イレギュラーメルカ5

 最近偶然気が付いたんだけど、私、エイシャちゃんの気配をはっきりと辿れるみたい

 これはとある世界で眠ろうと目をつむった時に、エイシャちゃんのことを考えたからわかった能力

 あの子のことを深く思いながら気配を探すと、その位置が手に取るように分かった

 よし、ちゃっちゃと飛んじゃおうっと

 目をつむり、エイシャちゃんのことを考える

 エイシャちゃん、私の大好きなお友達。元気にしてるかな?

 封印の中からのエイシャちゃんしか知らないし、どんな顔をしているのかも知らない

 でもあの子は私のことを友達だと言ってくれた

 アズリアが言っていたけど、あの子にとってつらいことがあったのは確か

 もしあの時私が寄り添ってあげれていたら、何かしてあげれていたかもしれない。 それがちょっと悔しい

 エイシャちゃんの位置を正確につかむと彼女の元へ飛んだ

 目を開けると驚いた顔のエイシャちゃん、そしてアズリアと知らない女神が立っていた

「嘘、メルカ、ちゃん?」

 私はすぐにエイシャちゃんに抱き着いた

 気配ではっきりこの子がエイシャちゃんだってわかる。向こうも私の気配を感じて分かってくれたみたい

「何でこんな、それより逃げなさい! ここにいてはだめよ!」

 逃げる? やっとエイシャちゃんに会えたのに逃げるなんてとんでもない

「こっち! 一緒に逃げましょう! アズリア姉様、マキナ姉様! お願い!」

「ええ、早くこっちに!」

 アズリアの後をエイシャちゃんとマキナと呼ばれた女神が続く

 私はエイシャちゃんに手をひかれた

「急ぐわよ! ここは神々の世界、もうメルカちゃんは見つかっているわ!」

 そう言えばさっきから視線を感じるわね。監視されているような嫌な感じ

「ねーねーエイシャちゃん、やっと本当に会えたね」

「もう、緊張感ないのは相変わらずね、メルカちゃん。あなたをきっと助けるから、あのときみたいに何もできない自分じゃないもん!」

 エイシャちゃんに手をひかれるのはなんだかドキドキして、胸の奥が熱くなってくる

 これが、お友達と手をつなぐってことなのかな?

 エイシャちゃんに連れられて私たちは神々の世界から逃げ去った

「大変ですラシュア兄様!」

「何ですかキュカ、騒々しいですよ。こちらはそれどころでは」

 天の神ラシュアの元に慌てたように駆け寄る監視の女神キュカ、彼女は今この神々の世界で起こったことを自分の見たままありのまま話した

「な、また、エイシャですか。いや、あの子ならそうするでしょうね。全く、話をちゃんと聞いていなかったようですね」

「話を?  あのイレギュラーメルカと関係ある話なのですか?」

「ええ、とにかく追手を。あの子たちを引き戻しなさい。それとサニアたちに連絡を。どこかで会った場合保護するよう伝えてください」

「保護、ですか? イレギュラーメルカは危険なのでは? 全ての神々の力を使って消滅させるものかと」

 ラシュアは少し驚いたようにキュカを見る

「そんなことするはずないでしょう。一体だれがそんな噂を。いえ、分かりました、ホルタですねまったくあの子は」

 ホルタは噂の女神、非常にうわさ好きの彼女は少しでも聞きかじったことをあっという間に拡散してしまう

 伝達の神ルフェインとは非常に相性が良く、二人で行動することが多い

「ねぇねぇ聞いてにぃに! 面白い噂を持ってきたのよ!」

 噂をすれば影が差すとはよく言ったもので、ホルタがタイミングよくやって来た

「ホルタ、また勝手に色々広めましたね?」

「う、にぃに顔怖い。怒ってる?」

「怒ってますよ。まぁ反省は後でしてもらうとして、どうしたんですか?」

「えっとね、エイシャちゃんがマキナちゃんとアズリアねぇねと一緒にメルカを連れてどっか行っちゃったよ。神々の間はこのうわさで持ち切り! まあ私が広めたんだけど」

「分かってますよ。それよりもホルタ、貴方にはやってもらいたいことがあります」

「ん? なーに?」

「ルフェインは今忙しいのは分かっていますね」

「うん、ルフェインにぃに忙しそうだった」

「だからルフェインに変わってあなたに伝言を頼みたいのですよ」

「え、それって」

「はい、貴方ももう一人前の女神としてやっていけるでしょう。噂の女神としての権能をしっかりいかんなく発してきなさい」

「やった! にぃにありがとう!」

 ぴょこぴょこと飛び跳ねるホルタを制止するラシュア

「その前にです」

 彼女を近くに来させ、しっかりと目を見て言い聞かせるように話した

「これは重要な任務です。あなたにはこれからエイシャを追ってもらいたいのです」

「え、エイシャちゃんを? うう、あの子苦手、怖いんだもん」

「大丈夫です。私からの伝言を伝えるだけですから。それともしエイシャに会う前にサニアたちに出会ったら、着いて行きなさい。エイシャに伝言を伝え、メルカを保護しなさい」

「うん、わかったよにぃに!」

 ホルタはしっかりと理解したようだ。ラシュアは満足そうに妹神の成長を喜び、彼女を送り出した

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