妖怪族の国再び4

 ハクラちゃんになぜ教えてくれなかったのかとぶつくさ文句を言いながら次の階層へ行くと、いきなり何らかの攻撃を受けて目の前が真っ暗になった

「うおっし! 当たったー!」

「ななななに!? 前が見えないぃい!」

「精霊様! 危ないです!」

 カキンと武器同士がぶつかり合う音がしたけど、目が開かないから何が起こってるかわからない

 仕方ないから探知を最大にして力の流れを感知して周囲の把握を試みた

 次第に見えているかのように周りの状況が把握できるようになってきた

 これ、初めてやってみたけど案外便利かも

 普通に見えている状況以上にいろんなことが分かる

 まず打ち合っているのはハクラちゃんと誰か

 その誰かは相当な手練れなのか剣の達人ともいえるハクラちゃんと互角に打ち合ってる

「くっ、何者です! 精霊様に何をしたのですか!」

「クヒヒヒヒ、拙者はホオヅキ! レコ様が天使の一人だ! そっちの精霊の子には魔力を抑えるトリモチで視界を奪わせてもらったよ! まぁあんまり意味なかったみたいだけどね」

「その通り、僕は探知で周囲が見えるからね!」

「ありゃりゃあ、早くも復活って感じか。二人相手はきつそうだから一人動けなくなってもらおうと思ったのに」

「残念だったね。精霊魔法、樹王召喚!」

 こういった異世界と繋がってるダンジョンには僕の力の一つである精霊召喚はできない

 でもそれならそれで別のものを召喚すればいいんだって最近気が付いた

 樹王というのはその場にある植物を使って召喚する精霊の守護者のようなもので、僕達精霊が戦えないようなピンチに陥った時に召喚したりする

 意思は無くてゴーレムみたいなものかな

 ここは幸いにも森だったから樹王の召喚ができてよかったよ

「げぇ! そんなのあり? 召喚できるなんてきいてないし!」

「樹王頼んだよ!」

 樹王の姿は見えないけどその位置は分かる

 僕の前で僕を守るように立ってくれている

「妖魔手裏剣!」

 シュルシュルシュルという風を切る音の後木に何かが突き刺さる音が聞こえた

 どうやら樹王に手裏剣が刺さったみたいだけど、その程度じゃ樹王は倒れないよ

「妖魔手裏剣をただの手裏剣だと思わない方がいいよ!」

「え?」

 手裏剣が刺さったところから妖力を感じる

 それが一期に吹きあがって樹王を取り込んだのが分かった

「クヒヒヒ! 拙者の妖魔手裏剣は当たった者を妖魔に変える特別製! しかも拙者の言うことを何でも聞くのだ!」

「く、僕の樹王が逆手に取られるなんて」

「精霊様! 私がお守りしますから!」

「ありがとうハクラちゃん」

「クヒヒ、それなら君も妖魔に変えちゃうまでだ!」

 それはまずい

 ハクラちゃんが妖魔になんて変えられたら僕にはもうどうしようもない

 それに妖魔になって戻れる保証もないじゃないか

 それだけは絶対に避けなきゃ

「ほらほら! 手裏剣当たっちゃうよぉ!」

 くっそー、楽しそうにして!

 なんて性格の悪い奴なんだ

「うわっ、おっと、危ないじゃないですか!」

「樹王、そいつ取り押さえて!」

「しまっ」

 魔力の流れからハクラちゃんが妖魔になった樹王に取り押さえられたのが分かった

「ホイ終了っと! これで君も拙者のものだね~え」

「あ、あああ、うっがぁ! あああああ!!」

 ハクラちゃんの妖力が膨れ上がるのを感じる

 このままじゃハクラちゃんが妖魔になっちゃうって言うのに僕は視界を奪われてほとんど何もできない

「ふぅふぅ、ぐぅっふう」

「あれ? どういうことだこれ?」

「あふぅ、いたたた、どうやら、私には、その手裏剣は、効かないようですねぇ」

「嘘、拙者達天使でも妖魔に変えてしまうほどの猛毒だぞ!?」

「毒なら耐性をつければいいんですよ」

「まさかこの短時間に血清を体の中で作り出したっていうの!?」

「この体になってからはそう言ったことはしやすくなりましたね」

「く、厄介な!」

 よかった、ハクラちゃんは無事みたいだ

 天使に影響するほどの猛毒だったのに、無事ってのもハクラちゃん大概だと思います

 少し落ち着いた僕は目についたものを取るために目をこすった

 そのくらいじゃこのトリモチは取れないみたい

 今度は魔力で破ってみようとしたけどそれも駄目

 色々と力を使ってみて、ようやく正解を見つけた

 その間もハクラちゃんはホオヅキさんを抑えてくれてる

 そして僕の導きだした最適解は妖力

 単純に妖力は妖力に惹かれある

 そのためこの妖力で作り出された目隠しも妖力で落とせるってわけだ

「よし見える! よーくみえるよ!」

 目が見えるようになってから探知と同時併用したので本当によく視えるようになった

 この場にある力の流れ全てが視覚情報だけじゃなくて五感、さらには第六感までもが研ぎ澄まされている

 僕はこの体に転生する前長い間盲目だった

 それ故に聴覚からの情報って言うのは特に敏感だったんだけど、探知ってそう言ったものも強化してくれるからたとえ気配を消して後ろに立とうとも

「こんな風に布の擦れるわずかな音でも聞こえるってわけなんだよね」

「ぬあ、完全に気配を断ってたのになんで!?」

 いつの間にか後ろに迫っていたホオヅキさんの攻撃を完璧に防いだ

「言ったでしょう? よく視えるって」

「まさか、探知を進化させた?」

「進化? スキルが?」

「君たちの世界にはないことだけど、スキルは進化することがある。今の君のスキルは探知から見の極みになっている。全ての感覚が強化されている。く、拙者じゃ君の見を突破できないだろうね」

「全部視えてますからね」

「ちぇ、もうちょっと遊びたかったけどまぁいいか、結果は上々」

「まさかこうなることを見越して僕の目を塞いだんですか?」

「さぁね。拙者の負けだから先に進んでよ」

 食えない人だ

 それと目が見えるようになってようやくその姿が分かったけど、狐耳と尻尾を持った少年忍者って感じ

 快活そうな目が可愛らしい

 とりあえず負けを認めたホオヅキさんは手裏剣と小刀を治め、ハクラちゃんも刀を治めた

 なんだかスキルの進化なんて言う素晴らしいことが起こって僕はホクホクと次の階層へ進んだ

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