植物人の国1

 さてプランティアに着いたけど、滅茶苦茶たくさんの植物人の人達に囲まれちゃった

 そう言えば僕は一瞬この国に来ただけだから、ちゃんと顔を見せてなかったね

 だからなのか、彼女達の視線がキラキラと輝いていた

 ちなみに植物人たちは女性型しかいない。というのも単一で増えることができるからで、魔力の流れている地面から魔力を吸い上げることで生命エネルギーに変えることができる

 その生命エネルギーによって子供を産むことができるんだ

「精霊様、こちらへどうぞ! 鬼神のお二人もこちらへ!」

 皆同じ顔だから誰が誰なのか見分けがつかないけど、一番大きなお姉さん(それぞれが個にして全なので名前はない)が話しかけてくれた

 彼女たちには一応性格が違うと言う個性があるけど、それぞれが得た情報は全員に共有されるらしい

 だからもし誰かが話を聞いたとしたら、その情報は全ての人に伝わるってわけだ

「ニーバのことですよね? あの子はこの国でしっかりやっていますよ。子供達も懐いていますし、魔力が高いので私達ができないようなこともしてくれて、非常に助かっています。ただ・・・」

 お姉さんは少し浮かない顔をしている

「もしかして何か問題が?」

「いえ、あの子はとても優しくていい子なのですが、それが少し問題というか、ここに置いてもらっているという認識が強すぎて、主張をしてくれないのです。私達としては彼女を家族だと思い接しているのですが、やはり時折本当の家族を思い出すのでしょう。どことなくよそよそしいのです」

「そっか・・・。まぁちょっと会ってみようかな」

「はい」

 お姉さんが通してくれたのは大きな木に囲まれた家で、そこがニーバちゃんの家なんだという

 そこにはニーバちゃんだけじゃなくて、年の近い子供達も住んでるらしい

 仲がいいみたいで、これならニーバちゃんも寂しくはないと思う

「お、お久しぶりです精霊様。そ、その節は、お世話になり、ました」

 緊張してるのかニーバちゃんの声は震えてる

「え、えと、その、せ、精霊様お綺麗です!」

「へ?」

 突然そう言われて驚いていると、ニーバちゃんが堰を切ったかのように怒涛と話しだした

「あの時からずっと憧れていたのですが、今の精霊様のお姿、神々しくてまるで女神様みたいです! あ、もちろんプランティアの人達や勇者にもすごく感謝しているのですが、精霊様を一目見た時から、私はずっと精霊様のことを考えていたのです! どうか精霊様、私をあなたのものにしてください!」

「あ、いや、それはちょっと」

 この子、もしかして寂しげな表情をしてたのは家族を思い出してたんじゃなくて、僕を思い出してたってこと?

 それにこの目、クロハさんがハクラちゃんを見てる時の目に似てる

「こ、これニーバ、精霊様が困っているでしょう!」

「ご、ごめんなさいレイ姉さん」

 あれ?名前?

「あ、レイというのはこの子がつけてくれた私という個体の名前です。本来名前は無いのですが、どうやらこの子の観察眼は非常に優れているらしく、ほんの少しの違いで私達を認識できるようなのです。それで私達それぞれに名前を付けてくれたのですよ」

「はい! 精霊様、私レイ姉さんの言う通り観察と記憶には自信があるんです!」

「す、すごいねニーバちゃん」

 実はプランティアの人達は顔が同じすぎて僕ても見分けがつきにくい

 魔力の流れがちょっとずつ違うからそれで何とかってレベルかな?

「やった! 精霊様に褒められたってことは、私はもう精霊様のものってことに」

「なりません!」

 まぁ元気そうでよかった。というわけでこの国を見せてもらうことになった

 案内はもちろんニーバちゃんで、ものすごく張り切ってるね。なんか目が怖いね

「とにかく全てお任せください! アヴァ様にも許可は取ってます!」

 アヴァさんというのはこの国で唯一名前を自ら持っているこの国の女王のことだ

 植物人がこの世界に生まれてから今までずっと彼女がこの国の植物人を管理しているらしい

 相当昔のことだけど、彼女は全然老けていない

 まぁ彼女は寿命がないから、殺されたりしなければ死ぬことはないみたい

 ただ木と同じく生まれてからずっと同じ場所にいる

「まずはアヴァ様の所に行きましょう! きっと喜んでくださるはずです!」

 ニーバちゃんはアヴァさんのことが大好きみたいだ

 彼女はゆったりおっとりとした優しい女性で、いつも目を閉じているけど周りのことは把握できてるらしい

「ああ、王女様なのですね? 私はアヴァと申します。女王様に加護をいただいているおかげでこの国はより良く繁栄しています」

「いえいえ、みんな元気そうで何よりですよ」

「そ、それで精霊様! アヴァ様を、動かしてあげれないですか?」

「え?動かすって・・・」

 突然のことで少し指向が止まった

 そんなことをすればアヴァさんは死んじゃうだろう。しかもそれは彼女だけではなく、植物人全体が死ぬことになってしまう

「それはだめよニーバ、私はここにいなければなりません。私が死ねば植物人全体が死んでしまいます」

「で、でもアヴァ様はずっとここにいるのでしょう? 外の世界は、見たくないのですか?」

「それは・・・」

 そっか、アヴァさんのことを考えての発言だったのか

 うーん、でもこればっかりはなぁ

 そこである考えが浮かんだ。それは黒族だ

 技術に関しては僕が元居た世界の物よりもはるかに進んでいる彼らならなんとかできるかもしれない

「もしかしたら何とかなるかも」

 そういうとニーバちゃんは目を輝かせ、ますます僕を見る目が狂気じみて来てる気が・・・

 まあ物は試しだ。黒族に連絡を取ってみるかな

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