逸脱した女神3

 新しく来た世界

 思い出が鮮明によみがえる、私とお姉ちゃんがまだ人間だったころ暮らしていた世界

 そんな世界と雰囲気の似た世界に来た

 共にいるのは今や三天となった天使たちと真魔神のラナ、そしてソラ

 かつてお姉ちゃんの中にいたころした旅、その頃と同じくらいの所帯になったわね

 あの時の私はお姉ちゃんがピンチの時にしか外側に出れなかった

 だからあのメンバーとそこまで話した事ないのよね

 でも今は私と共に歩いてくれる仲間がいる

 正直お姉ちゃんの中にいた時羨ましかった

 仲間っていいなってずっと思ってたんだもの

 天使たちを見ると三天とも私を敬うように見つめ返してくる

 うーん、少し私の思ってるパーティの在り方と違うのよね

 もっとこう何でも話せたり、たまには喧嘩したりとか、お互いを支え合って

 でもこれだと完全に主従関係ができちゃってる

「ねぇ、もっとこう私に対してフランクに接してくれてもいいのよ?」

「そう言うわけにはいきません、私達はあなたの天使ですので」

 全く頭の固いリィリアちゃんだこと

 でも確かにそう、天使は神々に使えるから天使であって、この信仰心が揺らげば堕天する

 彼らに接し方を変えるよう求めるのは酷ってものよね

「じゃあラナ、ソラ、私のことはお姉ちゃんと呼びなさい」

「「え!?」」

 二人そろっての仰天

 そんな驚かなくてもいいのに

「ほら、呼んでいいのよ? お姉ちゃんって」

「は、はぁ、でも女神様」

「女神様じゃなくてお姉ちゃんって呼びなさいよラナ」

「あ、うう、おねえ、さま」

「それだとなんだか違うニュアンスに聞こえるじゃない」

「お姉ちゃん!」

「お、さすがソラね、分かってる。ほらラナも」

「お、おお、お姉ちゃん・・・、でいいでしょうか?」

「うーん、もっと気楽に接してほしいだけなんだけど」

 ラナは私よりも幼い(まぁ本当に私よりはるか年下なんだけど)見た目なんだけど、精神的にはもう成熟しちゃってるのよねぇ

 半面ソラの方はまだまだ見た目も精神も幼いから何の抵抗もなく呼んでくれたわね

 まぁ今はこのくらいで我慢して、徐々にこの距離を縮めていく方向で進めるとしますか


 それで新しく来た世界なんだけど、ここは私とお姉ちゃんの故郷に似てる気がする

 いやまぁ全然違う世界なんだけど、それでもこう世界に流れる気配のような、風土や香りがよく似てるんだと思う

 探知してみたけど、生息している動植物もよく似てたわ

 これだけたくさんの世界があるんだもの、そりゃ似てる世界もあるわね

「どうしましたか我が女神」

「ううんなんでもないわ。さ、ウルを見つけるわよ」

 探知を世界全体に切り替えると、探知できるようになったウルの気配を探る

 でも探せど探せど全く探知に引っかからない

 おかしいわね。この世界にはいないってことなのかしら?

 まぁウルがどれだけ大きな組織だとしても、数多の世界全体にメンバーを派遣できるわけじゃないものね

「この世界は平和そのものみたい。どう? この世界で少し休む?」

「それは良いですね! ほらリィリア、そんなしかめっ面しないで、休息も時には必要ですよ」

「それは、まあそうだな」

 生真面目すぎるリィリアちゃんをアスティラちゃんが説得してくれる

 この子、アスティラちゃんとはかなり打ち解けたみたいで、彼女の言うことなら少しは聞いてくれるようにはなったのよね

 以前までだと、ダメです、我々の目的をお忘れですか女神様、なんて言ってたっけ

 確かにウルのせいでたくさんの世界がひどい目に合ってるけど、それでもたまに休息を取らないと私達が潰れたんじゃ元も子もない

 というわけで、この世界では少しは目を外してしっかりと休養を取ることにしたわ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る