学園生活20
驚くほど広い牧場の奥、そこにアニャさんの家があった
猫魔物に騎乗して走ったんだけど、広大な牧場をあっという間に駆け抜けてくれた
まあ私の全力よりかは遅いかな?
道中他にものんびりとした猫魔物を多数見かけたんだけど、アニャさんやエリーちゃん、トゥーラ君が口笛を吹くと一斉に動き出して後をついてきた
丁度ご飯の時間らしい
「すごいすごい、皆可愛い!」
「でしょ! 私がテイムした子もいるんだ。あそこの小っちゃい猫魔物だよ。名前はピンクって言うの。ほら、たてがみがピンク色で可愛いでしょう?」
「うん、目も綺麗だね」
すっかり仲良くなったエリーちゃんとミナモちゃんは一緒の猫に騎乗して楽しそうに話してる
で私はトゥーラ君と一緒に乗ってる
私の頭を時折撫でてくれてすごく気持ちいい
さすが猫魔物牧場の人だけあって猫の気持ちいいところがよくわかってる
気づいたら私は家の中に運ばれていて、そこの猫用ベッドに寝かされていた
このベッドにしてもすごくフカフカ寝心地最高
そのままアニャさんとお母さんが話をしているのをゆったり聞くことにした
「でね、クロン君今希少種の猫魔物が見つかったとかで調査に行ってるの。うまくテイム出来たら連れて帰るって言ってたわ。多分もうすぐ帰ってくると思うんだけど」
「相変わらずなのねクロンは。でも彼って確か犬派じゃなかった?」
「そうだけど私が猫派に変えちゃった。とは言っても犬も相変わらず好きなんだけどね」
二人の会話は当り障りのない世間話ばかりで、しかも二人とも癒される声をしてるからまた眠たくなってきた
それに加えてトゥーラ君がずっと私のことを撫でてくれてるんだもん。こんなに猫に尽くしてくれるなんて惚れるじゃない
そして私はまた夢の中に引き込まれていった
目が覚めると晩御飯の時間になってたみたいで、皆食器を出したり料理を作ったりして準備を始めてる
私はこの小柄な体に猫の手じゃ手伝えないんだけど、猫の手も借りたいって言うほどの忙しさじゃないみたい
ご飯の準備もできてみんなで席に付き、いただきますをしてから食べ始めた
まあいただきますの挨拶はニャフテスやバステト様に感謝するっていうスタイルなんだけどね
いい匂いだ。私のご飯は猫用特製シチューで、文字通り猫舌な私のために人肌くらいまで冷まされていた
「お、美味しいにゃ! スッゴククリーミーにゃ!」
「それはね、猫魔物のミルクで作ってるの。牛猫という魔物でね、牛乳と同じくらい栄養価が高いミルクを出してくれるのよ」
「ふわぁムシャムシャ、それはすごいムシャにゃ」
美味しすぎて、話は聞いてるんだけど食べる口が止まらない
「アハハ、ゆっくり食べてね。おかわりもあるから」
結局お替りを一回して満腹になっちゃった。そうなるとまた眠気が襲ってくるわけで、食器の前でウトウトし始めた
ああ、心地よい夢の世界が私を呼んでいる
深夜
何かガタガタと物音がして目が覚めた
その物音は玄関からしているみたいで、鍵を開けようとしているのかカチャカチャと金属音がしてる
もしかして泥棒?
警戒した私は扉の前に来た
カチリと鍵が開く音がして扉がキィーって開いた
「観念するにゃ泥棒め!」
「うわ!」
男の声だ。もしかしたら子供と女性しかいないから襲いに来た悪い奴かもしれない
私はガブっとその男の指に噛みついた
「イタタタタタタ! 何だこの猫! アニャ! 助けてくれ!」
ん?今この男、アニャさんの名前を呼んだ?
「ど、どうしたのクロン君!」
寝ぼけ眼のアニャさんとお母さんが起きてきてカンテラに火を灯した
アニャさんが言ったクロン君って・・・
「アニャ、帰って来たとたんこの子が噛みついて・・・。新しい子?」
「こらミーニャ! 駄目じゃない噛んじゃ」
「ごめんにゃさいにゃ。泥棒かと思ったんだにゃ」
入って来たのはこの家の主であるクロンさんで、その指を噛んじゃった私はお母さんに怒られたというわけだ
すぐに血が出ている指をお母さんが回復魔法で治してる
「おお、久しぶりだな、シラナミにこうして治してもらうのも」
お母さんはあっという間にクロンさんの傷を塞いでしまった
この速度、癒術師の中でも相当な速さらしい
「お帰りクロン君。それで成果はどうだった?」
「ああ、ばっちりだ! 外に出てくれ」
クロンさんに言われるままに外に出ると、外で大あくびをしている銀色の猫魔物が座ってた
その子は私を一目見るなりゴロゴロと喉を鳴らして私にスリスリしてきた
「な、俺がどれだけそいつを懐かせるのに苦労したことか・・・。なるほど君は話に聞いた通り特別な猫みたいだね」
どうやら彼はアニャさんからすでに私の話を聞いてたみたい
でもアニャさん、曲解して私のことを伝えたね
普通の猫たる私にそんな輝く目を向けないでおくんなさいな
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