世界に選ばれし者たち5
仲間たちはアモンの姿を見ても全く何も言わず寄り添ってくれた
そして妖精ライナが泣き止む頃アモンの姿も人の姿へと戻っていた
「もう落ち着いたみたいだね。ごめんね、僕と契約をして願いをかなえると僕に魂を縛られることになるんだ。で、でも安心して! 他の悪魔たちと違って僕は命令とかしたりしないから」
「いいんです。縛っていただいても。私はもうあなたのものですから」
ライナは頬をほんのりと赤く染めながらアモンにスッと肩をよせる
そう、彼女は助け出されたことで悪魔であるアモンに惚れてしまったのだ
「ああ、アモン様、私はずっとあなたのものです」
「あ、あの、いやその」
「いいじゃないアモン、その子可愛いし何せ妖精よ? あたしの世界じゃ妖精って信仰されるくらい神聖な存在なの。しかもあのエインセルだし」
レノンナによって後押しまでされ引くに引けない状況
魂も縛られているためアモンについて行くしかないのだが、この先ずっと引っ付かれるのもそれはそれでしんどいなぁと思いつつ、まんざらでもないアモンだった
結局アモンが悪魔であることはすんなり受け止められた
どの世界でも悪魔は嫌悪され嫌がられる存在だったにもかかわらずだ
それはひとえにこの旅でアモンを深く知ることができたからだろう
過去をあまり語ることはなかったが、彼が本当に人を愛し救おうとしているのは仲間たちにもしっかりと伝わっていたのだ
アモンはいい仲間、信頼できる仲間と出会えたことに本当に心の底から感謝した
そして彼には悪魔らしい特性があった
人の悪意を読み解くことができる力
悪意を持った人間を見つけ出せるのだ
本来は悪魔が魂を奪うため、契約を行うために本来備わっている能力だが、この力にはもう一つの側面がある
それは悪意を取り去る力だ
何故悪意が必要な悪魔に取り去る力が備わっているのかは分からない
神々が作り出した存在ではない悪魔はその生態なども全く分かっていない
それはアモン自身にもよくわかっていないのだ
「まぁ悪魔ってのは研究し甲斐がありそうでねぇ。興味を引かれてしまうのは至極当然であると思うのだよエーテさんは」
ハァハァと鼻息荒くアモンの体を舐りまわすように見るが、本当に研究対象として見ているわけではない、ないはず
「おやめください! アモン様に危害を加えることはこのアモン様の正妻である私が許しません!」
ちゃっかり正妻という位置に収まろうとしているライナ
がっしりとアモンの腕を掴んで離れない
「冗談さね冗談。そんな怖い顔で見ないでほしいねぇ。というか君も、調べたいんだけどねぇ。私の世界には妖精なんていなかったからねぇ。うひゅふ」
危ない目をし、手をワキワキと動かしながらライナに触ろうとするところをレノンナがチョップで制した
「ギャン!」
「ほらほら次の世界行くわよ」
「冗談なのに結構本気で叩いてくれるねぇ」
「ゲートなんだけど、僕に開かせてくれないかな? 悪魔ってのは世界の裏側に住む生き物だから、世界の壁を超えるってのは生まれてすぐに手に入れる力なんだ」
そう言うと今まで何人かの力を合わせて開いていた世界を超える扉をあっさりと開いてしまった
「そう言えばいつも任せてって言ってたけど、こういうことだったのね」
「うーむ、確かに僕たちで開くよりかは速いよね」
一瞬で出来上がったゲートを開きつつライナを加えた六人は扉をくぐり、新たな世界へと歩き出した
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