大勇者の旅5
文字に描かれた通りならば生き残りがどこかにいる
そこでアイシスは黄金狐の力を使ってみることにした
この力の一つに詳しく見通す力があり、それで紙に書かれた文字を調べてみることにしたのだ
「ふむ、もっと力を込めなきゃだめか」
恐らく書かれてから数週間という時間が経っているため、少し見づらくなっているのだろう
アイシスはさらに目を凝らして詳しく読み解いた
「お、なるほどなるほど、こっちか、で、ここから下に降りてっと・・・」
ブツブツと独り言を言いながら別の紙に詳しく地図をかき込んでいくアイシス
ただ彼女の絵は壊滅的なため、描かれた地図はアイシスにしか解読できなかった
「ア、アイシスちゃん、案内は任せたわよ」
「おうよ!」
自信満々で地図を見つつ仲間の先頭を歩くアイシス
彼女は地図をちゃんと読めているので全く迷うことなくその場所まで来ることができた
そこは街の中心らしき場所から少し外れた路地裏で、その奥の角にその近くまで来ないと分からないほど細い道が続いていた
その道を通り過ぎると下り階段が突如として現れ、地下まで続いていた
その階段を下りて行くと今度は大きな鉄の扉が現れる
「この奥だぜ」
アイシスはコンコンとその扉を叩いてみる
しかし何の反応も帰ってこなかった
「おかしいな、生体反応はここに確かにあるんだけど」
扉に手を掛けてグッと押してみる
するとキィーという金属音を立てて扉が開いた
「何だ開いてるのか」
扉を開け切って中に入ると人の気配がする
ゆっくりと歩いて行くと
「この!」
「テリャアア!」
突如棒切れを持った男女に襲われた
しかしアイシスはそれを素手であっさりと掴んでふせぐ
「うそ、完璧な不意打ちだったのに止められた!」
「リャック、こいつら危険よ!」
リャックと呼ばれた男は棒を引くとアイシスに鋭い突きを繰り出した
だがアイシスはそのどれもをすんなりと避けきり彼の腕を掴んで止めた
「待て待て、俺らは敵じゃない」
「敵はみんなそう言うんだよ!」
「いやだから話を聞いてくれって」
「問答無用!」
「待ってリャック! この人達、あいつらと違うみたい。だってほら、あのいやな感じがしないわ」
「ぐ、確かに、しないな」
「分かってくれたか?」
「ああすまない。俺たちはここの守りを任されているから警戒した」
彼らの実力はアイシスからすればそこまでではないが、ウルの幹部が連れている取り巻き位なら倒せるほどの実力があった
救世界でのランクで言えばAランクを超える実力だ
「ごめんなさい。それであなた達は他の街から来たの?」
「いいえ、あたくしたちはこの世界を救いに来た異世界人よ。この世界を襲ったやつらと戦ってるの」
「なんだと? 救援が別世界から? そんなの信じれるわけないだろう?」
「何言ってるのよリャック、あのウルってやつらも異世界から来た奴らでしょ? 異世界はあるのよ」
「あ、う、そうか、異世界はあるんだな」
どうやらこのリャック、早とちりが遺伝子レベルで刻まれているようだ
「とにかくあなた達を助けに来たのだけれど、このままだと全員救い出すって言うのは無理だわ。まずはこの世界を闇に覆ったダートって言う大幹部を倒さないことには身動きが取れないわね」
「ダート、ああそうだ、そいつだ、そいつが俺たちの両親を殺したんだ!」
リャックと、その相棒である少女ポラリス。この二人はお互い家が隣同士の幼馴染で、将来を誓い合っている上に親公認という恋人同士
幸せの絶頂にあったのだが、ダートが来て全てが変わった
もともとこの世界で冒険者をしていた二人だったが、突如現れたダート率いるウルの軍勢によって町は襲われ、両親はその中のリーダーによって消し飛ばされたらしい
二人は両親がかばってくれたおかげで何とかここまで逃げ込めたのだが、ここに逃げ込めたのは数万人規模のこの街にしては少なすぎる百人程度だった
「とにかくまずはダートより先に東の街外れにいるあいつを倒さなくちゃいけない。でも俺たちじゃ役に立てない。俺たちより強いカスタさん率いる冒険者たちがあっさりと消されたからな」
悔しそうに歯ぎしりするリャック
目の前で大事な人たちを何人も失ったのだ、当然だろう
「分かった。そいつは俺に任せてくれ。アインドーバさん、それにリャックさんとポラリスさんにはそいつの取り巻きの相手を頼みたいんだが
「ええいいわ任せて頂戴」
「ああ、俺たちもそのくらいの役には立って見せるさ」
「それから利善さんにはここの守りを固めて欲しいんだ。で、レイドちゃんにはもしもの時のため皆を守ってほしい」
「任せてくれ」
「はい! 私も大丈夫です」
作戦が決まったところで行動が開始された
クルルは眠っているためミシュハに任せ、一行は動き出す
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます