ss 月に行ってみよう②
姉さんの月に行こうという突然の提案には正直驚いたが、考えてみれば僕たちは今まで月に行った事がない。
にも関わらず、月よりもずっと遠い位置にある『ネオルカ』や『イセンドラス』には行った事があるというのはいかがなものか。
まぁ今後月に行く用事なんて全くないし、たまには月旅行も悪くはない。
それに、今日は久しぶりに彼らにも会える。
✳︎
乗船すると、中にはパーティー会場のような大きな空間があった。武器をそれほど積んでいない分、大きな空間が多く、茜はそのスペースにパーティー会場を作ったそうだ。
既に、多くの元メンバー達が集まっており、会食を楽しんでいた。
「久しぶり結人、咲夜、元気そうだな。」
「早くこっちこ〜い、ノンアルのワインあるぞ〜!」
「みんな久しぶり〜」
先に乗船していた元メンバーである樹や空、桃達ももちろんパーティーに参加していた。他にも、お世話になった元メンバーの家族なども乗船していた。懐かしい人がたくさんだ、隣の部屋なども合わせるとざっと120人ほどいる。
「聖奈も久しぶりだね、結婚の発表をした時は驚いたよ。」
「貴方達ほどじゃないわ、まぁアンチも多かったけどそれほど面倒じゃなかったわ。それに私はファンの幸せより自分の幸せを掴む女だもの。」
茜が特別招待枠として聖奈も招待したらしい。後で生で歌ってくれるらしいので楽しみだ。
そして、咲夜と一緒に懐かしい人への結婚した事と、咲夜が新しい命を授かった事を報告して回った。
前者にはそれほど驚かれなかったが、後者の方はとても驚かれ、祝福してくれた。
一通り挨拶を終えると、結人は隅っこの方に藁科家の4人と人モードの龍2人でかたまって座った。そして、船内を見回す。
「だいぶ呼んだね、姉さん・・・・・・」
「最近働いてばっかだったからね〜たまには息抜きしないと死んじゃうからさ〜」
「茜お姉ちゃんは言うほど働いていないでしょ!」
「あはは〜バレちゃった〜?」
「姉さん・・・・・・」
どうやら終戦しても姉さんは姉さんで変わらないようだ。もはや、突発的な思いつきで暴走を始めるのが恒例と化している。
制御のために美月に一緒にいてもらっているが、全然制御されていない。弟として、困ったものだ。
「ま、いいじゃんいいじゃん〜私は自分が楽しければそれでいいんだよ〜」
なんというか、その通りである。
「結人、ここのご飯美味しいわね。これなら永遠に食べていられるわ。」
「食べすぎですよ、お姉様。」
「いいのよ、ヘレナ。これは私たちへの貢物なんだから食べない方が失礼だよ。」
「確かに美味しいですけど・・・・・・」
「あんまり食べ過ぎて、お腹壊さないでよ、リエス。」
「私に限界などないわ。もしあったとしても突破すればいいだけの話よ。限界は越えるためにあるもの。」
「はぁ・・・・・・」
終戦後、人間の身体を得たリエスとヘレナは人間生活を満喫していた。
リエスの方は、人間としての生活がとても羨ましかったようで、最近は世界中を飛び回り美味しい物を食べまくっている。
龍である彼女らに食事はもちろん必要ないはずなのだが、どうやら人間の食文化に感動しているらしい。
本人曰く、食文化は龍の世界にも取り入れるべき偉大な文化らしい。
食費は当然、全て結人が負担しているが、あまり溢れるお金を今の所は使う道もないので、今は垂れ流し状態にしている。
「じゃあ結君、この船から眺める海の景色も十分すごいけどそろそろ宇宙にあがろうよ!」
「もう全員揃ったの?」
「うん!結君達で最後だよ。本当は朝日奈さんとかも呼びたかったんだけど忙しいらしくてさ〜というわけでワープお願い〜」
「わかった、でも僕が空間魔法を使うよりもっと良い空間魔法の使い手がここにいるから彼女にお願いするよ。」
「おっけ〜」
「というわけでリエス、お願い。」
「も〜仕方ないわね。」
めんどくさげに立ち上がったリエスは感覚を研ぎ澄ませる。そっと手を前に出すと短く呪文を唱えた。
「×××」
誰も、何と唱えたのかわからない。おそらく龍の言葉だろうか。それが単語なのか文なのかすらわからない。
だがそれを、ヘレナと結人だけは理解していた。
すごい、綺麗だ・・・・・・
魔法式と魔法式を次々と連鎖させて、その精度を高め合っている。
そして、巨大な魔法陣が形成されると、宇宙船『クシナダ』の位置座標に干渉した。
『クシナダ』の姿が消えると、宇宙空間へと瞬間移動した。
「結人には、これぐらいできるようになってもらわないと困るわ。」
魔法の凄さに驚いている結人に、リエスはドヤ顔をしながらそういった。
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もう1話続きます。
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