精霊の国の危機2

 結界を張ってから数日、龍たちが襲撃してくることはなかった

「僕もかなり回復したことだし、ムラサメの看病、変わるよ」

 母さんもかなり憔悴している

 僕と母さん、そして癒しの精霊カイユとで交互に魔法をかけ続けている

 ムラサメはほぼ回復しておらず、相変わらず危険な状態だ

 ガンちゃんから連絡はないけどきっと頑張っているんだと思う

 それから十二時間、すっかり回復した僕は再びムラサメのそばへ来た

「母さん、ムラサメに何か食べさせてあげたいんだけど」

「それはいいですね。ぜひ、作ってあげて」

 何かスタミナがあるものがいいだろうね

 そうだなぁ・・・。親子丼、とかどうだろう

 さっそく材料を方々から集めた

 玉ねぎに似たポコロ、ネギ、お米、鶏肉と卵

 よし材料はそろった

 まずは玉ねぎを切りあめ色になるまで炒めた

 そのあとに一口大に切った鶏肉を炒め、軽く火が通ったところでたれを入れ煮詰める

 次に溶き卵をまわしかけて、最後にネギを振りかけて出来上がりだ

「ほら、ムラサメ、ちょっと熱いけど食べて」

 僕は一口分すくい取ってムラサメの口に運んだ

 意識がないながらもムシャムシャと咀嚼して食べている

「リディ、エラ、様・・・」

 ムラサメが意識を取り戻した

「ムラサメ!」

「これは?」

「これはね、親子丼。元気が出るから食べて」

 僕はさらにムラサメの口に運んだ

 弱弱しくも、一生懸命食べた

 食べ終わると心なしか表情が和らぎ再び眠りについた

「ムラサメ・・・」

 以前予断を許さない状況で気が抜けない

「大変です!」

 そのときシノノが扉を開けて入って来た

「外に、また龍の群れが!」

 まだ結界は破られていないけど時間の問題だという

「もう、許さない」

 体に魔力を行き渡らせる

「かあさん、僕行くよ」

 その様子を見て母さんは、心配ながら送り出してくれた

「気を付けてね。リディちゃん」

 外に出て、まっすぐ龍たちの元へ向かった

 結界では龍たちが攻撃を仕掛け、今にも破壊されそうになっていた

 結界にひびが入る

「させないよ」

 結界が壊れるより早く僕は龍の目の前に来た

「なぜこんなことをするんだ」

 目の前にいるのは以前逃げ出した大きな龍だ

「ふん、貴様ら程度が世界にのさばり、崇められるのが気に食わん。貴様らを殺しつくして俺たちがこの世界を支配してやる」

「そんなことのために、妖精を、精霊を傷つけたのか」

「貴様もすぐ死んだ妖精たちの元へ送ってやろう」

「許さない」

 僕はありったけの魔力をこの一撃にこめた

「レディアントディマイズ」


 それは、精霊魔法の中でも最も古いと言われる母さんが作り出した魔法だ

「なんだ、この力、は」

 龍のリーダーは驚愕している

 構わず僕は魔法を放った

 この光を浴びた者は痛みを感じることなく消滅する

 コントロールは神様でも難しいんだけど、この時の僕はなぜか正確に龍たちを射抜けた

 しかしリーダーはいち早く危険を察知して逃げていたようだ

 魔力の尽きた僕はそのまま気絶してしまった


「クソ!クソが! あんな化け物が!あれはなんだ!? なぜあのような小娘が!あんな魔法を!」

 龍のリーダーは怒り狂っている

「お前たち!もう一度だ! 精霊の国に戦争を仕掛けるぞ!」

 残っていた龍たちすべてにそう告げた

「それは、少し待った方がいいと思いますけど?」

「ミヤか、貴様が今が狙い時だと言ったから攻めたのだぞ! よもやあのような化け物がいるとは聞いていない!」

「それは、私も予想外でしてね。でも、今はまだ責めない方がいいですね。また全滅させられるのが落ちですよ」

「ならば貴様も強力しろ。何のための同盟だ」

「そうですね。今度は負けないよう準備をしましょう。それまでは攻めるのはなしです。それに、今神が降臨してますからね。あれが帰ってからでないと大きくは動けませんよ」

「ふん、わかった、今は攻めぬ。だが、時が来れば・・・」

 ミヤと呼ばれた女性は作ったような笑顔を浮かべ、頭を下げて消えた

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