第3話 とは言うものの?

「天使って、どうすればいいの? どうしてパパは幽閉されちゃったの?」


 今さらながらあたしはアイビーに事情を聞くことにした。だって、あまりにも衝撃的なことがつづいちゃったから、全部知りたくなるじゃない?


「天使が人間と恋をするのはご法度はっとなんだ」

「ごはっとって、なに?」

「禁じられているってことさ。ましてや、おまえの父親のマサハルは、ヤヨイの守護天使だった。本来守るべき人間と恋をして、子供が生まれてしまった。絶対にあってはならないことが起きてしまって、天界はパニックになり、とりあえずマサハルを幽閉した。ただし、時々はユイナと話ができるよう、とりはかられてはいるのだが、まぁ、それだけだ」


 え? 待って。いろいろと待って。


「ねぇ、もしかしてパパにマサハルって名前つけたの、ママ?」

「そこかっ!? そうに決まっているだろ?」


 アイビーはあたりまえ、とばかりにあたしに怒鳴った。


「怒鳴らないでよぅ」


 こわくておもわず涙ぐむあたしに、アイビーはすまん、とすぐに頭を下げてくれた。すぐ怒鳴るけど、案外いいやつなのかもしれない。


「ぐすん。それで? あたしが人間の恋をかなえることができたら、パパは自由になれるって、本当なの!?」

「ああ。そういう約束なんだ。ぶっちゃけ天界でも、なんでこんなに長期間幽閉しなきゃならないのか、マサハルをもてあまし気味でいるんだ」

「だったら、解放してくれればいいのに」


 まだ少し涙ぐんでいるあたしにティッシュペーパーを箱ごと投げてよこしたアイビーは、そうもいかねぇんだよなとささやくように言った。


「まぁ、一応規則だし? 要はおまえがだれかの恋をかなえてやればすむことじゃん?」

「それは、そうかもしれないけど。ねぇ、あたしのこの輪っかや羽根って、ふつうの人間には見えないの? あたし、永遠にこの姿のままなの?」


 あたしは必死になってアイビーを問いただした。ただし、体は不安定にゆらゆら浮かんでいるため、なんとなーく、緊張感がない。


「あたし、このまま死んじゃうのはイヤーっ!!」

「いや、天使になっただけで、死ぬわけじゃないから。それと、体を安定させたいなら、メンタルからきたえなきゃな」

「メンタル? なんで?」

「気持ちって、大事なんだよ。それと、だれかの恋をかなえることができたら、その交換条件として、おまえがこれから天使のままか、人間にもどれるかを決める権利がある。まぁ、天使のままで人間界にいることもできるんだがな。ちなみに、その選択ができるのは一回だけだからな?」


 メンタルに交換条件って、なんだかわからないけど、すっごくめんどうくさそう。なにをかくそうあたし、根っからのめんどくさがりで、親友の青葉あおば ミチルちゃんにもあきれられてしまうほどなの。


「まぁ、どっちにしても、おまえの活躍次第でマサハルが解放されるかどうかがかかってるんだけどな」


 ちょっと待って。めちゃくちゃ圧力かけられてるんですけどーっ!?


 つづく

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