三期生、初炎上
「は、はあっ!? あの二人が燃えてるんですか!?」
「だからそう言ってるでしょ!? ふざけてる場合じゃないっての!!」
先の軽い反応から一転、メグとマナのハウンド姉妹が炎上しているとの報告を受けた零が素っ頓狂な声を出す。
デビューから間もない新人たちが炎上しているというのは完全に予想外で、いったい何があったのか予想もできない零は、その情報を自分たちに伝えてきた天へと慌てながら詳しく話を聞き始める。
「なんで轟さんと臼井さんが炎上してるんです!? 原因は何なんですか!?」
「私も詳しくはわからないわよ! さっきちょっとSNS見てみたらそんな感じになってて、まだ出火元を確認できてないんだってば!」
零も結構慌てているが、天の慌てっぷりはそれに輪をかけてひどい。
多分、自分のことを慕ってくれている伊織が燃えているということに焦っているのだろう。
それを抜きにしても先輩として後輩を気遣う気持ちもあるし、彼女の心境は零たちにも痛いほど理解できていた。
「とりあえず、私たちも調べてみるさ~! もしかしたらそんなガチ炎上みたいなものじゃないかもしれないし、落ち着いて!」
「そそそ、そうですよね! まずは落ち着くことが大事……! 落ぢ着げ~、わ~!」
慌て過ぎて方言が出始めてしまったスイのことは一旦置いておくことにして、沙織の言う通り、現状を正しく把握するためにもしっかりと情報を集めるべきだろう。
というわけで、五人揃ってSNSを開いてハウンド姉妹の炎上について調べ始めた二期生たちは、そこに漂う微妙な空気を感じ取り、PCの前でそれぞれ顔をしかめる。
「う~ん、これは……」
「ゴリッゴリの炎上ってわけじゃないみたいね。でも、安心はできない、か……」
ハウンド姉妹の名前で検索してみた沙織と天は、そのワードにヒットしたファンたちの反応を見て、本当に微妙な表情を浮かべている。
緩く叩かれているというか、そこまで強い言葉で批判はされていないが、完全に肯定してもらっているわけでもない……というようなファンたちの投稿の数々に、どう反応すればいいのかがわからないのだ。
【あんまりそういうことはしない方がいいと思う】、【打ち合わせ不足……なのかな?】、【新人さんだからそういうこともあるだろうけど、ちょっとよろしくないね】……見つけた反応をざっと挙げると、こんな感じである。
一応、デビュー直後の新人ということで手加減はされているが、あまりよろしくない状況なのは間違いなさそうだ。
「炎上してるっていうより、苦言を呈されてる……って感じですね。秤屋さんの言う通り、炎上ってレベルじゃあなさそうです」
「でも、デビュー間もない新人さんにとっては、十分怖いというか、動揺しちゃう展開でもありますよね……」
思っていたよりも深刻な事態ではないかもしれないが、あくまで思っていたよりもの話であって、多くのファンから批判的なコメントが送られている現状は十分に危機的な状況だといえる。
しかもその対象がデビューしてから左程時間が経っていない新人とくれば、尚更の話だ。
零のようなスルースキルが高めなある意味で図太い性格をしているなら心配はないだろうが、それは彼が異常なだけであって普通は多くの人たちから叩かれたら、凹んで当然だろう。
特に臆病な性格をしている伊織は突然の事態に慌てたり動揺している可能性が高く、一年前に起きた騒動の中で有栖が心労で倒れたことを知っている零たちは、こういう事態に陥った後輩たちのへの心配を更に強めていった。
「マジでいったい何があったんだ……? 轟さんだけならまだしも、臼井さんまで燃えるだなんて……」
そこそこ不用意というか、何を考えているかわからない奇想天外なことをする紫音がやらかすのならまだわかる。
だが、慎重な性格をしているはずの伊織まで彼女と一緒に燃えるというのは、完全に予想外だ。
紫音が何かをやらかして、伊織が巻き込まれて炎上した……というのが一番しっくりくるが、それもまだ勝手な推測でしかない。
兎にも角にも、正しく炎上の原因を探らなくてはと改めてネットでこの騒動について検索していった零たちは、その答えと思わしきものをようやく発見することができた。
「こいつ……っぽいなぁ。でも、う~ん……」
全ての元凶と思わしき投稿を発見した零が渋い表情を浮かべながら唸る。
他の二期生たちもその呟きを目にすると、彼と同じように難しい表情を浮かべたり腕を組んだりと、それぞれ微妙な反応を見せていた。
判断が難しいようで簡単というか、これは燃えるだろうなあ……という感想で全員の意見は一致している。
炎上に関しては百戦錬磨の零を唸らせる原因となった今回の炎上の火元は、紫音もとい、マナ・ハウンドが自身のSNSアカウントに投稿したこんな呟きだった。
【明日の夜、メグお姉ちゃんと一緒に雑談配信します。バレンタインデーのこととかグッズとかの話をしたいので、よければ見に来てください。(U^ω^)わんわんお!】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます