第27話懺悔と告白
「ハル」
ガルフォンの異空間から出て、私がひとりで居る時にティティに呼び止められた。
「?」
「………、やっと…逢えた…ね。…ムツキ」
ティティの
「やっぱり気付いていたんだね。ティーニャ」
「ハルと…ムツキの…魂は…一緒」
ティティは頷きながら言う。
「フィルの…こと…だけど…」
「………イグニに似てるよね?」
私はティティが言いたいことが“分かった”ので、そう聞くとティティは頷く。
「…あの…
「フィル君の紅茶を混ぜる
「イグニの…言いたい…ことや…確認…したい…ことが…ある時と…一緒…だった」
やっぱりティティが耳を反応していたのは、イグニとフィル君が似てるって気付いたからだったんだ。
「それに……“生贄”の…話を…聞いても…驚いて…なかった。
………“生贄”のことは…知っていた…と、思う」
(王宮が【魔王打倒派】と【魔王“封印”派】に派閥が分かれてるって言っていたけど…それと関係あるのかな?)
「魔王“封印”のことは……、私がフィル君に聞いてみる」
ティティは私の手を両手で握りしめて。
「たとえ…前世の…ことでも…“生贄”に…された…記憶が…ある…ことは…辛いこと。
もし…ハルが…聖女の…役目を…放り…だしたい…時は…言って、ボクが…逃す…から」
「ティティ…ありがとう」
私はティティのおでこにコツンとした。
ーーーー
私は無事に【闇ギルド商会】に来た目的の“スキル”をゲットした後、既に日が暮れていたので家そっくりなテントの自室で休んでいた。
(どうしよう眠れない)
私はベットから起き上がる。
(
私はフィル君の自室のドアの前まで来たが、ノックを出来ずに固まっていた。
(こんな夜中に来ても迷惑だよね。温かい飲み物飲んで休もう)
(あれ)
リビングに来るとフィル君が縁側に座って草花が咲き乱れる庭を見ていた。
月光に照らされてフィル君の大人っぽさも相まって銀髪と緋色の瞳がとても綺麗で幻想的だった。
「フィ」
「ムツキ、ティーニャ、イーディス」
ドックン!
「大切な仲間だったのに…ぼくが皆んなを巻き込んだ」
月を見上げるフィル君の頬に何か光るものが零れ落ちる。
(あれは涙?
どうしてフィル君がそう言うの?)
ドックン!
「ぼくが…あの男から封印の真実を聞けてたなら、ムツキとティーニャも死ぬことはなかった……イーディスもムツキと幸せになれたのにっ」
フィル君の瞳からどんどん涙が溢れ出す。
「ごめんっ、本当にごめん」
懺悔に近いフィル君の声がリビングに響く。
私はただただ呆然に聞くことしか出来なかった。
「……魔王の全てを…終わらせる。その為にぼくは……弟の…アルドの子孫に…生まれ変わったんだ」
(弟?アルド?子孫?生まれ変わった?)
「……イグニーアだった時にした約束を今度こそ守る」
イグニーアの名前が出て私の中の点と点が繋がった気がした。
アルドはイグニの弟のアルド王子、フィル君はアルド王子の子孫でイグニの転生者なの?
「フィル君」
「どうしてここに?」
「眠れなくて」
「そう。…そうだね」
私はキッチンでケトルでお湯を沸かし、カモミールティーを2人分淹れた。
自分の分に蜂蜜を一杯だけ入れて、蜂蜜が入ってない白い湯気がたつマグカップをフィル君に差し出す。
「はい」
「ありがとう」
私はフィル君の隣に座り、静寂が包む。
「さっきの聞いてた?」
「うん」
「そっか」
フィル君は短くそう答えるとまた静寂が包む。
どのくらいそうしていただろうか、そよ風が私とフィル君の頬をやさしく撫でる。
「フィル君はイグニ…イグニーアの生まれ変わりなの?」
「…………そう、だよ。ハルはムツキの生まれ変わりでしょ?」
私はカモミールティーを飲んでから、静かに頷く。
「私がムツキの生まれ変わりだって、いつから気付いていたの?」
「最初は手料理を食べた時、懐かしい…ムツキの味にとても似ていて、ただハルとムツキは同郷だから味が似ててもおかしくないって思っていた。
次は最初にガルフォンの異空間に行った時、ハルが使った炎魔法がムツキと同じだった。
それからはムツキと同じ仕草が多くて、確信に変わったのはティティから
「ハルは?」
「私は…召喚された時からずっとフィル君がイグ二に似てるって思っていた」
「そんな前から?」
「ティティも似てるって思っていたみたいだけど…、さっきの聞くまでは確信しなかった」
「そっか」
また静寂が包む。私達のマグカップの中身はもう空っぽだ。
(これだけは確認しないと)
「イグニは“生贄”のこと知っていたの?」
フィル君は静かに頭を横に振る。
「全てが終わるまで知らなくて、知った時はもう手遅れだった」
「……そっか。……これからどうするの?」
「『闇の森』に行く」
「『闇の森』ってイーディスに会いに行くの⁉︎」
「アルドが……イーディスの行方を見つけられていれば……『闇の森』で僕を待ってる」
「どういうこと?」
「………………………」
フィル君は何も答えず、ただただ月を見上げていた。
その姿はとても儚くて、
(なんだろう。イグニが魔王“封印”がある
私の疑問に答えてくれる人は誰も居なかった。
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