黒の国9

 さて、時間がかかるから何もすることがなくなってしまった

 今僕はテュネたちと別れてクノエちゃんと二人で道にあるベンチに座っていた

 テュネたちには資料探しを手伝ってもらっている

 今僕は情報が集まるのを待っている状態で、やることがないのだ

 かといって観光できる気分にはなれない

 殺された妖精たちのためにも闇人を・・・

 僕は、どうしたいんだろう?

「あいつらは復讐って言ってた。神様への復讐って」

「気になるなら直接聞いてみたらいいじゃない」

 クノエちゃんが突然そんなことを言った

「聞くって、闇人に?」

「それは難しいです。でも、そいつらと敵対していた神様なら詳しいことを知ってるはずですよ」

 なるほど、当事者に聞くってことか。でも、どうやって?

「ほら、わちきってば神降ろしができるじゃないですか? それでアマテラス様を降ろせば聞けるんじゃないでしょう?」

 そういえばそうだったね

 でも、アマテラス様に迷惑じゃないだろうか

「大丈夫です! アマテラス様は優しいからそんなことで怒らないですよ。たぶん!」

 たぶんってところが強調されてる気がするけど、他にできることもない。物は試し、やってみよう

「それじゃぁこっちに来てくださいな」

 クノエちゃんに連れてこられたのは四畳ほどの空き部屋

 祭りの時みたいな大掛かりな儀式はできないけど、降ろすだけならこの部屋くらいで十分らしい

「じゃ、降ろしますね」

 クノエちゃんは何やら唱え始めた

「柏子見柏子見・・・」

 かしこみって部分しか分からなかったけど、神社で神主さんがやる祝詞みたいだ 

「御神降ろし、アマテラス!」

 クノエちゃんが光り輝き始めた

「なんじゃ? 祭りでもないのに呼び出しおって。まぁよい、あんみつで手をうってやろうぞ」

 あいかわらずのあんみつ好きだね

「おお、リディエラではないか。久しぶりじゃのぅ」

「お久しぶりですアマテラス様!」

「かしこまらんでよいよい。して、聞きたいことがあるのじゃろう?」

 さすが神様、お見通しなんだ

「はい、実は」

 僕はあんみつをムシャムシャしているアマテラス様にこれまでのいきさつを話した

「そうか、そのようなことになっておったとは・・・。これは我ら神々の問題でもある。よし、兄上に頼んでそちらに助っ人を送るとしよう」

「助っ人、ですか?」

「うむ、かつて闇と戦い、闇を討ち果たしたつわものじゃぞ」

 それはありがたい

 でも、アマテラス様が紹介する助っ人ってことは、その人も神様なのかな?

「そうじゃ、神じゃな。最近末席に加わった我らが愛しい妹たちじゃ」

「たち?」

「うむ、二人で一つの女神じゃからな。名前をルニアとサニアという」

 ルニア様とサニア様? ん? どこかで聞いた気が・・・

 あ、エルフの国だ。あそこの女王様が確かルニサニアさんだったね

 名前、似てるな。偶然なのかな?

「フフ、まぁそのあたりは別に良いじゃろう。では、後ほど二柱を降ろす。二柱とも気さくじゃから気を使う必要はないぞ」

 そう言うとアマテラス様は帰っていった

 ていうか、普通に心読んできたな、あの女神様・・・

「どうだでした?」

「うん、女神さまを二柱も派遣してくれることになったよ」

「え!? なにそれすごいじゃないですか!」

 そうなんだ、やっぱりすごいことなんだ

「で、どちらでお出迎えすればいいのでしょうか?」

「あ、それは聞いてなかったな」

「なにしてるのですか! とにかく、これは国の総力をあげなきゃいけないことです! すぐにカンナのところへ行きましょう!」

 まぁ神様一柱でもあのお祭りだもんね。そりゃそうだ

 ましてや今回は自らこっちに来てくれるんだし。国を動かさなきゃいけないくらいすごいことなんだろうね

 で、国を挙げて歓迎する間もなく、二柱の神様は僕たちの後ろに立っていた

「えっと、初めまして、いえ、お久しぶり、ですね。私がサニアです」

「私はルニアよ。よろしくね」

 よく似た双子の姉妹だ

 それにしても久しぶり?どういうことなんだろう

 分からないけど、二柱はさっそく闇に関する情報と戦いについて教えてくれた

「なるほど、では、闇はかつて犠牲になって滅んだということなのですね?」

「はい、あの頃の私たちはまだ神ではありませんでしたが、彼ら闇と協力してとある共通の敵を倒したのです。闇はそれに操られていましたが、その呪縛から解き放たれて私達を手助けしてくれました。しかしまさか眷属を生み出していたとは・・・。恐らく彼らは私達が闇を滅ぼしたと勘違いしています。闇がまだ呪縛に囚われていたころに生み出され、私達に対する恨みを聞かされていたはずですから」

「ごめん、私らの後始末なのにこんなことに巻き込んじゃって」

「いえ、そんなのは女神様達のせいじゃないですよ。それに今こうして来てくださってるじゃないですか。それだけでもありがたいです」

「そういっていただけると心も晴れます。私達があなた達を絶対に助けます。だからお願いします。力を貸して下さい」

「はい、もちろんです!」


 これから会いに行く黒族はずっと洗脳された闇に囚われていた

 僕も彼らを巻き込むつもりはない。もともと話を聞くだけのつもりだったし、そこは問題ないね

「たしか彼らの居場所を探してるって言ってたわね。大まかな場所が分かれば私達が見つけてあげる」

 ルニア様は楽勝とばかりに笑っている

「私は能力の女神、劣化版ではありますがあらゆる神々の力を使えます」

「で、私は破壊の女神よ。力はその名の通りね」

 心強いな。この二柱に任せれば大丈夫そうだ

 僕は頭を下げてお願いした

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