?何でこんなに硬いんだ??
奴の傷は直ぐに回復してゆく…再生??スキルにはそんなモノ無かったぞ!俺は鑑定を掛けてみる。
種族:オークジェネラル
レベル:58
HP:10688/11790
MP:680/720
攻撃力:10285/6892(+900)《×1.32》
防御力:5530/3524(+900)《×1.25》
回避:2469
幸運:69
スキル:統率、威圧、《鉄壁》、《豪腕》
装備︰将軍の鎧、将軍の斧
やはり再生は無いな…。一体何が…統率か?
統率︰オークを心身共に支配下に置き、自分の意のままに操る。また支配下に置いたオークが自分のダメージを身代わりとして引き受ける。
これか…なるほどね。って事は全滅させないとコイツを倒せないって事か…なるほど…これが討伐対象になる一因って事か。知らなかったぜ…。
「ファイヤーフィスト!!」
オークジェネラルは巨大な炎の拳をまともに喰らったが丸焦げになると直ぐに元に戻ってゆくが、それも構わずに俺はオークジェネラルにサンダーフィストやファイヤーフィストを何発も撃ち込んでゆく。そして周りを囲みながら襲って来るオーク達を斬ったりファイヤーブレスで焼いたりして行く。
オークジェネラルに斬り付けながら他の群がるオークも一刀両断して行く。流石にこの物量では俺にも攻撃は当たるがダメージは殆ど無い。ラッキーの防御力と物攻と魔攻耐性LvMAXのスキルによるものだ。
しかも当たる回数もさほど多くない。速度が違い過ぎるので殆ど当たらないのだ。当たるのは死角からの遠距離攻撃のみでHPが1か2削られるだけだ。俺はオークジェネラルの攻撃だけを避けていれば良い。
俺にはオークジェネラルの攻撃は当たらないが俺の攻撃はオークジェネラルが耐えてしまう…この形がしばらく続いたのだ。
普通ならば体力も尽きて来るので物量に押しつぶされるだろうが、ステータスが違い過ぎるので体力もまだまだ持つしMPもやっと半分減ったくらいである。マジックポーションも有るからね。何よりも『朱刃』のスキル”強奪”によってHPは直ぐに全回復する。まあ、そもそもHPが殆ど減らないけどな。
しかし、時間が経つにつれ、段々とオークジェネラルが押され始めて来た。
何故か?…それは俺達のレベルがどんどんと上がっているからだ。周りを囲みながら突進してくるオークだけじゃ無く、オークジェネラルのダメージを肩代わりしたオークの経験値がどんどんと入ってくるから当然である。
ここに来て上がりにくいラッキーのレベルが2つも上がり、ガッツは7つ、俺は14上がっているのだ。しかもラッキーのファイヤーブレスやガッツのファイヤーフィストとサンダーフィストのLvも10に上がり威力が増しているのだ。
俺はマジックポーションを飲みながら、余裕で周りのオークを斬り捨てて、ファイヤーフィストやサンダーフィストをオークジェネラルに当ててゆく。
その内に外が騒がしくなっている…調査隊の本隊が来たのだろうか?それならもっと早くコイツを倒せそうだな!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
オレはベッケル、調査隊の隊長として周辺を調査していたが、斥候がオークの巣の存在とオークジェネラルの発生を確認した。
しかも一人はオークに捕まり、この調査隊が組まれる原因となったオークの群れの襲撃で、オークリーダーを倒したサルナスと言う奴がオークの巣に入ったらしい。
「何故止めなかった!!みすみす殺す気か!!」
オレは斥候を叱りとばしたが、とにかく直ぐに向かって助け出さねばと考えた。
今の戦力ではオークジェネラルを倒すのは難しい。しかし、応援を待ちながら何とか耐える消耗戦を仕掛けるつもりだった。
オレは直ぐにギルトに報告させに行かせ、本隊を引き連れてオークの巣に向かった
オークの巣に到着したオレたちの目の前にはオークの死体が無数に転がっていた…コレはオークリーダーを殺ったサルナスって奴の仕業なのか??
とにかくオレは皆を引き連れオークの巣入るとオーク達が襲い掛かって来た。やはりサルナスって奴は死んだのか…馬鹿な奴だとその時は思っていた。
しかし、オークの巣にしては圧力が少ない。しかもオレたちの前にはまだまだオーク共の死体の山がある…如何なって居るのか??
オークを倒しながら更に進むと奇妙な事が起こり始める。オレたちの目の前のオークが突然火を吹いたり雷に撃たれたようになり倒れるのだ…しかも数十体単位に!
オレたちは更に奥に進む…そして大きな空洞に出ると、無数のオーク達がいる奥の方でオークジェネラルらしきデカいオークが居た。そしてオークジェネラルとオーク達に攻撃をしている男が居たのである。その速さはオレの目でも追いつくのがやっと…しかも余裕タップリじゃねぇか!!
(な、何なんだアイツは??!!)
するとオレたちに知らせて来た斥候が言った。
「サ、サルナスだ!アイツ、生きてやがった!!凄えぞ!!」
アイツがサルナスだと?ありゃあDクラスの動きじゃねぇぞ!一体何者なんだ??
オレたちに気付いたオーク達がコチラに向かって来る。
オレはオーク達を殲滅する為に号令を掛けた!!
「オーク共を始末しろ!!援護して奴に群がるオークを減らすんだ!!魔法士とアーチャーはあの男の援護を!!」
オレは指示を飛ばしながらオーク共を斬り捨てて行く!
(とんでもない奴だな…コレでDランクだと?信じられん…しかし、これなら行けるかもしれん!!)
アイツならあの化物を…そんな期待にさせる奴の奮闘ぶりだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
調査隊の本隊が下っ端オークを引き受けてくれるのでオレはオークジェネラルをガッツリ攻撃出来る様になった。
「ファイヤーフィスト!!!」
奴にダメージを与える度にオーク共が少なくなって行く。更に本隊がオーク共を削るので間違い無く俺たちの勝利が近くなる。オレは速さを上げて攻撃を繰り返す。
「サンダーフィスト!!!」
「ファイヤーブレス!!」
オークジェネラルはしぶとく耐えていたが、遂に取り巻きのオーク共が制圧された様だな…。それが証拠に奴の左腕が俺に斬られた後で元に戻らない。
「グオウオオオ!!!!!」
オークジェネラルは右腕一本でデカい戦斧を振り上げて俺に叩きつける!!
しかし俺は『朱刃』を斜め下から跳ね上げてソレを弾き返す。そして返す刀で右腕を斬り落とした。
叫び声を上げるオークジェネラルに向けて静かにこう言った。
「あばよ…豚野郎」
俺はジャンプしてオークジェネラルの首を斬り落とした。
俺達は更にレベルアップした。俺は8つ、ラッキーが1つ、ガッツが4つである。
一気に8つ上がったので、しばらく振りにレベルアップ酔いをした様で膝を付いてしまった。
すると近寄って肩を貸してくれる者がいた。
「サルナス!!大丈夫か??」
「お、おう…アーディーか…済まねえ…間に合わなかった。助けられなかったぜ」
アーディーは「お前が謝るな!馬鹿野郎!」と泣いていた。コイツ良い奴だな…。すると後ろから更にやって来たのが居る。コイツ強いな。
「お前がサルナスか…こんな無茶苦茶しやがって。しかし、本当なのかDクラスってのは?」
「ああ、Dクラスは本当だ…アンタが隊長さんかい?少し痺れてたんだ、助かったよ。礼を言う」
「礼だと?馬鹿言うな。礼を言うのはこっちの方だ…それにまだまだ余裕があったろう?まあ、良いか…俺はベッケル、レイダースのBランク冒険者だ。今回は助かった…ありがとう」
なるほどBクラスか…流石にオーラが違うな。
そしてベッケルはちょっと顔をしかめて話し始める。
「それでだな…非常に言い難いんだが…」
「ああ、討伐の証だな。魔石と斧は持って行っても構わない。俺は鎧と肉を貰えれば充分だ」
「本当か?コチラは助かるが…それで良いのか?」
「ああ、たまたま通りがかりの押し掛け助っ人だからな。縄張りだの分け前だので厄介事になるよりマシだよ。オークの群れのも調査隊の皆で分けてくれ。あっ、ジェネラルの肉を多めに欲しい」
「肉か?分かった。本当に助かる…レイダースのギルマスにはキチンと報告するから…悪い様にはしない」
「なぁに、鎧が貰えれば問題無いさ、気にしないでくれ。レベルアップも出来たしな。肉は大食漢が居るのでね」
「大食漢?お前、子供でも居るのか?」
「子供?…まあ、似たようなもんかな」
ベッケルとの話も終わり、少し休んで回復した俺はオークジェネラルの鎧を鑑定をした。
将軍の鎧:オークジェネラルの鎧。防御力(+900)、鉄壁の
コレで鱗シリーズとはお別れかな。鉄壁の付与が嬉しいね。
それにしても、今回のがまさかオークジェネラルの発生に繋がるとは…巡りあわせが良いのやら悪いのやら…。
しかし、オークリーダーの群れの件からモヤモヤしていた気分は晴れた。コレで解決なのだろう。
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