第25話約束
『ここは…』
(何処?)
ティーニャは上下左右何処までも綺麗な青空が広がる不思議な空間に真っ白な光の玉を抱えて立っていた。
遠くに『魔王神殿』の奥、ムツキの身体に寄り掛かって動かない
『ムツキのところへ戻らないと』
光の玉を抱えたままティーニャはムツキが居る『魔王神殿』へ歩き始めたが、1時間、2時間、何時間過ぎても『魔王神殿』に辿り着けなかった。
パシャ
『…水』
(空だと思っていた)
ティーニャは空だと思っていた足元が真上に広がる青空を鏡の様に映している水だと気付いた。自分の足元からムツキが居る『魔王神殿』に眼線を戻すとティーニャはある事に気付いた。
(アレは私が抱えてる
聖女達の身体の中心からティーニャが抱えている光の玉と同じモノがあるのに気付いた。
(ムツキの光が小さい?)
ムツキと聖女達の真っ白な光を見比べると、ムツキだけ半分ぐらいの大きさだった。
(私が持ってる光とムツキの光を足したら同じぐらいの大きさになる)
そうぼんやり思っていると
『…ニャ』
『っ!』
微かにムツキの声が聞こえて、ティーニャは周りを見渡した。
『ティーニャ』
『ムツキ何処?』
(『
ティーニャは『魔王神殿』に居るムツキを見つめてると
『下だよ』
(下?)
足元を見るが水面に映った青空と
『ティーニャ!時間がないの、早くしないといけなくなる』
『い…いけ?』
『このままだとティーニャがおちてしまうの!』
ティーニャは意味も分からず首を
『一緒にいこう』
眼の前の光の玉からムツキの声が聞こえた。
『ムツキなの?』
『うん、
『半分?』
『もう半分はわたしの
ムツキの言葉を聞いて、ティーニャは『魔王神殿』の聖女達と
(九千年“封印”されてる『魔王』の生死は分からないけど…)
ティーニャは
(今、ここに居るわたしは…魂なのね)
そうティーニャは死んだ。
『ムツキ守れなくてごめんね』
『わたしも…巻き込んで、ごめんねぇ』
ディアーナ王国の問題に巻き込まれたのはムツキなのに。
(
もう一度会えるか分からないけど。
『生まれ変わったら、また会おうね』
『また?』
『うん。また会ってイーディスをぶん殴って』
『クゥとクゥの子供に会いに行こう、約束ね』
『…クゥの…子供?えっ、まって、どういうこと⁇』
急なカミングアウトにムツキが戸惑っていると、ティーニャはくすくすと笑う。
『わたしとクゥしか知らないけど、クゥのお腹に赤ちゃんがいるの』
クゥの妊娠を知らせる為に王宮に行った時に聖女が魔王の“封印”の“生贄”だった事を知った。イーディスとイグニも探したけど見つからなかった。
『生まれ変わったら…だよね?クゥ生きてるかな?』
『大丈夫だよ。クゥの“幻狼”の寿命は三千年〜四千年だから間に合うと思う』
“輪廻転生”は約千年の前後に
前世の記憶の有無は個人それぞれだが、寿命以外の死因…殺害や病死、事故死など未練を残した
『イーディスはダークエルフだから生きてる可能性が高いし』
ティーニャはムツキを安心させる為に説明を続ける。ダークエルフは“幻狼”以上に長寿で魔力さえ在れば食事しなくても生きていける魔法や自然を操る事に長けた種族だ。
『…ねぇ、ティーニャ』
『ん、どうしたの?』
『イグニとは…もう会えないよね“生贄”の事知っていたかどうかも確認出来ないよね?』
ムツキの問いにティーニャは何も答えられたかった。
(イグニは
”
(わたしは“
ムツキとイグニの生まれ変わりが会える可能性はとても低い。
『イグニは…わたしがイグニが生まれ変わるのを待って“真実”を確認してからぶん殴る!
ティーニャの瞳から涙が
完璧に“封印”されていた魔王の“封印”を不完全にした人が居た事をこの時は誰も知らない。
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