子育てしながら思うこと【その日は来る】

『ちょっとだけ待っててね』


9月になると思い出す景色がある

娘(おかめ花子)が初めて

靴を履いて外を歩いた日の事だ


今では見る影も無いが

おかめ花子は3歳まで、

とっても臆病な性格だった。


兄(饅頭太郎)はどこに行くでも平気

目を離したらアチコチ

迷子になってしまう程

アクティブな性格に対して


おかめ花子は、

いつも母ちゃんの傍から離れず

いつもそっと母ちゃんの服の裾を

握って横にいるタイプだった。



そんなちょっぴり臆病なおかめ花子に

1歳の誕生日、靴を買った。

しかし、部屋は歩ける花子が、


靴を履くと途端に怖くて泣きだしてしまう

結局靴は買ったものの、

春・夏と靴を履いて歩く事は無く

結局季節は秋を迎えてしまった。


母ちゃんは焦っていた。

「なんとか1歳半検診までには

靴を履いて歩けるようにならないと…」



それでも花子は靴を履いた途端

その場から動かず泣きだした。


母ちゃんは靴を持って、

何度もおかめ花子を何とか歩かせようと

練習に公園に出かけた。


そんな日が続いて、9月になり

我が家はキャンプに出掛けた。


初秋の風が心地よく頬をかすめる。

すがすがしい気持ちになった


そこで急に!!

おかめ花子が靴を履きたがったのだ

嫌がる素振りは見せず

自分から歩こうとした。


その表情はとっても嬉しそうで、

見ているこっちまで

つられて笑顔になった。



その時に思った。

焦らなくてもその日はやってくる

いや、やってきてしまうのだ。


思えば、母ちゃんは

子育てに行き急いでいた

とにかく早く大きくなって欲しかった


大変だったから…。


なかなか寝ない饅頭太郎0歳の時は

「早く寝るようになって欲しい」と


饅頭太郎が後追いを始めた時は

「もう、トイレくらい

ゆっくり行かせて!早く大きくなって」と


饅頭太郎とおかめ花子が目を輝かせて

「母ちゃん、見て!見て!!」

とひたすら言う時期には、

「母ちゃん、見て」という言葉が

ストレスに感じた時もあった。



二人が登園・通学し始めて

初めて自分の時間が出来た今、


大変だったその瞬間の一つ一つが

どれも愛おしく感じる

もう戻れない一瞬一瞬が

たまらなく愛おしい


少しだけ、ほんのすこしだけ

心に余裕ができたのだ


「早く大きくなってね」

なんて言いながら、今度は

「ゆっくり大きくなってね」


なんて都合の良い母ちゃんで

ゴメンね。


饅頭太郎に

「クリスマスプレゼント何が良い?」

って聞いたら

「一人で寝れるベッドが欲しい」って


母「え??まだ1年生だし早いよ!!」

太「だって母ちゃん狭い狭いって

いつも言ってるじゃん」

母「でも、一人で寝たら、

夜きっと寂しくなるよ?」


寂しいのは母ちゃんの方。

シングルベッド2つに4人寝る、

そんな狭さが急に愛おしくなった。


ゴメンね、太郎。

もう少しだけ、もう少しだけ

母ちゃんに心の準備をさせてね♪





『誕生日に思うこと』



この半年は母ちゃんにとって

人生で一番大変な半年だったかもしれない。


パニック障害・鬱病を発症したのだ。


楽しい・嬉しい・美味しい

そんな事が感じられずに

一日一日が必死だった


調度芸能界でも悲しいニュースが

重なる事があって、

一時期母ちゃんはテレビを

見れなかった。


どうしよもなくなって、

実家に帰ったこともあった。


それでも今こうして徐々に

回復出来ているのは

両親や父ちゃん、

子供達の存在があったからだ



この半年、母親らしい事は

何も出来なかったから…。


そんな申し訳ない思いで

饅頭太郎の誕生日は

やりたい事を全部してあげたいと

そう思った。


前日に色々聞き出して、

プログラムまで作った。




お父さんとお母さんに抱っこしてもらう

お父さんとお母さんの間で寝る


そんな事を嬉しいと思ってくれる

まだまだ可愛い所もあるなと

思ったら、


「来年は重くて出来ないかも

しれないかもしれないでしょ?」

って…。

そんなこと考えてたんだね。


夜、ケーキを食べてたら、

急に母ちゃん熱い物が込み上げてきた。


母「太郎、7年前の今日、

太郎が生まれた日は

父ちゃんと母ちゃんにとって、

人生で一番嬉しい日だったんだよ

もちろん花子の時もね」


母「これから大きくなって、

すごく悲しい事もすごく苦しい時も

あるかもしれないけど…。そんな時も、

太郎と花子が生まれた日は

父ちゃんと母ちゃんにとって一番

幸せな日だったって、覚えておいて」


太郎は

「そんな事よりケーキ食べようよ」

ってあんまり分かってなかったけど


それでも良いや。

来年も再来年も、

太郎が恥ずかしくなっても、


誕生日の日はちゃんと伝えよう

大きくなって苦しい事、辛い事

があっても


母ちゃんが支えてもらったように


無償の愛のある場所を

どうかどうか思い出してもらえる

ように

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