翼人族の国再び6

「ふぅん、くっふぅ、あふん」

 ハクラちゃんが驚くほど艶目かしい艶やかな声を出しながらちぎれ飛んだ腕を再生させる

 光の粒子が集まってスーッと伸びる腕

 ぐっぱと手の動きを確認し、刀を構え直したハクラちゃんは再びメティアに斬りかかっていく

 僕もそれに合わせて今度は精霊魔法じゃなくて普通の魔法を使い始めた

 自棄になったんじゃなくて少し思いついたことがある

 ハクラちゃんにそのことを伝えると彼女は僕の魔法が当たらないように縫うような感じで動いてくれて、僕は魔法をメティアに当てることに集中できた

 水のシールドの全く同じ場所に上級魔法のアイシクルバレッドという連射の効く魔法を撃ち込み続けた

 すると先ほどまで弾かれていたのが嘘のように水のシールドの一部が砕けた

 そこから氷の弾がメティア本体にあたってダメージがついに通った

「行けそうですね!」

「うん、ハクラちゃん決めて!」

「はい!」

 穴の開いた水のシールドに向けてハクラちゃんは斬撃を飛ばす

 でもメティアはその体表自体が固いみたいで少し傷をつけた程度だった

 ダメージは確かに通るんだけど、水のシールドはしばらくしたら穴が元に戻ってしまった

 それなら今度はと僕はさらに連射の効く魔法を撃った

「精霊魔法、オルガメテオ」

 小型隕石を雨のように降らせる魔法で、大型の隕石を降らせるよりはコントロールが効くので先ほどと同じように全く同じ場所に攻撃した

 その間も水の球を撃ってくるメティア

 水の球はハクラちゃんが防いでくれてるから安心して攻撃できる

 ハクラちゃんもだんだんその水球をうまく撃ち落とせるようになっていてダメージを受けなくなってる

「よし! 水のシールドが壊れた!」

 複数個所に隕石をぶつけたことでシールドは粉々に砕けた

 これによってメティアは剥き出しになってる

「あの表皮の硬さなら、これで!」

 一瞬でメティアの下に踏み込み、氷で足場をつくると刀を居合の形に構えて上を見た

「鬼仙流居合術奥義、天咆閃!」

 静かな、そして鮮やかな決着だった

 お腹を切り裂かれたメティアは悲鳴を上げて水の中に沈んでしまった

「メティアちゃん!」

 セセリさんは慌ててメティアを自ら引き上げると怪我した箇所を回復させた

「ご、ごめんなさい! 手加減できなくて」

「いいえ、これは試練なのですからあなたが全力をちゃんと尽くした結果です。メティアもいい戦士と出会えてよかったと言っていますよ」

 メティアも回復して元気よく嘶いている

 よく見ると目がくりくりしててすごく可愛い

「あの、メティアちゃんを撫でてもいいですかね?」

「まぁ、この子の可愛さが分かるのですね!? どうぞどうぞ」

「ではお言葉に甘えて」

「私も!」

 二人でメティアのフワフワした羽毛を触る

 あったかくて気持ちいいなぁ

 メティアも気持ちよさそうに目をつむってクルクルと鳴いている

 でも不思議だ

 あれだけ固かったはずの体は今は柔らかくてクッションみたい

「フフ、不思議ですか? この子は自分の体に魔力を通すことによって体をヒヒイロカネ以上に柔軟に、固くすることができるのです。それ故に人族に狙われて一度は絶滅仕掛けたのですが、ヤコ様が保護してくださったおかげで今では様々な世界で繁殖できています。それにヤコ様はこの子たちを神鳥として加護を与えてくださったので、今ではこの子たちを害する者も少なくなりました」

 嬉しそうにそう語ってくれたセセリさんと、可愛く鳴くメティアに手を振って僕らは次の階層への扉をくぐった

 くぐった瞬間僕らは爆撃のような攻撃を受けて二人とも吹き飛んでしまった

「う、いたたた、何が起こったの?」

「ふぐぅ…」

 倒れたハクラちゃんは直撃したみたいで動けないでいる

 攻撃が飛んできた方向を見ると、今度は燃え盛る翼人の女性が立っていた

「よお、その程度で死んじゃいねぇよな? 俺はヤコ様が天使の一人、ササミ。さぁ遊ぼうぜ!」

 燃えた手から先ほど飛ばしたと思われる火球を出すササミさん

 もう見るからに戦闘狂じゃないか

 彼女はニヤリと笑うとまたも火球をガンガン飛ばしてきた

 倒れて動けないでいるハクラちゃんを抱えると後ろに下がってその火球を避けた

 メティアと同じようにその火球にも魔力が濃く練り込まれていて、衝撃波で体が傷つく

 ぐぬぬ、まだハクラちゃんも動けそうにないし、このままだとじり貧かも

 とにかくやたらめったらに火球を撃ってくるから厄介すぎる

 まわりも燃え盛り始めて温度がグングン上がってるし

「ほらほらどうした! メティアを倒したんだろうが! その力見せてみろや!」

「ちょっと! 待ってよ! ハクラちゃん気絶してるし!」

「お、それもそうだ。じゃあそいつどっかおいて来いよ。その間待ってやるから」

「え」

「早くしろ!」

「は、はい!」

 ハクラちゃんを安全そうな岩陰に置くと仕切り直しとばかりに対峙した

 ササミさんはまたニヤリと笑って手から火球を出す

「じゃぁやり合うか」

「うん」

 飛ばしてくる火球は攻撃力こそすごいけど命中率は悪いみたいだ

 それに結界で防げる

 僕は冷静に火球に対処しつつ、弱点でありそうな水魔法や氷魔法で攻撃してみた

 でも彼女、自身の放つ温度が高温すぎて当たる前に魔法が蒸発してしまうんだよね

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