イレギュラーメルカの冒険3

 異世界に次ぐ異世界、冒険に次ぐ冒険、世界はそれこそ無数に存在し、今なお増え続けている

 そんな世界を見て回るのは楽しかったけど、時折自分の感知できない事件が起きている

 私が感知できない事柄なんて皆無と言ってもいい

 それこそ私と同じレベルの何かが隠匿でもしない限りね

 暴れている異世界人を捕まえて色々聞いても要領を得ないし、むしろ何も知らないみたいだし

 どういうわけか心をスキャンして見てみても奴らが送られてくる場所が分からない

 心にまでしっかりとプロテクト、いえ、もともと何かを探られると記憶から消えるようにできてるみたい

 今いる世界はかなりローファンタジーな世界

 剣と魔法の法則性が支配するありふれた世界だわ

 ありふれてるがゆえに悪い異世界人が混ざりやすいみたいね

 そいつらに色々と話を聞くと、ウルって謎の組織が絡んでるってことが分かった

 ウル、ウル、うーん、どこかで聞いたことあるような気がするんだけど、思い出せないわ

 でもまあその組織をつぶせば恐らく問題解決!

 まずはその組織の本拠地を調べたいんだけど、そもそもその本拠地っていうのが掴めないのよね

 全くどれだけ丁寧に隠してるのかしら

 とりあえず今はこの世界を見て回ることにした

 この世界、魔力の流れも普通、魔物の強さも普通、何もかもが普通の世界ね

 実はこういう世界が平和に視えて一番厄介だったりするのよね

 例えば種族間の抗争、同じ種族なのに戦争、差別偏見、多くのしがらみがある

 この世界も調べた感じやっぱり色々とあるみたいね

 まぁそれはこの世界の人間が解決すべき問題だから手出しはしないわ

 

 私は周りを見てみる

 そこは薄暗い洞窟内で、一応明かりの魔法がかかっているみたい

 しょっちゅう人が行き来しているのか、地面は踏み固められてるし道順が描かれている

 その道順には英雄の墓と書かれていて、それに沿って奥にまで行ってみた

 最奥、そこは大きな部屋のようになっていて、その真ん中あたりに石で出来たお墓がある

 そのお墓の前には既に何人か人がいて、熱心に祈っている少女がいた

「ここが、英雄のお墓」

 お墓には世界を救いし魔人イア、ここに眠ると書いてある

「そうだよ、ここはイアお姉ちゃんが眠ってるお墓、十年前に世界を救った優しい魔人のお墓だよ」

 祈っていた少女が説明をしてくれる

「世界を救った魔人?」

「そ、この世界ではたくさんの魔人が暴れていたの。だから魔人は毛嫌いされてたんだけど、この洞窟で生まれ育ったイアお姉ちゃんって魔人は、人々を守ってくれたの。その結果他の全ての魔人を倒して、最後に最強の魔人と相打ちになって死んでしまったの」

「そう、あなたはその人とお知り合い?」

「イアお姉ちゃんはね、私の家族なの!」

 だからあんなに熱心に祈ってたのね

「でもね、実はお姉ちゃんって死んでないの」

「え? どういうこと?」

「みんなは知らないんだけど、お姉ちゃんってこの世界での活躍が認められて天使になってるの! 私にも時々会いに来てくれるんだ!」

 嬉しそうに語ってくれる少女

 でもそっか、この世界にはそんな英雄がいたのね

 その子がこの世界を導いていたらもっといい世界になってたのかも

 話を聞かせてくれたお礼を言ってから私は今いる場所から消えた

 恐らく驚いてるだろうけど、早くいかなくちゃいけない理由ができたから仕方ない

 この洞窟から数百キロほど離れた街に爆炎が上がってるのが見えたから

 すぐに移動して原因を調べる、までもなく分かった

「ハハハハハハ!! そーれ逃げろ逃げろ。お、逃げ遅れ発見~、おら死ねよガキ!」

 街を襲っていたのは変な男、明らかに人殺しを楽しんでそうな男だわ。すでに私でも呼び戻せない犠牲者がいる

 そして男が今殺そうとしているのは無垢な子供、私の怒りに一番触れるタイプの男ね

 だからちょっと、どぎついお仕置きをしておいた

 体の位置をバラバラに付け替えて二度と元に戻れないようにしてね

 頭にしても目や鼻の位置も全てばらけさせて、それでいてちゃんと生きていられるようにね

「な、ぶふぁぁ、ああ、うぶべぇ」

「アハハ、何言ってんのかわかんなぁい。なんで人を殺したの? 楽しかった? 子供を殺そうとしたのはなぜ? そう、悲鳴が聞きたかったの。じゃあ私もあなたの悲鳴を聞きたいなぁ」

「うぶぅ、うびゃぁああああああああああああああああ!!」

 もはや人の言葉なんて話せない

 思考だけはできるから地獄の苦しみを今後寿命で死ぬまで味わうことになる

 そんな地獄を味合わせたくなるほどにこいつは私の怒りに触れた

 殺されると分かって気絶した子供を優しく介抱して、私はそのかつて人間だった汚物を空間を切り開いて元の世界に返しておいた

 怒りで我を見失いそうになってたけど、長い間力を馴染ませていたおかげで暴走することはなかったわ

 そして一応この世界でも異世界の悪意が入り込めないように結界を張っておいた

 ウルって組織はこんなやつらばかりなの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る