大勇者と従者20

 見渡す限りの大雪原

 寒さもさることながら、歩きにくさで体力を奪われていく

 幸いにも吹雪いていないことだけが救いだった

 そんな人々の生存を否定する世界でたった二人だけが悠々と歩いていた

 黄金鎧の力でアンと自分を温かくしているため、この雪山でも問題なく進めている

「なぁアン、この先に人っていると思うか?」

「わかんない。でも動物はちらほら見えるから、可能性はあると思うよ」

 もうすでに数日は歩いているのだが、一向に人の痕跡が見当たらない

 こんな雪山だからということもあるだろうが、それにしてもあまりにも広い大雪原だった

 体力的には問題が無くても、気力面で二人は疲れ始めていた

「はぁ、でも進まなきゃ進まないよなぁ」

「アイシス、おんなじこと言ってるよ」

「うん、なんだ、もう考えるのもめんどくせぇ」

 それでも何とか進み続けた結果、ようやく人の痕跡が見つかった

 雪山にあるただ一軒の山小屋

 中に人はいなかったが、これでこの世界にもヒト種がいることは分かった

「山道が段々下って来てる。このまま進もう」

「うん!」

 山小屋で少し休み、再び歩き始めた

 だんだんと下り、そしてとうとう山を下りて道に出た

 山小屋からは一応木々が伐採された道があったため、ここまでかなりスムーズに歩けた

「さてと、なんか綺麗な道だな。たしか道路っていうんだっけ? てことは前見たみたいに車とかいうのも走ってるかもな」

「車! また乗りたいなぁ」

 以前行った世界で乗った車がお気に入りになったらしいアンは目を輝かせた

 しかしそのまま道沿いをずっと歩いたのだが、車はおろか人ともすれ違わない

「これだけ綺麗に舗装されてるんだ。人はいるはずなんだが、ここはあんまり通らないのかもな」

「う、うん」

 段々と不安になって来た二人

 それでも人がいると信じて歩き続け、ようやく街までやってこれた

 だが、そこにも人っ子一人おらず、二人は一気に疲れた表情になった


 街を調べてみると、ほんの数分前まで人がいた痕跡がいくつもある

 ホカホカのスープ、入れたてのコーヒー、用意された着替え

 そしてほとんどの家がカギをかけていなかった

 つまりこの街の住人は、急に消えたということだ

 アイシスとアンは街の住人の消えた手掛かりを探すため、二手に分かれて探索し始めた

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