魔族の国2

 サルハに着くとちょっとした騒ぎが起きていた

 近くの観光地で魔王が何者かの襲撃を受けたみたいだ

 すぐに観光地である湖に案内してもらい、その湖の横に立っている小型のペンションの中へと入った

 奥から声がする

「なるほど、ではあなたは呪いで仕方なく襲ったということですね?」

 綺麗な女性の声がする。僕は扉をノックした

「入ってもいいですか?」

「どなたですか?」

 すぐに返事が返って来たので自己紹介した

「僕、マクスウェルのリディエラです。魔王に会いに来ました」

 すると扉が開き、秘書風の美人が出迎えてくれた

 奥には縛られた少女と活発そうな少女、それと見るからに強そうな女性がいた

 秘書風の女性の隣にはその女性を慕うように張り付いている少女がいる

「まぁ、まさか王女様自ら来られるとは、本来ならばわたくしたちが出向くのが筋ですのに」

「気にしないでください。僕らは今旅をしてるんです。平和になったこの世界を見て回ってたんですけど、どうやら何かおかしなことがおこってるみたいですね」

 魔王を狙っている者の話も聞きたいし、とりあえず中に入れてもらった

「おお、精霊様じゃな! 吾輩は魔族の王魔王キーラ! あいや、キーラ、です」

 言い直している。可愛い・・・

「僕はリディエラ、よろしくね、キーラちゃん」

「ちゃん付けは恥ずかしいからキーラと呼んで欲しいぞ、です」

 なんてかわいいんだろうこの魔王

 思わず守ってあげたくなるような、そんなかわいらしさがある

 ちなみに僕の方が小さくて年下だ

「じゃぁ僕に対して敬語は使わないでね。ところで、キーラ、この子は?」

「ん?あぁ、吾輩を襲ってきた不届き者、だな」

 どうやらこの子が襲撃犯らしい

 見た目はキーラと同じくらいかな

「ねぇ、この子やっぱり」

「えぇ、同じ呪いですね」

 テュネと僕はうなずきあった

「うぐぅっ」

 突如苦しみ始める少女

「大変だ! 早く解呪しないと!」

 僕は駆け寄ってその呪いを解いた

 すると、うそのように穏やかな顔になった

「これは・・・。呪いが解けたの?」

 少女は自分の体を確かめる

 呪いが解けたことに安心したのか泣き始めた

「うぅうう、ありがとうございます精霊様! 怖かったですぅうう」

 僕に抱き着いてきた

 僕は頭を撫でてあげたけど、僕の方が小さいのでなんだか変な感じに

 ひとまず落ち着かせて話を聞いた

 名前はカリニュア

 ニーバ同様に呪いをかけた相手の姿は覚えていないそうだ

 彼女が呪いをかけられたのは田舎の小さな村で、彼女もまた強力な魔法を使えるのを利用されたらしい

 カリニュアもまた被害者だったのだ

 相手はこういう争いの嫌いな者でも呪いによって無理やり暗殺者に仕立て上げているようだ

「私、村に戻らなきゃ。お父さんとお母さんが心配してると思うの」

 まだ危険だろうから送っていくことにした

 その前に魔王への用事を済ませておこう

「キーラ、少しいいかな?」

「む、何だ、ですか?」

「敬語はいいってば。精霊族と友好を結びたいって聞いたんだけど、今ここで結んじゃおう」

「え? いいのか!?」

「うん、母さんがジューオンと魔王の様子を見て大丈夫そうなら友好関係を築きたいって言ってたんだ」

「あ、ありがとう! これで魔族も世界に認められるのだ! みんなと仲良くなれるのだ!」

 はしゃぐキーラ、ほんとに可愛いな

 さて、あとはカリニュアを送っていかないとね

 キーラとは通信魔法でいつでも連絡が取れるようになった

 カリニュアの村はここから東に進んで海まで出たところにある漁村だ

 そこまで遠くないので川沿いに飛んでいけばすぐ着きそうだ

 エンシュがカリニュアを抱えてその漁村まで飛んだ


 ・・・

 到着したとたん目に入った光景

 村は悲惨なことになっていた。漁村は壊滅

 死人はいなかったものの、村としての機能を果たせなくなっている

 僕は癒しの精霊カイユを召喚して怪我人の治療を始めた

 カイユはすごい、まもなく死ぬ者でさえ癒して治していった

 それに僕よりも明らかに早い

 そのおかげで奇跡的に死者は出なかった

「なんでこんなことに…」

 カリニュアが落ち込んだ

 それを彼女の両親が抱きしめる

 無事両親に会えたので良かったけど、住む場所がなくなってしまった

 それについてキーラに連絡すると、すぐに簡易の寝床を用意してくれると言ってくれた

 これで寝床も確保できたけど、問題はこの村を襲った何かだ

 村民の話によると、巨大な触手が海から現れて滅多打ちにしたらしい

 触手一本だけで山のように大きく、今まで見たことないほど大きな触手で、イカに似ていたらしい

 見た頃のない魔物・・・

 もしかしたらあの熊の魔物と関係があるかもしれない

 僕たちはこの廃村となった村に残って調査することにした

 カイユを戻し、村民たちをフーレンに先導させてキーラの用意した簡易の村に案内させた

 立て続けに起こる異変とキーラ暗殺の影。とにかく今は少しでも情報を集めよう

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