蛇人族の国4

 しばらくこの変な道を歩いていると、突然大きく揺れて危うく落ちそうになった

 ひっくり返ってるハクラちゃんを立たせて辺りを見渡すと、道のくねりが少し変わってた

 もしかしたら数分ごとに道が変わる仕様なのかも

 そう思ってまた歩き始めたんだけど、特に横道ができてたりってこともなくくねってるだけで、ただ真っ直ぐに道は続いていた

 時々揺れる以外には変なタイルってくらいで特に変わったところがない道

 とにかくただ長く長く続く先の見えない道をずっと歩いた

 まぁ時々空飛ぶ蛇の魔物が襲ってくるけど大した強さはなかった

 うーん、どこまで続くんだろうこの道

「長いですね、まだまだ先が全然見えないです」

「ね。でも道がこれ以外にないし、空も飛べないみたいだから歩くしかないよね」

「魔力は結構周囲にあふれてますね。これなら存分に回復しながら進めそうです」

 僕らみたいな精神生命体は周囲の魔力を吸収できる

 これだけの魔力が溢れる場所なら戦って魔力を消費してもすぐに回復できるから楽と言えば楽かな

 ただこれだけ景色も変わらない場所だと精神的に参っちゃうよね

 もうずっと変わらない景色に飽き飽きしながらも先へ先へととにかく歩き続けた

 時折出てくる魔物を処理しつつくねった道を歩く

 その時突然道が大きくくねって僕らは宙へと放り出された

「精霊様、手を!」

「う、うん!」

 ここでつかまなきゃだめだと思い思いっきり手を伸ばしたけど届かない

 ハクラちゃんの落下地点は道の上だったけど、僕の下には何もないんだ

「この! 絶対掴む!」

 僕の思いが通じたのか、手がグニャリと伸びてハクラちゃんの手を見事につかむことができた

「着地します! 衝撃に供えてください!」

 僕はハクラちゃんにお姫様抱っこされる要領で抱えられてそのまま地面に着地

 でも衝撃を緩和しきれずに僕らは転がって、ハクラちゃんの小ぶりなお尻が僕の顔の上に乗っかった

「ももも申し訳ありません精霊様!」

「い、いや、いいんだけど、苦しいから早くどけてくれると嬉しいかな」

「は、はいぃい!」

 ハクラちゃんが立ち上がり、続いて僕も立ち上がって周りを見ると、この道の正体がようやく何なのか理解できた

 それはあまりにも巨大で巨大で巨大な、星すら噛み砕いてしまいそうな蛇だったんだ

 まだ遠くの方だけど、その蛇の顔がこちらをジッと見ている

「あわわわわわわ、へへへ蛇です。きょ、巨大な蛇ですぅう」

「うん僕も見えてるよ」

「た、食べられちゃいますよ!」

「大丈夫だと思うよ。敵意は感じないし」

 とりあえず大丈夫そうだし、あの蛇の頭目指して進んでいることが分かったのでまた進みだした

 蛇はずっとこっちを見てるんだけど特に何かをしてくるわけでもない

 ただただ優しく、まるで見守っているかのようなまなざし、のような気がする

 それから三日ほど歩き続けてようやく顔近くにまで来ることができた

「改めて見ると大きな顔ですね。何でこっちをジッと見てるんでしょうか?」

「分からないけど、ここからなら僕らの声も聞こえるんじゃない?」

 目だけで星一つ分くらいありそうな蛇は動かずただこちらを見ている

 僕は思い切って話しかけてみた

「あの!」

「たどり着いたか。どうじゃ? 私の声は聞こえておるかな?」

「はい、これは念話ですか?」

「そうだ。この姿の私は言葉を発する器官を持たないのでな。じゃがまぁ、少し待て」

「は、はぁ」

 大蛇さんが口から息を吐くと、それがみるみる固まって大きな足場になった

「ここに乗るがいい」

「はい」

 僕らはその足場に乗った

 その直後に大蛇さんの姿が一瞬で消えた

「あれ? どこへ」

「ここじゃここじゃ」

 振り向くと蛇の尻尾を持った綺麗なお姉さんが立っていた

「これで話しやすいじゃろ。いやはやなんとまぁちっこい奴らじゃな。喰らいがいがないの。あ、そんな震えんでくれ。喰らう気はない、冗談じゃ」

 ケラケラと笑うお姉さん

「あの、えと、あなたは?」

「おおそうじゃ、自己紹介がまだじゃったな。私はアポピス、またの名をアペプ、太陽を喰らう大蛇である!」

「太陽を・・・。なんて大きな」

「いやじゃからそう怖がらんでくれ。もうそのようなことはしておらんから。今はミコの友人としてここに立っておる」

「ミコ様の?」

「うむ、そしてミコにお前たちを合わせるかどうかを見極めるのも私の仕事じゃ」

「そ、それで、結果は?」

「うむ、少し力に不安はあるものの、この長い私の体を臆することなくここまで来た勇猛さ、助け合う心、私はお前らを気に入ったぞ。特にそこの白いの。お前可愛いのぉ。私のものにならないか?」

 アポピスさんはそう言ってハクラちゃんの頭をポンポンする

「ひ、ひぃいいい食べられるぅうう」

「食べん食べん。私の愛人になってくれと言っておる」

「あいじん?ってなんですか?」

「ほぉ、ピュアじゃな。愛人と言うのは」

「アポピスさん! ハクラちゃんに変なこと教えないで下さい!」

「おおすまんすまん、まさかここまで真っ白で純粋な娘がおるとは思わなんでな。つい興奮してしもうた。愛人はむりじゃな。純粋すぎるわ。私も諦めるとしよう。それはさておきこの先にミコはおるぞ。特に教えることがない、どうしようとか言っておったわ、フハハハ」

「そ、そうなんですか」

「うむ、ほれ扉じゃ。先へ行くがよい」

「ありがとう、ございます」

「また会おうぞ白いの!」

「ヒィ! やっぱり食べる気ですよ!」

「食べぬと言っただろうが!」

 何はともあれ先に進んでいいみたいだ

 それにしてもなんとも豪快ですごい人だった

 多分戦っても勝てない。というか戦いたくない

 あの人神様くらい強いよ絶対

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