家族の、ポジション



『○ 2期生が家族になりました。各役割はなんですか?主観でどうぞ。』


『家族、家族ねぇ……そういえばちょうどそんなこと言ってた奴もいたわね』


『は~い、その話題を掘り返すとお前も自身の黒歴史を掘り返すことになるってことだけは承知しとけよ~?』


『でも家族かぁ。でもまあ、1つだけ確定してる部分はあるよね』


 芽衣が表示したそのマシュマロを確認したたらばが、大きく頷きながら言う。

 彼女のその言葉を受けた一同(枢は除く)は、一斉に声を合わせてほぼ同じことを言ってみせた。


『『『『ママは枢(くん、蛇道さん)で!!』』』』


『えぇ……? 全員一致するの? あんたたち、女性なのに野郎に母親のポジション取られて悔しくないの……?』


『枢くんが相手ならあんまり……というより、普通にご飯とか面倒見てもらってるし、ママみたいだなって思ってたから……』


『今考えでみぃば、兄っちゃじゃなぐで母っちゃの方がすっくりぐる表現がもすれね!』


【ワロタwww確かに枢はママだな!】

【逆にラブリーママとか家庭崩壊待ったなしじゃん】

【2期生どころかCRE8全体を見回しても1.2を争うレベルのママ力なんだよなぁ……】


 何故だか唯一の男性である自分が同期たちから母親のポジションに就く者として異議なしの完全同意を得たことに唖然とする枢であったが、リスナーたちもまた、彼を除く2期生たちと同じ意見であるようだ。

 というわけであっさりと母親は決まったわけだが、ここからの話し合いは非常に難解なものへとなっていく。


『じゃあ、パパはやっぱり芽衣ちゃんになるのかな?』


『私が、パパ……? 1番あっちゃいけない役割のような……?』


『わー的には父っちゃは愛鈴さんだど思うんだげどね。性格的さ』


『おうそれって女らしくないって意味だろ? 事実だけど腹が立つわ。ついでに私、枢と夫婦とか嫌なんだけど!!』


『俺も嫌だわ! っていうか、俺と夫婦になる人が誰に決まったとしても俺が燃えるだろうから、母親ポジションから降ろしてください!』


『た、確かにそうだね……じゃあ、ちょっと質問の趣旨を変えちゃうけど、私たちが兄弟姉妹だったとしたら誰がどのポジションに就くか考えてみようよ』


 恋人を超える夫婦として男女の組み合わせが決定しては、枢だけでなくその相手役となった人物も燃えてしまうだろう。

 この中で最も親交が深い自分ですらそうなると判断した芽衣は、質問の内容をマイルドに変更することでその危険性を排除しようとした。


 2期生たちもまたその質問に乗っかり、新たな設定を考え始める。

 こちらの話し合いはスムーズに進み、とんとん拍子に設定が固まっていった。


『これは1番上はたらばでしょ。ベストオブお姉さんよ』


『逆に、末っ子はリア様っすね。後はまあ、順当に年齢順に当てはめていけば……』


『長女が花咲さん、次女が愛鈴さん、三女が私で、末っ子がリア様……の4人姉妹になりましたね。問題は枢くんがどこに入るかですけど、やっぱり愛鈴さんと私の間に入る形がしっくりくるのかな?』


 女性陣がどの順番で姉妹になるのかを決めた後、唯一の男性である枢が入るスペースを考察する一同。

 どっこい、マイルドになりつつあったこの話し合いの中、体も思考も危険な女性こと花咲たらばが、いつも通りに爆弾発言を繰り出してしまう。


『う~ん……枢くんはあれじゃない? 兄弟っていうより、三女の彼氏さん……みたいな?』


『ぶっっ!?』


『あ~! 言われてみれば確かにそっだね! 納得だぁ!』


 だからそれだと質問の意味をマイルドにした意味がないだろうという突っ込みを入れる前にリアがたらばの発言を肯定してしまったことで、枢は完全にタイミングを失ってしまった。

 ほくほく顔で結果が出たと喜ぶ2人と、ちょっと加速したように見えるコメント欄の雰囲気を確認しながら、この配信が終わった後に待ち受ける地獄を想像した彼が頭を抱える中、そんな枢のことを不憫に思ったであろう愛鈴が話題を切り替えるべく自分の下に送られたマシュマロを提出すべく口を開く。


『はいはい。そういう結果が出たってわけで、この話題はお終いね。そんじゃ、次は私のところに届いたマシュマロを紹介しましょうか』


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