ご機嫌取り、彼氏
『おおっとぉ、これは……?』
『お熱いですなあ! ひゅーひゅー!!』
恥ずかしそうに第2の案を告げた芽衣の言葉に、早速同期たちからのからかいの文句が飛ぶ。
枢もまたその発言に気恥ずかしさを感じる中、悪乗りした愛鈴がこんなことを言ってきた。
『よし、今、構え。芽衣ちゃんを寂しがらせるな、枢!』
『いやっ……! 別に寂しがらせてなんかないよね!? 最近は顔合わせてるし、話もしてるじゃん!!』
『……それはみんなで一緒にいるだけであって、2人きりじゃないもん』
『さっき買い物した時、2人きりだったタイミングがあったじゃない!!』
『30分くらいでしょ? リア様とは何週間も2人で話したり、配信したりしたのにさ……』
【おいおいおい、おいおいおいおいおい】
【彼氏に構ってもらえなくて拗ねてる芽衣ちゃんも良きものだ……】
【枢! こんなに可愛い彼女を放置して他の女にうつつを抜かしてんじゃねえよ!!】
【唐突なくるめいはやめろ。マジで死ぬだろ】
【もっと構え。コラボもしろ。イチャイチャしまくってそのまま結婚してくれ】
本当に拗ねているのか、あるいはこのノリに乗って配信を盛り上げているのかはわからないが、芽衣の反応に枢は結構本気で焦っていた。
この場の雰囲気から焦げ臭いにおいを嗅ぎ取った枢は、迫りくる炎上を回避するために必死に芽衣の機嫌を取りにいく。
『本当、悪かったって! でも別に芽衣ちゃんのことを忘れてたとか、そういうわけじゃあなくってさ――』
『知ってる。だからあの時はわがまま言わなかったもん。今、いい機会だから言わせてもらってるだけだもん』
『うぐぅ……! ご、ごめんって! 誠心誠意、心の底から謝るって!!』
『……私が欲しいのは、ごめんなさいの言葉じゃないんだけどな……』
ぷくっと、頬を膨らませながらジト目で自分を見つめる芽衣の反応に言葉を詰まらせる枢。
彼女が欲している言葉を理解している彼は、ふはぁと大きく息を吐き出した後でその言葉を口にしてみせる。
『……今度、2人でコラボしよっか。なにかしたいこととかある?』
『ふ、ふふ……っ! それを2人で考えるところが大事でしょ? 一緒に打ち合わせして、配信の企画とか考えていこうね!』
【言質取った。近々くるめいコラボ開催決定!!】
【甘えろ! 構ってもらえ! 一生枢に大事にしてもらうんだ!!】
【うっ……(尊死)】
【考えてみればリア様やらラブリーに構ってばっかりだった上、その後にたら姉のおっぱい最高発言だからなぁ……他の女に目移りし過ぎだし、そろそろ枢燃やしとくか!!】
【#そろそろ正妻が誰かはっきりさせとけ枢】
『は~、この烏龍茶甘くない? 誰か砂糖混ぜた?』
『わーは混ぜてないですよ!?』
『いや~、いいね~! 仲良しだね~!! 2人がこうして話してるだけで、お姉さんご飯3杯はいけちゃうさ~!』
リスナー、同期共に面倒くさいリアクションを見せるもんだと、その反応に若干の苛立ちを覚えた枢が拳を握り締める。
だがしかし、目の前にある芽衣の嬉しそうな笑顔を見ると、そういった気持ちが薄らいでいくことも確かだ。
彼女の言う通り、ここ1か月の間、2人で配信をしたりすることもなかったな……と振り返った枢は、ぼそりと芽衣に向けて自分の想いを告げる。
『……芽衣ちゃんも寂しかったのかもしれないけど、俺だって芽衣ちゃんと離れ離れで平気だったってわけじゃないんだからね。そこんところ、勘違いしないでよ』
『……うん。ふ、ふふっ! じゃあ次のコラボでは、枢くんに甘えさせてあげるね』
『いいよ、恥ずかしいし。普通にやろ、普通に』
【ぐっふっ!?(尊死×2)】
【枢? お前、デレるのか……!?】
【炎上したり仕事で忙しかったりするくるるんの心の支えはやっぱり嫁たる芽衣ちゃんなんやなって……】
【芽衣ちゃんに甘えて癒してもらう枢の漫画はよ(R18でも可)】
【裏ではくるるんが芽衣ちゃんに甘えてるんですか!? 私、気になります!】
【唐突なくるめいのお陰で僕は死にましたが、心臓病を患っていた祖父が元気になったのでプラマイゼロです! ありがとうございます!】
なんだかんだで芽衣の厚意に甘えることもある枢もまた、彼女と絡めない日々を寂しく思っていたようだ。
甘く温かい2人だけの世界を作りつつある枢と芽衣の様子を近くにいるはずなのに凄く遠くから見ているような気分になった愛鈴は、ぶんぶんと首を左右に振るとこの空気を払拭すべく、大声で叫ぶ。
『はい、そこまで~っ! いつまでもイチャつくな、そこのカップル!! そういうのは2人きりの時にやれ!』
『え~っ! 私、もう少し見ていたかったんだけどな~……』
『たらばも黙りなさい! 裁判配信の話はここまでにして、次の振り返り行くわよ!!』
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