十一色の鬼2
力を定着させるのはそんなに難しいことじゃないみたい
自分の力を正しく理解すればおのずと使えるようになる
思えば私はちゃんと自分の力を理解してなかったかも
確かに今使ってる力は強いし、そこいらの魔物や、異世界から来た神獣ですら屠れる自信はあるよ?
でもどこか何かが足りないような、私と一致していないような違和感はあったのよね
だから師匠たるサクラさんに力と言うものを理解するための享受をしっかりと受けたよ
「そうそう、その調子よハクラちゃん。いい感じね。ソウカちゃんはもう少し機敏に神力を体に流すようにしなさいな。シエノちゃんは気張りすぎ。もう少し力を抜きなさい。クロハちゃん、ハクラちゃんばかりを見てないで集中しなさい。あら、アカネちゃんうまいわよ。あなた天才肌なのね。キキちゃんは皆と少し違うけど、それでも理解すれば使えるように必ずなるわ。頑張ってね」
やっぱりサクラさんの指示は的確で、段々と自分の力が体に馴染んでいくのが分かる
それからしばらくたつとまずアカネが自分の力を完成させたみたい
「おお、これがあたしの力っすか! まるでたぎるマグマのようっす!」
「アカネ! 燃えてる! 体燃えてるから!」
「え? あ、ほんとっすね。燃えてるっす。でも不思議と全然熱くないっすね」
アカネの体からは炎というよりマグマが吹き出てる。熱い・・・
私は熱いのが苦手だからアカネに近づけないじゃない
「こっちもできたわ。ほらハクラ、見てごらんなさい」
あ、お姉ちゃんも力が馴染んで発揮できたみたいね
うわ、何この禍々しい気配は
「強烈ねクロハちゃん。これはこれはなかなか。闇を前面に押し出した前衛的な力じゃない」
ま、まるで芸術作品を表す表現みたいに言ってるけど、これってどんな力なんだろう?
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ええ、この闇から悲鳴が聞こえる気がするけど、それがすごく心地いいわ」
うわ怖い。闇から亡霊とか死者みたいなのが覗いて笑ってる。怖い怖い怖いよお姉ちゃん
「こっちも、できた」
ミドリコもできたみたい
彼女は大量の緑色の鼠を召喚してたわ
うじゃうじゃと大群を率いて戦うのが彼女の鬼神としての戦い方みたいね
それから皆次々と力の使い方を理解していった
ソウカは空から光を集めて撃ちだして全てを焼き尽くす太陽のような力、キキは万もの雷を操り、シエノは強力な毒を生成してそれを任意の相手にどこからだろうと喰らわせることができるし、チャダノは巨大な蛇と一体化してまるでヤマタノオロチのような姿になるし、カイラは月の光でみんなを癒せる。マリハは体が煌いたかと思ったら自己強化ができるようになって、その時の単純な力は私達の中でも一番みたいね。で、モモネさんはたった一言つぶやくだけでモモネさんを魅力的に思った人を操れるようになってる
あれ? 私は? 私だけなぜか力がちゃんと発動できないんだけどどういうことなの?
「おかしいわね。ハクラちゃんもすでに力の本質は分かっているはずなのにその力が反応をしてないわ。力自体がまだそのときじゃないと言っているみたいにね」
「え、え、え、そんなことってあるんですか?」
「いいえ聞いたことも見たこともないわね。でもそう感じるのよ。ハクラちゃんの力はまるで意思があるような気がするわ」
「意思・・・。とすると私は力を、使えないってことですか?」
「いいえ、さっきも言ったけど力は今はその時じゃないと思っているのよ。あなたのことは認めているしあなたのことが好き、な気がするけど、いざという時に使う力なのかもしれないわ」
うう、ここで発揮できないなんて・・・。でもみんなを守れるような力ならそれでいいよ
私はただイタズラに強力な力を使いたいんじゃなくて、守るために使いたいんだからね
「ともかくハクラちゃんの力については私の方でもっと詳しく調べておくわ。幸いにもこの世界にはそういったことに詳しいのがいるしね」
「詳しいの、ですか?」
「ええ、人間の始祖、始まりの人間と言われる黄金人がね」
「それってもしかして」
「ええ、カイトを連れて来るわ」
久しぶりにカイトさんにまた会える。ふふ、嬉しいかも
カイトさんは人間族の始祖と言われる黄金人で、サクラさんやアンミツ姫とも仲がいい人
優しくて頼れるお兄さんって感じかな?
「カイト、カイト、聞こえてる?」
サクラさんが念話というスキルでカイトさんと会話を始める
「ええ、そうなの、順調ならいいわ」
サクラさんがにこやかにそう言うと突然目の前にカイトさんが現れて、少し驚いちゃった
ここってサクラさんが作った空間なのに、直接転移してこれるなんてやっぱりカイトさんってすごい
で、そのカイトさんの後ろに二人の知らない人たちがいた
一体誰なんだろう?って思ってたらカイトさんが紹介してくれたよ
「こっちはリィリアで、こっちはアスティラ。二人とも異世界で名を馳せた実力者だ。これからの戦いに協力してもらうつもりだよ」
どうやらこの二人は異世界の勇者のような存在みたいで、神様が今起きてる大異変に対抗するために、カイトさんに修行をつけてもらってたみたい
新世代と呼ばれる特殊な力の持ち主で、どうやら私やお姉ちゃん、リディエラ様も同じように新世代らしいわ
うーん、いまいちピンとこない
「よろしくお願いします」
私がそう言うとアスティラさんの方が握手を求めてきた
「よろしくね、白い鬼さん」
手を握っただけで分かった。この人の力、なんだかすごい
私も鬼神に成ってからすごく強くなったって思ってたけど、なるほどね、世界って広いね
「私はリィリアだ。共に戦うのだ、追々お互いを知って行けばいいさ」
彼女はなんだか見た目にそぐわず大人っぽい。どう見ても無邪気そうなお嬢様って感じなのに、言動が悟りを開いた人みたい
それにしてもこんな人たちがここに来るって、その大異変って一体何なのかな?
少し、怖いよ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます