オチって、誰でも予想できるよね!

「うわ~、あんたのプレゼントは絶対にセンスがいいって確信してるけど、当たったら当たったで炎上しそうで怖いわ~」


「あっはっはっはっは! あり得ないって言えないのが怖いね~! 二分の一で炎上するとか、本当に怖いよ~!」


「……どうしてだろうか。自分でもんなことあり得ねえだろ、ってツッコめないんすよね……」


 ケラケラと笑いながらそんな会話を繰り広げる大人組に対して、枢も不本意ながらも同意の言葉を口にする。

 もしかして自分で自分のプレゼントを当ててた方が色々と安全だったんじゃないかと考える彼に対して、たらばと愛鈴が安心させるように言う。


「まあまあまあ、そんな心配すんなって! 燃える理由としては何となくっていうのと、芽衣ちゃんに渡すはずのプレゼントをどうしてお前が! っていう感じだと思うからさ。後者の場合はあんたが芽衣ちゃんにプレゼントを渡す理由付けになるでしょ!」


「いや、どうしてそうなるんですかね? それはそれで俺が燃えるじゃないっすか」


「大丈夫、人生そんなもんさ~! あと、多分私が当てた方が笑えないベクトルの炎上になると思うから、愛鈴ちゃん、頼んだよ!」


「そっちはそっちで納得できちゃうんだよなぁ……え~、最後の最後でプレゼントの内容以外の不安が出てくるとか予想外だったわ~……」


 愛鈴が当たった場合は笑える炎上になるが、たらばが当たった場合はたらくる派が狂気乱舞する上にくるめい過激派(笑えない奴ら)が暴れる未来が目に浮かぶ。

 まさか、プレゼントを気に入ってもらえるかどうか以外の不安なこのタイミングで浮上してくるなんてと思いながら引き攣った笑みを浮かべる枢の前で、先手を譲られた愛鈴が箱の中に手を突っ込んだ。


「さあ、どっちだ? 燃えるのは私か? たらばか? 運命の女神が微笑むのはどっちだ!? うおおお~っ!!」


【なんか壮大な戦いになってて草】

【この一手で炎上するかどうかが決まる(彼女たちはプレゼント交換をしているだけです)】

【火炎瓶投擲の構え! 指示が下るまで待機!!】


 気合の叫びを上げながら紙を握り締めた愛鈴が思い切りそれを箱の中から引き抜く。

 二期生全員の視線が集まり、リスナーたちの期待が高まる中、ゆっくりとその手を開いた愛鈴は、自分が握り締めているくじの色が赤であることを見て取った瞬間にその場に崩れ落ちた。


「私だ~っ! ちくしょうめ~っ!!」


「おう俺のプレゼントに不満があるなら無理して貰わなくていいぞ! 自分で使ってやるからよ!」


【今だっ! ラブリーに向けて投擲開始!】

【枢のプレゼントを嫌がるだなんて許せねえ……! ナパーム弾、投下!!】

【枢も巻き込むようにして燃やせたらGOOD!】


 流石は芸人というか、持っているというべきかはわからないが、当たるべき人間の手に当たるべきくじが渡ったということだ。

 嬉々として火炎瓶を投げ込むリスナーたちと愛鈴の反応に怒りを見せる枢をよそに、爆笑し続けていたたらばが残るくじを引いてから口を開く。


「ということは……私は自動的に芽衣ちゃんのプレゼントってことになるね~! いや~、燃えずに済んで良かったさ~!」


「人を燃やした上で自分は炎上回避とか、流石はたら姉だね! ちくしょう、どうなってんだ!?」


「ねえ、マフラー貰ったはいいんだけど、リスナーたちから【導火線代わりだな】とか言われてるんだけど!? あんた狙った? 狙ったでしょ!?」


「狙わねえよ! どうしてこうなってるのかなんて俺にもわかんねえって!」


「でもこのマフラー、めっちゃ私好みだわ! ありがとうな!」


「喜んでもらえて良かったよ! どういたしまして!!」


 ぎゃーぎゃーと騒ぎながらも普通にお礼やらなんやらのやり取りをしてみせる枢と愛鈴の芸人力の高さに爆笑する同期とリスナーたち。

 そうした後、話題は最後のプレゼントである芽衣のセレクトが何であるかというものに移っていく。


「あ、私のプレゼントはこれです。どうかな? クリスマスプレゼントを贈るなんて初めてだから、自信ないんですけど……」


「わ~い、ありがとう~! 芽衣ちゃんは何を選んでくれたの?」


「バスボム……入浴剤ですね。寒い時期だから毎日のお風呂が楽しくなるといいなって、そう思って……」


 芽衣の顔のように小さな箱の中には、綺麗に作り上げられた球体がぎっしりと詰まっていた。

 花やハートの模様が描かれているそれを見たたらばは、嬉しそうな声を漏らした後ではしゃぎながら言う。


「わ~っ、すっごい! 前から気になってたんだよ~! こうしてプレゼントしてもらえて、すごく嬉しい! にふぇーでーびるありがとう、芽衣ちゃん!!」


「えへへ……! 花咲さんとは本当にプレゼント交換になっちゃいましたね。でも、自分のプレゼントを喜んでもらえたのも、花咲さんが選んでくださったプレゼントを貰えたのも、どっちも嬉しいです……!!」


 たらばからプリザーブドフラワーを貰い、そのお返しのような形でバスボムを贈ることになった芽衣が微笑みながら言う。

 偶然とはいえ、彼女とお互いにプレゼントを交換し合う形になったことを喜ぶ芽衣は、このプレゼント交換会を存分に楽しんでくれたようだ。


 彼女の笑顔からそのことを読み取った面々もまた嬉しそうに笑みを浮かべる中、たらばが弾んだ声でこんなことを言った。


「う~ん、でもこれを私一人で使うなんてもったいないよ~! どうせなら今日、お泊り会でもして、みんなでお風呂入るさ~!」


「お泊り会、いいですね。二期生ウィークのことを思い出します」


「リア様もそのつもりでしょ? また夜更かしするわよ~!」


「わ~い! まだみんなで遊べる~! お風呂もどったふうになるのが、気になります!」


 たらばの意見に賛成し、彼女と同じくはしゃぐ女性陣たち。

 微笑ましいその光景を目の当たりにして頷く枢であったが、同時にいつものオチが近付いていることも理解していた。


「枢く~ん! というわけだから、また一緒に夜更かししようね~! 今日も楽しい夜になりそうでお姉さんもウキウキ気分だよ~! で、誰と一緒にお風呂入りたい?」


「たら姉? 普段より火力高くない? お泊り会に途中まで参加ならまだしも、一緒にお風呂は流石に死ぬって!」


【たら姉でお願いします(真顔)】

【枢ぅ! そこはよぉ! 迷わず芽衣ちゃん選ぶよなぁ!? そうに決まってるよなぁ!?】

【リア様と一緒にお風呂も捨てがたい……】

【ここまでラブリーの選択肢ゼロ。あ、俺はたら姉派です】

【枢ならいっそたら姉と芽衣ちゃんのダブルもありなのではないか……?】


「ほらこうなった! やっぱりこうなった! 全部わかりきってたけどな!!」


 超高速でこちらへと曲がってきた火炎瓶を受け止めつつ、大声で叫ぶ枢。

 理不尽極まりない炎上の仕方をする彼へと、同情気味に愛鈴が言う。


「まあ、うん……入浴剤の時点でこうなる予感はしてたけど、どんまい」


「まあ、流石に一緒にお風呂は私も冗談さ~! あ、でも私たちが入ったお風呂のお湯を枢くんにお裾分けして、それをお風呂に混ぜたら実質混浴みたいな感じに――」


「たら姉、ステイ。もうそれ以上はヤバい。この時点で十分ヤバいけど、これ以上延焼させないで」


「すごぇなあ、花咲さん……お湯で炎作れるようになってら」


「く、枢くんも大変だね……元気出して」


「励ましの言葉が心に染みるよ。あはは、あは、あははははははは……」


 炭酸が弾けるかの如く爆発炎上が続く場の中で、乾いた笑い声を上げ続ける枢。

 こうして、楽しい楽しいプレゼント交換会は予想通りのオチを迎え、とても素敵(?)な思い出が一同の胸に刻まれることになったのであった。

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