世界に選ばれし者たち6
相変わらずライナはずっとアモンの腕にしがみついたまま離れない
「ちょっと離れなさいよ。アモンが歩きにくそうでしょ」
「何を言うのですか、妻とは旦那様に寄り添うものなのです」
彼女の価値観ではそうなのだろうが、アモン自身妻を持ったことがないので全く分からない
レノンナは正反対の意見のため事あるごとにアモンから離れるよう突っかかっていた
この二人、相性が悪すぎるためしょっちゅう喧嘩しているのだった
ゲートから外に出ると荒涼とした砂漠が広がる世界
遠くの方で砂嵐が見え、太陽が照り付け何も遮るものがないためかなりの熱さだ
「皆さん、これに入ってください」
一番小さな少女であるりえが能力で涼しい空間を作り出した
主にサポートを行う彼女にとって暑さ対策など簡単にできる
一行はその空間の中に入って涼みつつ優雅に砂漠の探索を始めた
「うーんおかしいさねぇ。ここ人の気配がしないんだわぁ」
広範囲探知を行っていたエーテが首をかしげる
さらには既に手には自分で描いた地図が出来上がっていた
能力で正確無比に描かれているため、周囲の状態が手に取るようにわかる
半径数キロ以内に街はおろか村もなく、オアシスや植物すらない
本当に砂だけの砂漠だ
当然生き物の気配もないため魔物などと言った危険生物もいない
「生物もいないのはおかしいね。あいやこんな砂漠ならおかしくはないんだけど、エーテさんの探知に引っかからないってのがおかしいだけで」
「とにかくもう少し範囲を広げてみるから、もし何か来たら対処よろしくぅ」
エーテは目をつむるとさらに探知の範囲を広げて動かなくなった
そんな彼女を背負って移動するアーキア
エーテは見た目だけで言えばかなり美しい部類に入る
そのためかアーキアも少し照れているようだ
彼の鼻孔をエーテの花のような香りが包む
研究者気質の彼女だが、意外と肌の手入れや化粧にも気を使っているらしい
それこそその世界にある素材を使って化粧品やせっけんなどを簡単に作り出すほどに
「何鼻の下伸ばしてるのよ。動かないからって変なことしちゃだめよ」
「す、するわけないだろ!」
心外とばかりにアーキアはぷんすか怒る
だがほんの少し下心が無かったわけではないアーキアだった
その後一キロほど歩いたところでエーテがパチリと目を開いて叫んだ
「見つけた! このまままっすぐ進むさね! 私は疲れたから少し寝る!」
それだけ言ってまた目を閉じてスースーと眠ってしまった
「寝顔は可愛いんだけどなぁ・・・」
アーキアは苦笑いをしつつエーテを背負い治してまた歩き始めた
ただ仲間内で常時クーラー空間を展開しているりえの限界が近そうだ
「りえちゃん、少し休みなさいな。私が変わるから」
風の妖精であるライナ
冷たい風を操ることもできるため、りえの代わりを務めれるようだ
「ありがとうございますライナさん」
りえが空間を解くとすぐにライナが風で新しい空間を作り出した
涼しい風が常に吹くためこの灼熱の砂漠でも問題なく活動できる
りえは疲れたのか肩で息をしていたが、そんな彼女を今度はアモンが背負った
「ア、アモンさんもありがとうございます」
「いいっていいって、ゆっくり休んで」
絆で結ばれた仲間たちはこうしてお互いに助け合いつつエーテの言う通りにまっすぐ道なき道を進んだ
その結果、ようやく砂漠にそびえ立つ王宮のような場所にたどり着いたのだった
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