勇者の成長4
勇者はひとまず精霊達に連絡を取った
精霊女王シルフェイン、彼女の加護を受けたのは歴史上でもアイシスが二人目だった
一人目は始まりの鬼神サクラ
ただサクラの場合はその加護を上回るほどの力を持っていたためあまり意味をなさなかったが
今現在アイシスは勇者としての力は失っている
それでも彼女は新たな力を得たことで着実に大勇者としての力が高まっていた
「まあアイシス、久しぶりですね。以前から魔国とはお話を受けていましたが、今回は瘴気の地のことでしょう?」
「はい、話が早くて助かります」
「まぁ任せて置きなさいな。あの瘴気の浄化はすでに神々の議題に上がっています。ですのでもうそちらに向かっていますよ。浄化に適した権能を持つ神々が」
「おお! さすがシルフェイン様です!」
どうやらすでに先手を打っていたようで、もう間もなく神々が降臨する
そのことをキーラに伝えると喜びすぐに歓迎の準備を進めた
「アイシス、女神様はどこに降臨なされるの?」
「ああ、ここだよキーラ」
「え、ここ?」
いきなりだった
突如目の前に光がサッと差し込み、その光から人影が数人現れた
美しい女神が二柱、筋骨粒々の男神が一柱
「ふぅ、降臨は初めてでしたからきんちょうしまーすわね」
「あたしは二回目ー」
「うむ、なるほど、この子たちがシルフェインの言っていた子か。魔族だがいやはや、ものすごく純粋な魂だぞ」
「どどどどどうもはじめましてです。わわわわわっわわわっわたしが、魔王キーラです」
緊張しているのかキーラはかなりどもっていた
「ようこそおいでくださいました。私は勇者アイシス、それでいきなりで悪いのですが」
「ああ分かっていまーす。私は聖の女神フィオラーナですわ」
「あたしは回復の女神マイラ」
「俺は浄化の神アルケインだ」
アイシスは浄化の神が男性の、しかもボディビルダーのような肉体を持っていることに驚いた
権能に筋肉は関係ないが、どうやら趣味で鍛え上げているらしい
何か発現する度にいちいちポーズをとるため二柱の女神は冷めた目で見ていた
「さて浄化だが、俺がまずその土地で浄化を開始する。その後は聖の女神の権能で一気に土地に俺たちの力を定着させ、汚れた土地を綺麗にする。そのあとは回復の女神の権能で土地を回復させれば終わる、のだが、ただ少し問題があるのだ」
サイドチェストのポージングで困った顔をするアルケイン
「問題とは?」
かまわず続けるアイシス
「うむ、この瘴気はかつての邪神、末妹のサニアから生まれた瘴気だ。強すぎる瘴気だからな、俺たちでもちゃんと浄化できるかわからん」
「そんな」
ショックを受けるキーラ
「だが大丈夫! そこでアイシスの大勇者としての力が必要となるわけだ」
「俺の、力ですか?」
アイシスの力、ワコから受け取った力には浄化の作用までもある
つまりアルケインとアイシスが協力すればいくらサニアから生まれた強力な瘴気でも浄化できる
「分かりました! 頑張ります」
アイシスはやはり自分の力が役立てることが分かって大喜びだ
そんなアイシスを見て女神二柱もまるではしゃぐ子供を見るかのような目で温かく見守った
瘴気の地
ここには強力で危うい瘴気が渦巻いている
一年ほど前、ここでは邪神がようやく滅んだ
自らの記憶をようやく思い出した邪神はその身を自分の意思で滅ぼしたのだった
そのご邪神は本来の姿を神界で取り戻した
それが現在のサニアだった
未だ強い瘴気が固まるこの地はすでに草一本生えない不毛の地になっている
そこから魔物も大量に沸いていた
そんな魔物を倒しつつ全員瘴気の湧く中心へと歩いた
どうやらアイシスは大勇者となったことでここの瘴気が効いていないらしい
三柱はというと、もともと瘴気に強い神々だ
この中でも全く問題なく動けた
「相当濃いな。さすがの俺も、少しきつい」
そう言いながらも決めポーズは忘れないアルケイン
どう見ても弱っているようには見えなかったが誰も突っ込まず先に進んでいく
「ここか」
誰も突っ込まないまま中心へとやってきた
ずっとポーズでその筋肉を見せつけるアルケインは、無駄な動きをしているにもかかわらず汗ひとつかいていなかった
中心地には大きな骨が転がっている
その骨こそかつての邪神の遺体、そして瘴気の源だった
「うう、何という瘴気でーすか。わたくし気分が悪くなってきまーす」
「まぁ妹の後始末はあたしらがやんないとね」
瘴気を払うためまずアイシスとアルケインが力を使った
それによりこの土地の瘴気が晴れていく
「うむ、成功だ」
ポーズを決める必要はないのにポージングしつつ浄化を滞りなく完了
すぐにフィオラーナが聖なる力をこの土地に定着させた
それにより不毛の地だった土地には植物が生えるようになった
そこからは一番小さな女神マイラが回復の力を使った
すると最初にぴょこんと目が出て、一気にポコポコと、次から次へと植物が生え始めた
「よしよし、上々上々だぞ」
アルケインのポージングを全員で冷ややかな目で見たあと帰路についた
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