ゴットカード2

渋谷かな

第1話 チュートリアル

「おはよう。ポーちゃん。」

 佐藤ポン子。普通の小学一年生の女の子。通称、ポーちゃんと呼ばしている。

「おはよう。愛ちゃん。」

 鈴木愛。ポーちゃんのお友達のクラスメイト。

「ポーちゃんもゴットカードやろうよ。」

「ゴットカード?」

 友達の愛ちゃんが如何わしい遊びに勧誘してくる。

「そうよ。ゴットカードは願い事が叶うカードゲームなのよ。」

「うそ~ん。そんなカードゲームないやろう?」

「本当よ。大きなeスポーツの大会で優勝すればお金も貰えるし、好きな人に告白してゴットカード・バトルを挑んで勝てば相手は付き合うことになるんだから。」

 恐るべしゴットカード。

「設定が無茶苦茶ね!? 私はやらないわ。ゴットカードなんて。運命は自分で切り開くものよ!」

 ポーちゃんは自分の意思をしっかり持っている少女。

「いいの? ポーちゃん。ゴットカードに勝ったら相手に宿題をやってもらえるよ。」

 愛ちゃん、悪魔の囁き。

「はい! やります! ゴットカード! さあ! 愛ちゃん! 私とゴットカードで勝負よ! 今日の宿題をどっちがやるかをかけてね! アハッ!」

 そしてポーちゃんは誘惑に弱い少女でもある。ポーちゃんの夢は宿題をしなくて良いことである。

「ポーちゃんらしい・・・・・・。でもポーちゃんはゴットカードを持ってないでしょ。」

「しまった!? 私、カードを買うお金なんて持ってないよ!?」

 小学一年生のポーちゃんの少ないお小遣いではカードを買うなんてできなかった。

「大丈夫よ。ゴットカードは基本無料で遊べるスマホゲームだもの。」

「やったー! 無料だ! わ~い!」

 ポーちゃんは無料やタダという言葉にも弱かった。

「ポーちゃんはまだまだ子供ね。」

「そういう愛ちゃんも子供だからね。」

 二人は仲良しである。

「ただし強いカードや強気アイテムが欲しかったら課金してね。」

 商売上手な愛ちゃん。

「あった! ゴットカード! くらえ! 必殺! インストール!」

 ポーちゃんはスマホゲームでゴットカードを見つけた。そして子供らしくインストールボタンをタッチするのであった。データの読み込みが終わりゴットカードゲームが始まる。

「おお! 始まった!」

 ゴットカードの開始である。

「まず自分の名前を入れてね。」

「ポーちゃんっと。」

 ゴットカードのゲームのアカウント名に自分の愛称を入れる。

「次に1枚カードを引いてください。このカードがポーちゃんと一緒に戦うキャラクターカードになるのよ。」

「おお! そりゃスゴイ! 私のカードは何かな? ポチットな。」

 ワクワクしながらポーちゃんはカードを1枚引いた。

「歩兵。」

 カードは歩兵のカードだった。

「やったー! 歩兵さんだわ! わ~い!」

 大喜びのポーちゃん。

「愛ちゃん。歩兵さんって強いの?」

「き、鍛えれば強くなるわよ。あっははははは。」

 笑って誤魔化す愛ちゃん。

「リセマラしようかな?」

 リセマラとはリセットマラソンのことである。最初からやり直して、初期に強いキャラクターを手に入れるまで繰り返すことである。

「カードは毎日1回は引くことができるから、大丈夫よ。もし直ぐに戦力を補強したかったら課金してね。何枚でもカードが引けるよ! アハッ!」

 課金を推奨する愛ちゃん。

「小学生の私には課金するお金なんてないよ。いいもん。歩兵さんを強くしてみせるもん!」

 ポーちゃんは歩兵さんと共に生きていくことを誓う。

「おお!」

「ん? んん? 歩兵さんが喋った!?」

 スマホの歩兵さんが声を発したのだ。

「ゴットカードはスマホゲームのデジタルだからAIで会話ができるのよ。」

「スゴイ! ゴットカード!」

 ポーちゃんは初めての体験に大袈裟に驚く。

「よろしくね。歩兵さん。」

「こちらこそよろしく。ポーちゃん。」

 ポーちゃんと歩兵さんに心が通う。

「それじゃあ早速、私とゴットカード・バトルよ!」

「かかってこいやー!」

 二人は対戦モードで戦うことにした。

「ゴットカード・ファイト!」

 ポーちゃんのゴットカード。歩兵さん1枚。


ポーちゃん。

0戦0勝。

総合ポイントは7。

お金0。


歩兵さん。

HP1

MP1

攻撃力1

防御力1

素早さ1

魔法力1

運1


「よ、弱!?」

 ポーちゃんは初めて歩兵さんのステータスを見た。

「ゴットカードは戦って強くしていくのよ。私みたいにね! アハッ!」

 愛は初心者相手に勝ち誇る。

「アアアアアー! 愛ちゃんは騎士だ!? 歩兵じゃない!?」

「ふっふっふ。私はリセマラして、初期の配布カードで一番強い騎士を選んだのさ。ワッハッハー!」


愛ちゃん。

10戦10勝

総合ポイントは27。

15円。


騎士。

HP10

MP1

攻撃力10

防御力2

素早さ2

魔法力1

運1


「ズルい!? 愛ちゃんの方が強いじゃない!」

「それはそうよ。戦えば戦う程、ステータス・ポイントをもらえて自分のカードを強く出来るんだから。アハッ!」

 勝ち誇ツ愛ちゃん。

「たったの、たったの10戦。それだけでこんなにも戦力差があるとは!?」

 ポーちゃんは愛ちゃんの狡猾さに恐怖した。

「倒させてもらうわよ! ポーちゃん!」

 愛ちゃんの騎士の攻撃。

「ギャアアアアアアー!」

 ポーちゃんの歩兵さんは倒された。

「勝者! 愛ちゃん!」

 愛ちゃんはゴットカード・バトルに勝った。

「ポーちゃんは、まだまだお子様ね。アハッ!」

 大喜びの愛ちゃん。

「無念。負けた。」

 悲しみに暮れるポーちゃん。

「落ち込んでいる暇はないわよ。歩兵さんにステータス・ポイントを割り振らないと。」

「え? 私は負けたのにポイントが貰えるの?」

「そうよ。ゴットカードは良心的なゲームだから、勝てば2ポイント、負けても1ポイント貰えるのよ。」

「やったー! ゴットカード最高! わ~い!」

 大喜びのポーちゃん。

「とりあえず攻撃力に振っておこう。」

 歩兵さんの攻撃力が1上がった。


ポーちゃん。

1戦0勝。

総合ポイントは8。

お金0。


歩兵さん。

HP1

MP1

攻撃力2

防御力1

素早さ1

魔法力1

運1


「やったー! 強くなった! わ~い!」

 ポーちゃんの歩兵さんは少し強くなった。

「その調子で戦いを繰り返して強くしていくのよ。」

「ありがとう。愛ちゃんのおかげで分かったよ。」

「どういたしまして。私たちはお友達だからね。アハッ!」

 ポーちゃんと愛ちゃんの絆が強くなった。

「戦いは現代で対人で戦う対戦モードと、異世界ファンタジーのストーリーモードがあるわ。

 選べるモードは2種類。

「異世界ファンタジーモードは新しい敵を倒していくと上限が解放されて強くなれるわ。これは初期のスタート地点で限界無くレベルをあげてしまうチートな人を防止するためよ。」

 ゴットカード1のポーちゃんは総合ポイントを800まで上げてから進み方が分かったというオチがあったことへの修正である。

「対戦モードはレベル上限は無制限。課金して強くなってね。」

 あくまでも課金を進める愛ちゃんは鬼であった。

「対戦モードでストーリーモードの上限を超えた場合はどうなるの?」

「無制限ではなく、ストーリーモードの解放されたレベル上限に強制的に合わせられるわ。」

 強すぎると面白くなくなるので苦肉の策の調整である。

「じゃあ、ポーちゃんがんばってね。バイバイ。」

「バイバイ。愛ちゃん。」

 愛ちゃんは去って行った。

「よし! ガンガン戦って歩兵さんを強くしてみせる! そして私は神になるのだ! 神になって、みんなの夢を叶えるんだ!」

 ポーちゃんは心の優しい女の子であった。

 つづく。

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