アモンの旅11

 いくつかの部屋を回って拘束されたり今まさに切り刻まれている人々を助ける

 精霊王女レディナの精霊魔法はかなり強力で、死んでいなければ回復できるようだ

 救った人々は他の囚われた人々を助けて回ってくれている

 そのおかげかこの施設はもはやグレイたちの手に負えないほどになっていた

「あの部屋が最後か。あの人たちも仲間と合流できてればいいけど」

 最初に助けた男二人には仲間がいたらしいが、それらしき女性は見なかった

 この最後の部屋にいるか、もしくはあの二人がすでに助け出している可能性がある

「あけるよお姫様」

「ええ、わたくしの方はもう準備できましてよ」

 ゆっくりと扉を開けると、何かの溶液に浸かった魔物の特徴を持った女性がいるだけで、グレイはいなかった

 女性の前にある机にはレポートらしき紙が置かれている

「う、なんて酷いことを」

 そのレポートには目の前にいる女性に行われたことが書かれている

 死なないように内臓を取り除き魔物と融合させる

 左半身が魔物化しているのはそのためのようだ

 もともと魔物の力を取り込める女性だったらしく、適合率は高い

 だが目覚めないために培養液での延命措置をしているそうだ

「おい、こっちは解放が終わったぞ! グレイどもは逃げ・・・。そんな、イニシャ!!」

 最初に助けた男のうちの一人

 反対側にいた人々を助け出して合流しに来たようだ

「この子が君たちの仲間なのかい?」

「ああ、間違いなくイニシャだ・・・。なぜこんな、ひどすぎる。イニシャは女の子なんだぞ!」

 しかしすぐには助け出せない

 彼女はこの培養液によって辛うじて生きている状態だ

「わたくしが回復処置をしてみますわ」

 アモンはうなづくと装置を破壊してイニシャを助け出した

 呼吸器はつけたままレディナが精霊魔法による回復を試みる

「これなら大丈夫そうですわ。わたくしの力で何とかなります。しかし、融合してしまった部分は・・・」

 魔物との癒着が完全に定着してしまっているため、無理に分離しようとすれば体が瓦解し、死んでしまうだろう

「じゃあ、イニシャはもう、戻らないのか」

「可能性はありますわ。わたくし以上の精霊魔法の使い手がいればあるいわ・・・。わたくし以上となると精霊神である始祖精霊様くらいしか思いつきませんが」

「始祖精霊? 聞いたことないぞそんなの」

「それは一人しかいませんもの。わたくしたち精霊を産んだ最初の精霊、それが始祖精霊様ですわ」

 イシュアはひとまず一命はとりとめたものの、目は覚めないし魔物との癒着のため体が変質してしまっている

 仲間の二人はそんなイシュアを抱え上げるとアモンに感謝しながら救出した人々共にグリーンハウスへと走って行った

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