獣人族の国再び2

 旅立ったとは言っても二人とも転移を使えるのであっという間に、というより黒族の皆さんが作ってくれた転移装置もあるし、今や世界中どこでも行けるようになっている

 母さんは転移が使えるから転移装置を使ってはいないみたいだけど、転移の使えない下級精霊や妖精たちは喜んでる

 それにこの装置、エコと言えばいいのかな? 魔力が必要な装置なんだけど、周囲を漂う魔力を吸収してるから自然にも優しい

 漂う魔力はほとんど無限と言っていいからね

 で、もう着いちゃったわけなんだけど、かなり久しぶり

 あの時は騒がれたくなくて人間に偽装して来てたけど、今は普通に精霊の姿だ

 すぐに獣人たちに囲まれてもみくちゃになった

「精霊様だ! 精霊様がいらっしゃったぞ!」

「ほんとだ!」

「やったー!」

 お、多い多い多い

 ハクラちゃんが巻き込まれてどこかに流されていっちゃった

 とりあえず飛んでハクラちゃんを見つけ、手を掴んで引き上げるとグスグスと泣きべそをかいていた

 ハクラちゃんってお姉さんと離れると弱虫になるのかもしれない

 落ち着いたハクラちゃんを連れて今度は王の所へ行かなきゃね

 この国の王はリオ・ガルドラという女王で、確か三つ子の王女がいたはず

 まだ会ったことないけど噂になってるからね

 三者三葉の顔立ちらしくて、長女は犬型獣人、次女は猫型獣人で、三女は犬耳に猫の尻尾を持ったハーフ系らしい

 まぁそうなったのは母親であるリオさんが金猫型、父親である故人のベオさんが銀狼型獣人だからだ

 金と銀の毛並みを持つ三姉妹か、早く合ってみたいかも

「私の父上と母上も金と銀の鬼仙でしたよ。それはそれは綺麗な母上でした」

「そう言えば聞いたことあるね。キンゲツさんとギンカさんだったっけ?」

「はい、優しく強い父と母でしたが、凶悪な魔物との戦いで命を落としました・・・。でも私は今でも父上母上を尊敬しているのです」

「うんうん、母さんも凄い人たちだったって言ってたよ」


 さて、ハクラちゃんも落ち着いたことだし、いよいよ城に入るかな

 門の前に降りると衛兵さんたちが驚いて、すぐに城の中へと通してくれた

 そして真っ先に女王リオさんの元へ案内される僕達

「これは精霊様! ようこそおいでくださいました! ささ、こちらにお座りになってください」

 金色の美しい毛なみに赤と青のオッドアイ

 この人がリオさんだね

「「「ようこそ精霊様!」」」

 で、三人で息ぴったりにそう挨拶してくれたのが、長女のレイちゃん、次女のレナちゃん、三女のレビちゃん

 一応それらしい格好はしているけど、まだ幼いからお姫様って感じじゃないなぁ

 でも可愛い

「精霊様、そちらの方はもしかして」

「うん、鬼人族の姫、ハクラ姫だよ」

「お久しぶりですリオさん」

「まあまあ! こんなに大きくなって! キンゲツ王も天界でさぞやお喜びになっていることでしょう。それにその力は?」

「はい! ついに鬼神に成ることができました!」

「やはりそうでしたか・・・。まさか私の生きている時代に鬼神に会えるとは。感激です」

「母様~」

「その綺麗なお姉ちゃんだ~れ~?」

「真っ白~」

「その方は鬼人族で、あなた達と同じ姫ですよ。ほら、ちゃんとご挨拶なさい」

「「「はーい!」」」

「レイです!」

「レナです!」

「レビです!」

 か、かわいいいい!

 なんてかわいいんだろうこの子たち!

 小っちゃい、可愛い!

 思わず三人供抱っこして抱きしめてしまった

「ふわふわ~」

「うう、精霊様くるちぃい」

「精霊様お花の香りする~」

「精霊様いい匂い~」

「あの精霊様、うちの子たちを放していただけると」

「あ、ごめんね! つい夢中になっちゃって」

 三人を放すと、彼女たちにすっかり懐かれてしまって、ずっと僕に張り付いてくれて可愛い

 おっと、肝心なことを忘れてた

「あの、リオさん」

「はい精霊様」

「実は・・・」

 僕はニャコ様にここの迷宮に来るよう言われたことを説明して、迷宮に入らせてもらうことを頼んだ

「もちろんです。すぐに手続きいたしますので少々お待ちください。あ、ハクラちゃんも行くのかしら?」

「はい、そのつもりです!」

「そう、それじゃあやっぱりワコ様の」

「ワコ様?」

「ええ、ニャコ様と同じ神様でして、この国の守り神でもあります。時々降臨なさってるんですよ」

「なるほど、じゃぁもしかして僕らが来ることも聞いてたってこと?」

「はい、ですが来ると言われていただけでして、目的までは聞いていなかったのです。その、ワコ様は少しおっちょこちょいなところが・・・」

「そ、そうなんだ」

「でも可愛らしい方ですよ! 凄く優しい方です」

「そうなんだ」

「あ、一つ伝言が。待ってると伝えて欲しいわんとおっしゃってました」

「なるほど、迷宮の奥で待ってるってことかな?」

「恐らくそうかと」

「よし、そうと決まればハクラちゃ・・・。ハクラちゃんなにしてるの?」

「あ、も、申し訳ありません!」

 ハクラちゃんは三姉妹と戯れてあられもない姿に・・・。何してるんだこの子は

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