妖怪族の国35
ガシャドクロ族の里は大きい人が多い
骨がむき出しの人もいれば、妖術で肉体を作っている人もいる
ちなみに身長は低くて三メートルで、大きい人だと二十メートルはあるかな
「ようこそおいでくださいました。わたくし族長が次女のシャクナゲと申します。本来ならば長女のシャクヤクが案内するのですが、シャクヤクは現在魔国で修業中でして、不肖ながらわたくしが案内させていただくこととなりました」
さすがガシャドクロ族
おしとやかな物腰に線の細い美しい女性だけど、その大きさは十メートルと規格外だ
紫色のユリの花の模様がおしゃれな着物を着てる
「それでは最初は頭蓋高原へ参りましょう」
この里の観光名所はみんな骨に関する名前がついているらしい
頭蓋はその名の通り頭だね
シャクナゲさんについて歩くんだけど、一歩一歩の歩幅が大きくてついて行くのが大変だ
それに気づいたのか、シャクナゲさんは歩幅を小さく、ゆっくり歩いてくれた
とっても気の利く人だね
「実はですね、わたくしにはもう一人妹がいまして、姉のシャクヤクと共に修行の旅に出ているのです。名前をシャクシと申しまして、姉と同じように好戦的な性格なのです」
シャクナゲさんは争いが嫌いで、痛いのが怖いらしい
だから里を政治面で支えているそうだ
それ故にこの里の内情や観光、名産などにやたら詳しいらしい
「つきました。この高原では
高原をざっと見渡すと、骨太で、身の丈が三十メートルもある乳牛たちがのびやかに牧草を食はんでいた
それにしても、普通の牛乳の三十倍ものカルシウムが含まれていると言われている殻付きエビ、その十倍だからここの牛乳を毎日飲んでいれば骨が鉄筋なみに硬くなるんじゃなかろうか
牛たちはおとなしくて、僕たちが背中に乗っても気にせず草をもしゃもしゃと食べ続けていた
臭いはちょっときついけど、背中の上はあったかくて、毛は絨毯のように柔らかかった
牛から降りると、シャクナゲさんが僕の背丈の三倍はある牛乳瓶を持ってきた
軽く一トンはありそうな牛乳入りの瓶を片手で軽々もち上げるあたり、シャクナゲさんが本来相当に強いことが分かる
その瓶から渡された陶器コップに牛乳を注いで飲んでみた
ほのかな甘さと濃厚な味わい、とろりとしたコクがありながらも後味はすっきりとしていた
「どうですか? 里自慢の牛乳は」
「今まで飲んだ牛乳で一番だよ!」
嬉しそうに微笑むシャクナゲさんはまるで花のように可憐だ
牛乳を堪能した後は乳牛たちの世話体験までできるみたい
牧草はセイタカグリーンという品種で、実はこの里名産の野菜でもある
この牧草は甘い香りがしていて、てんぷらや生サラダとして食べても美味しいらしい
「この束を放ってみて下さい」
シャクナゲさんは僕の半分ほどもある大きな牧草の塊を渡してくれた
このくらいなら僕でも持てるね
牧草を持ち上げて、放り投げた
「よいしょーー!!」
おっさんみたいな掛け声になっちゃったけどうまく投げれたみたい
その牧草を乳牛が走っていってキャッチ!
なかなかの速さでかけて行くんだけど、足が振り下ろされるたびに地面が揺れてちょっとした地震みたいだ
「次は乳搾り体験をしていただきましょうか」
牧場にいくつかある大きな牛舎
そこにはすでにいつでも絞れるように牛たちが繋がれていた
「この子はウシコと言いまして、いつも美味しい牛乳を作ってくれる子なんですよ。あっちはウシミ、あちらはウシノ、こっちの子はウシピッピとウッシーナです」
日本的な名前の子はシャクナゲさんが付けたみたい
ウシピッピはシャクヤクさんで、ウッシーナはシャクシさんが名付け親だ
「精霊様には大きくて搾るのは難しいと思いますが、これを使えば小人族でも搾れるようになりますよ」
シャクナゲさんが指さす先には手袋があった
僕達くらいの普通サイズの種族用から巨人族用に小人用、ヒレのある種族用や水かきのある種族用と多種多様だ
この手袋はマジックアイテムで、百メートル先からも乳搾りが出来るという優れもの
ドワーフに作ってもらったらしい
「装着しましたか? ではまずお手本をお見せしますね」
シャクナゲさんは着物の袖をまくり上げて洗濯ばさみのようなもので挟んで止め、乳牛のお乳に手を当てて搾り始めた
人差し指から順番にゆっくりと指を閉じて搾っていくと、とんでもない量の牛乳が滝のように搾り出た
「では、やってみて下さい」
見よう見まねで僕たちは乳搾りをし始めたんだけど、これがなかなかに難しい
手袋にかかった魔法で照準というか、見えない手はちゃんとお乳を掴んでるんだけど、シャクナゲさんと同じように指を動かしても牛乳は出てくれなかった
しばらく試行錯誤してようやく水鉄砲のように牛乳が出た
シャクナゲさんの搾り具合とは大違いだね
「いかがでしたか? あとで牛乳を殺菌処理したものをお土産に包みますね」
「ありがとう! 母さんに持って帰って飲んでもらうよ」
「まぁ、女王様にですか? それは光栄です」
牛舎を出てお土産の牛乳をもらったんだけど、さっき見た瓶と同じくらい大きな瓶でくれたからびっくり
テュネが空間収納できるアイテムを持っていなかったら持って帰れなかったよ
袋に牛乳を収納して次の観光地へ
今度は背骨山脈という低いけど長く連なった山々だ
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