妖怪族の国再び2

 迷宮に入ると一本道がずっと続くかのような場所になっていて、薄暗いからどこか不気味

 ロウソクの灯った和風の燭台がぽつりぽつりと道を照らしてるけど、それでも暗い

「なんだか昔の家を思い出します」

「昔の? あの大きなお城じゃなくんて?」

「はい、私とお姉ちゃんがまだ小さなころに住んでいた家でして、その頃はまだ城は建設途中だったんですけど、そこの廊下がまた暗く怖くて、いつもお母様かお姉ちゃんが厠について来てくれてたんです」

「はは、やっぱり昔も怖がりだったんだね」

「お恥ずかしながら」

 話しながら歩いていると何かが見えてきた

「ん? あれ何かな?」

「どれですか?」

「ほらあそこ」

 よくよく目を凝らすと奥に薄明かりが見えた

 多分小部屋のようなものだと思う

 長い長い廊下を歩いて進むと薄明かりの正体はやっぱり小部屋だった

 そこの中央に囲炉裏があって、囲炉裏の前に双子の女の子が座っている

「「ようこそ」」

「えっと、君たちは?」

「「私達はレコ様が天使の」」

「姉のシュラと」

「妹のシュネです」

「ここでは私達の試練を受けていただきます」

「試練の内容は簡単です。そちらの扉から出ていただいて」

「広場となっているので、私達の力を見ていて欲しいのです」

 息ぴったりにセリフを繋げていく双子のシュラさんとシュネさん

「見るだけですか?」

「いえ、見て覚えてください」

「とは言ってもまだ完全にマスターすることはできないと思います」

「ですので、見てこういったことができることを分かっていただきたいのです」

「それって僕ですか?」

「お二人です。これは神力を使った力ですのでお二人とも扱えるはずです」

「どういう力なんですか?」

「そうですね、精霊のあなたの場合は全ての属性を集約した極限魔法というものです」

「鬼神のあなたは幻術の極みです」

 双子それぞれがそう言って僕とハクラちゃんの前に立った

 僕の前に立ったのは狐耳に赤毛のお姉さんの方で、ハクラちゃんの方は同じ狐耳に黒毛の妹ちゃんの方だ

 二人ともよく似ていて、性格までもどうやら一緒みたいだ

 たんたんとしていてちょっと子供らしさに欠けるかな

 まぁ天使って子供の姿でもはるかに長い時を生きてるからそうとも言えないけど

「取りあえずお二人とも一緒に来てください」

「私達の力を見せるのでしっかりと覚えて下さい」

「はい、よろしくお願いします」

 狐娘二人の後について襖を開けて、縁側から中庭のような広場に出た

 日本庭園でもあるのかと思ったけど、本当にただ土があるだけの広場だったよ

 そこで二人一組に分かれた彼女たちの力を見せてもらうことになった

「まず私から、精霊の子、よく見ていなさい。まず魔力からエレメントをまとめ上げるイメージを作り出すのです」

「まとめ上げる、はい」

「次にまとめ上げたエレメントをすべてこよりのように結い上げて一つにするイメージです。この時光から始めて最後に闇を重ねるとうまくいくはずです」

「なるほどです」

「では実際にやってみましょう。これが極限魔法、エンディヴェラスです」

 すごい、凄いとしか言いようがない

 みるみる力が練りあがっていて、確かに魔力が結われていく感じの流れだ

 それぞれのエレメントが練られ結われて重なり、最後に闇のエレメントが折り重なる

 周囲にぐるぐると魔力の流れができてそれが全てシュラさんに集まっていく

 その体から途轍もないほどの力が放たれた

 この広場の周りには結界が張ってあるのか周囲は壊れなかったんだけど、その魔法を落とした土壌はものすごい爆音と共に吹き飛んで、溶けてガラス状になっている

 まるで核爆発のような威力に僕は無い心臓がドキドキする感じがした

「今のは威力をかなり抑えました。これで百分の一程度ですね」

「こ、これで!?」

「どうです? 丁寧にゆっくりとやったので少しは掴めたのではないですか?」

「は、はい!」

 確かにものすごく分かりやすかった

 そっか、分かりやすいようにゆっくりやってくれたんだ

 僕はその魔法のコツみたいなものがつかめかけていた

「では次は鬼神の子、あなたの番です」

「は、い」

 今の魔法で驚いて固まってたハクラちゃん

 顔が引きつってる

「では幻術の極みというものをお見せしましょう。あなたは幻術の初歩はできるようですがそれでは惑わせるのがせいぜい、耐性を持つ者には簡単に打ち破られてしまいます。ですからその真髄を教えます」

「真髄ですか? それはどう言うものなんですか?」

「まぁ見ていなさい。神力解放!」

 神力の桁が僕らと違う

 天使すごい

「幻術、妖」

 何だろう、景色が変わって

 あれ? ここは、僕の故郷の森だ

 奥に母さんがいて手招きしてる

 誘われるようにその胸に飛び込むと、突然グッと体を締め上げられた

 これは母さんじゃない! なんだかよく分からない化け物が僕の母さんに化けてる

 それは分かってるのに体が動かない

 全然動かなくて、そのまま僕は意識を失った

「ほら、大丈夫ですか精霊の子。まったく、耐性があるのにこんなに簡単にかかるようでは先が思いやられます。それで鬼神の子、どうですか?」

「はい! なるほど分かった感じです! えっと、高度な幻術は相手の体にも影響を与えるってことですよね?」

「そうです、なかなか分かっていますね。それがつかめただけでもあなた、優秀ですよ」

「ということはもしかして、これを極めれば」

「そう、相手を死に至らしめることもできます」

 なんて恐ろしい力

 いやまあ僕が教えてもらった魔法も人のこと言えないけどね

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