神と鬼神1
全員の転送が一瞬で終わった
深淵にまでアクセスしたパリケルの技術力は黒族のそれをはるかに超えている
星単位での転送までをも彼女は可能にしていた
リディエラが目を開くといきなり詩季が目の前にいた
パリケルが座標をかなり正確に入力していたのだろう。詩季はケーキを一口口に頬張った姿勢のまま目を見開き固まっている
「や、やぁ詩季ちゃん」
あいさつをしたが詩季はそのまましばらく動かなかった
いやぁ参った参った
まさか詩季ちゃんがあんなに驚くとは思わなかったよ
まあいきなりあんな大人数が転移して来たらそりゃ驚くよね
ひとまず話をしてみたんだけど
「やだね。私は手を貸せない」
詩季ナンバー4のハルナさん
彼女は出てきて開口一番そう言い放った
「でもハルナ、リディエラちゃんは友達だよ?」
「でもも案山子もない。私は、いや」
姿がコロコロと変わる様子にアカネさんたちはかなり驚いているけど説明は今は後だ
「あんたさ? 私のこの力がどれだけ危険なものか分かってる? 物語に出て来るようなパラドクスとはわけが違う。たった一つ何かミスをしたら、それこそ世界が消えちゃうかも。バタフライエフェクト、タイムパラドクス、何もかもが複雑に絡み合う状況で私がそんな重要な役割、できるわけ、ないじゃない」
ハルナさんは怠惰で何をやるにもめんどくさがる人だと思ってた
現に今まで戦いにもほとんど手を貸していない
めんどくさいが口癖の少女
でもその実彼女は自分の力をずっと恐れていたんだ
超能力としては異質の時を操る力
過去一度だけこの力が暴走したときがあった
その時は友人たちが全員殺され、悲しみで時を大幅に戻したそうなんだけど、それ以来そこまでの逆行はできていないという
そしていつまた自分の力が暴走し、取り返しのつかない事態に陥るかと気が気でなかったらしい
涙を流しながら語るハルナさんを、誰が咎めれるだろうか?
ただ僕たちは落ち込んだ
過去に戻り母さんたちを助けるという望みが絶たれたんだ
「でもハルナ。あなたのその力、もう制御はできてるでしょう? 私は知ってる。いつも私達が寝静まった時にずっと力の制御をする練習をしていること、伸ばす努力をしていることを」
「・・・。それが何? 私じゃ力になれない。ごめんリディエラ。私は、臆病で卑怯者なんだ」
ハルナさんのそんな顔を見て僕らは何も言えなくなった
彼女は彼女なりに必死で考えてくれたんだと思う
あきらめるしか、無いのかな?
僕はそこで緊張の糸が崩れ、涙が溢れ出て止まらなくなった
嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる
もう二度と、母さんや皆に会えない。そんな思いが頭にこびりついて僕を苦しめた
そんな最中に僕の頭に声が響いた
(リディエラちゃん! リディエラちゃん!)
この声は・・・
「クノエちゃん?」
「え? クノエちゃんですか? 何で今」
「クノエちゃんの声がしたんだ!」
聞き間違いじゃない
今もずっと僕の心に呼びかけている
キョロキョロしているとパーンと何かが弾ける音がして目の前に、クノエちゃんたち妖怪族族長娘ーズが現れた
彼女たちはどさりとクロハさんの上に落ちてクロハさんを押しつぶしてしまった
「なんで? どうしてみんなが! 殺されたんじゃ」
「えとね、お母様が・・・。ひぐっ、お母様たちが、助けて、くれて・・・。ううう」
妖怪族族長による秘術時渡り、その座標を未来の僕達に設定してたらしい
何かあった時クノエちゃんたちを助け出せるように
「ねぇその時渡りの秘術って?」
ハルナさんがクノエちゃんに走り寄って手を取り聞いた
「え、えと、それは、その、あなたは?」
「私はハルナ。時間を操る超能力者。姉教えて狐耳の子、その時渡りってどうやったの?」
「えっと、私達も部分部分しか聞いてないから、私達全員の聞いた話を合わせれば、どうやるか分かると思うわ」
「そう、是非教えて! リディエラちゃん! 教わったらあなた達を送る。これが上手くいけば、ええ、私の直感が囁いてる。この子達が私の力を完全制御するカギよ!」
ハルナさんはそれまでと違いキラキラと目を輝かせていた
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