白黒 童子姉妹の冒険11

 以前より強力になってっ復活した劣化神話級たちは、昨日戦った時とは違う攻撃を繰り出し、フェイントも織り交ぜつつかなり厄介な相手になっていた

 私は仙力と気力、方力を常に体にまとわせ防御力と身体能力を大幅に向上させていた

 お姉ちゃんは魔力と妖力を織り交ぜ最大限に速さをあげて劣化神話級たちを翻弄している

 これによって昨日戦った劣化神話級なら、強化されていても簡単に倒せるようになっていた

 劣化ゴリアテによる大ぶりの拳を交わして脇腹を切りつける

 刀と体は一心同体のようにお姉ちゃんの手となりその刃は劣化ゴリアテにめり込んでいった

「妖魔術、黒牙!」

 傷つけられた脇腹から黒いシミが広がって劣化ゴリアテの臓腑を腐らせていく

 これは何というか、エグイよお姉ちゃん

「五匹目!」

 劣化ゴリアテを倒して次は劣化月兎

 異世界の月に住むという神獣で、恐ろしいのはその能力

 月兎の周囲半径十メートル以内にいると、狂気の感染という状態異常を引き起こして、正常な判断ができなくなり、仲間に危害を加え始めるらしい

「ハクラ、仙術を!」

「うん!」

 お姉ちゃんに言われた通りに私の仙術を発動

「仙術、霞境界」

 この術は周囲に霞をばらまいて状態異常を大幅に防ぐことができるんだけど、神話級に効くのかな?

 不安のまま劣化月兎との戦いが始まった

 月兎は跳ね回り、動きを捕らえるのが難しい

 まるで重力なんてないかのように空中を蹴って弾丸のような体当たりを仕掛けてくる

「妖術、白幻影しろのげんえい

 相手に幻影を見せる妖術だけど、どうやら月兎には幻術の類が効かないみたい

 月兎の目が赤く怪しく輝いてその幻影を消し去ってしまった

「くっ、それなら、方術、連槍つらなりのやり!」

 相手を追うように地面から生える無数の槍を月兎はいともたやすく躱していく

 さすがに的が小さくてなかなか当たらないけど、少しかすってくれた

 これなら!

「妖仙術、黄泉白霧よもつしらきり

 周囲に霧が立ちこみ、その霧が月兎を包み込んだ

「黄泉白霧、破」

 霧に包まれた内部ではその霧の一部が月兎の傷口に張り付いて急激に膨張し、破裂した

 しばらくして霧が晴れると、そこには消えていく月兎

「狂気は感染しなかったみたいね」

「ええ、ハクラを攻撃することにならなくてよかったわ」

 次に飛び出したのは劣化アポフィスという巨大な蛇のような神話級で、その昔太陽を喰らったらしい

 確かに顔だけでヤマタノオロチほどもあって正直に言うとかなり怖い

 吐く息は毒霧なのか周囲の空気が腐ってる

「大丈夫よハクラ、私達に毒は効かないわ。それにただ大きいだけ、見てみなさいあの緩慢な動きを」

 たしかにアポピスはゆっくりと鎌首をもたげてこちらを睨んでいるだけ

 這う速度も遅くて私達に噛みつこうと口を開くその動きもゆっくり

「合成魔方術、天雷白黒てんらいびゃっこくのさばき!」

 超高圧力の雷の刃を二人の合成術によって生み出し、それをアポピスの頭に振り下ろした

 ガキンッ

 金属音がしたけど、超高電圧と超高熱によって豆腐を切るかのようにアポピスの頭を真っ二つに切り裂いた

 頭をつぶされその巨大な筋肉が一気に伸縮を繰り返し、広場を大きく揺らした

 檻は破壊され、その中にいた劣化神話級もつぶされて消えてしまった

「む! これは予想外の結果じゃ。仕方ない、今日はここまでじゃの」

 広場が使えなくなったため今日の訓練は終わりみたい

 またゆっくりとスライム風呂に入って疲れを癒して眠りについた


 ハクラたちが眠ってから数時間後、まだまだ体力に余力を残しているアカネたちはスライム風呂に入っていた

 雄の龍王は入れていないが、ここには牝の龍王も入っている

「あなたたち、もう少しで童子に成れそうですね。力の高まりを感じます」

「うちとしてはこれ以上強くなられると困るんだよね。うちらだってそれなりに強いってのに立つ瀬ないじゃん」

 スライム風呂に浸かって疲れを癒していると、お湯が流動した

「ひゃう! ななな何すかこれ! お尻に何か触るんすけど!」

 尻尾の毛を総毛立てて生々しくも気持ちのいい感触に戸惑うアカネ

「スライム風呂って、こういうことだったんですね。中に、溶け込んでいるのですか?」

「そうぅだぁよ。ここのぉスライムぅはぁ、アンミツ姫ぇがぁ育ててぇるぅペットぉでぇねぇ。とってぇもぉおとなしいぃんだぁよぉ」

 先ほどから喋っていないソウカの方を見てみると、何やら顔を真っ赤にしており、アカネたちはのぼせたものだと思っていた

 それからすぐにその理由が分かることになるのだが、アカネとキキはひとまず今のこのねっとりとした湯の気持ちよさに満足いしていた


 ちなみにこの日、土龍王ロダルはアカネ、キキ、ソウカそれぞれの妖仙術によって一撃で倒されてしまい、落ち込んでいた

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