大勇者と従者25

 死灰のコルドは幼虫のころから意思があった

 そして話せないまでも明確な知能があった

 自分が何なのか、いつも自問自答していた

「わしはなんだ? なぜわしはここにいるんじゃ? わしという存在は何のために生きているのじゃ?」

 そんな疑問の中、ウルの大幹部が彼女をスカウトしにやってきた

 特に彼女には悪意などはなく、自分に害をなさない相手ならば攻撃などしたこともない

 そもそも強力な魔物ひしめく森の奥地が生息域であったため、人など入り込んでこない

 それも幸いだったのか、彼女はほとんど純粋に育った

 そしてウルに吹き込まれてしまった

 人間を食料にすれば進化出来ると

 自らが何者か知りたかったコルドはその誘いに乗ったが、彼女は根幹にあった優しい性格が作用し、人々から力をもらいはしたが、誰一人として死なせるようなことはしなかった

 無益な殺生はしない

 自分に害をなさない存在なら殺したくない

 そしてコルドは力を蓄え、さなぎになり、羽化した

 人型となった自分のことがいよいよ分からなくなるコルド

 だが今目の前にいるアイシスは自分以上の力を持っている

 彼女について行けばもしかしたら何か分かるかもしれない

 さらに言うと彼女はアイシスに惚れてしまった

 見た目だけではなく、その高貴な魂にだ

 そんな理由もあってコルドはあっさりとウルの大幹部という地位を捨てた


「よし、行こうぞアイシス! ウルを倒すのだ!」

「調子に乗るな。しかしまあなんだ、お前のことはそのうち調べてやるよ。俺もよく分からないから神々に聞くしかないがな」

「ふむ、優しいのぉアイシスは。わし、アイシスのことが大好きだ!」

 がっしり抱き着き頭を擦り付ける

 その姿は故郷に置いてきた愛しいキーラを思い出させる

「はぁ、よしよし」

 コルドからは子供のような純粋さしか感じられない

 子供には優しいアイシス

 これからはアンとコルドを守らなければと心に決めた

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