第165話修学旅行の予定
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まあそう言うわけで、4人全員に普段の訓練とは違って個別に訓練することに決まったわけだが……どう考えても無理がある。
俺の体は一つしかないのに、4人をそれぞれ相手しろとか無理じゃん。
日替わりで相手をしたとしても、四日ごとに順番が回るわけで、それではまともに教えることなんてできない。
特に浅田。あいつに教えてることは、やることははっきりしているが、それが完成するまでの道のりが他の奴らとは比べ物にならないくらいに長い。
と言うかそもそもゴールがどこにあるのかもわからないので、手助けをしないといけない。
加えて、もし訓練をミスって魔力を暴走させたら危険なので、1人ではやらせたくない。
しかし他の三人も面倒を見ないといけないと言うわけで、時間をずらすにしてもそもそも時間が足りない。
なのでいっそのこと普通の訓練無くしてもいいんじゃね? と言うことに思い至った。
まあ普段のチームでの訓練も大事っちゃー大事だが、もうあいつらには必要ないくらいのものだし、そもそも今の浅田と宮野は一緒に訓練していても意味がないだろう。
ダンジョンだって、わだかまりがある状態で行ったら危険だ。
しばらくはダンジョンに潜っての金稼ぎやら評価獲得ってのはできなくなるが、どっちも今まで十分に稼いできたので問題はない。
そんなわけで、普段の放課のチームでの訓練をなくして、代わりにそれぞれ個別の訓練をすることになった。
だが、結局時間も体も足りないという事実は変わらない。
ので、宮野、安倍、北原の三人はまとめることにした。
宮野は一番やることが少ないし、人がいるところでも普通に訓練ができる。
安倍と北原は、宮野という剣の使い手がいるんだから多少は相手してもらえるし、宮野に教えた『魔法を使う魔法』は安倍にも北原にも教えるものだから、まとめたほうが手間がかからない。
そうなると浅田だけ別になるが、それは仕方がない。
安全を考えれば浅田も他の三人と一緒にいたほうがいいのかもしれないとは思う。
三人ってか、正確には北原と、か。
魔力が暴走しそうになったら結界を張ってもらうことができるし、万が一怪我をした場合でもすぐに直してもらえるからな。
けど、今の状態で宮野と一緒に訓練させるのは早いだろう。
一緒に訓練させるのは、せめて何かしらとっかかりを掴んでからにしたい。
そう言った理由から、最終的にはまず宮野達三人の様子を見て前日の訓練成果の確認とその日の指示を行ない、まあ一時間くらいか? それが終わったら別室で待機してる浅田のところに行って魔力の制御やらの訓練を見ることになった。
そうして訓練……ってよりはもう修行って言ったほうがしっくりくるな。
でまあ、その修行を行ない始めてからおよそ二週間が経過した。
その修行の成果により、宮野達三人は俺の教えた魔法の使い方を習得したし、それを用いての戦闘もそれなりにできるようになった。
まあ、まだできるようになって日が経っていないので、どっちを使うか状況判断を間違える時があるがそれは時間が経てばどうにでもなるだろう。
そして成果が出たのは浅田も同じだ。
浅田はヒロ達の時とは違って一級という格が高いからか、それとも金に糸目をつけないで魔石を砕きまくったからか知らないが、自分の魔力というものを認識することができるようになった。
あとは常時発動している身体強化の魔法に干渉してそれを強化するすることができれば、ひとまずの区切りになる。
とはいえ、そう一朝一夕には行かない。今は強化できたりできなかったりだし、強化できる割合だって1パーセントくらいなもんだ。
今度は魔石を砕くなんて危険なことをしなくても補充薬を使えば魔力の回復はできるので、自己強化魔法の操作の修行に関しては割と安全に進んだ。
それでも普段意図的に魔力を使うことに慣れていない浅田は、魔力の消費と回復を繰り返したことで気持ち悪そうにしていたが。
そんな停滞している様子に浅田本人は足止めを食らっているように感じているが、俺としては十分な成果だと思っている。むしろここまでが順調過ぎたんだ。
ごく稀にとはいえ、操作自体はできてんだ。ならこのまま続けていれば、そう遠くないうちに完全に操作できるようになると思う。
──◆◇◆◇──
俺が宮野達に修行をつけている間にもランキング戦は最終日を終えたようで、終わったと聞いた時には「そういえばまだ続いてたんだっけ」なんて思ったもんだ。
あれ、やっぱ長過ぎると思うんだよな。
色々安全とか調整とか考えると仕方ないところはあるんだけど、それでも負けた奴には待ち時間が長過ぎる。
ちなみに、今年の優勝はお嬢様のチームだそうだ。
まあ当然といえば当然だけどな。あれだけ戦えるんだ。むしろあいつら以外に優勝したチームがあるなら驚きだよ。
多分あのお嬢様にもそのうち二つ名がつくんじゃないだろうか? あいつにはそれだけの力がある。
「そういえば、修学旅行って何泊予定なんだっけ?」
「三泊四日ね」
「三泊かぁ〜」
そんなふうに話しているのは浅田と宮野で、今日は久しぶりにチーム揃っての訓練をすることになっていたので全員揃っている。
全く一緒に訓練しないってのもそれはそれでまずいからな。
まあ普段の授業で一緒なので全く一緒じゃないってわけでもないんだが、やっぱり授業外での訓練はまた別だろう。
浅田も修行が進んで多少なりとも気持ちに余裕ができたのか、宮野とも普通に接することができるようにはなっていた。
心のうちはわからないが、少なくともこうして話す分には何の問題もない。
むしろ今はやる気に満ち溢れすぎていて、テンションがめんどくさい時があると言うかなんと言うか……。
だがまあ、落ち込んでいるよりはよっぽどいい。
「あんたも来んのよね?」
修学旅行ねぇ……。
ジーク曰く、修学旅行先であるイギリスでは、誰かが俺を待っているようなので、とても行きたくない。
だって絶対に怒られる系のやつだし。
「行かなくていいのか?」
「ダメに決まってんでしょ」
「じゃあ行くしかねえじゃねえか」
そんないつも通りと言えるやり取りをしていると、宮野が少し申し訳なさそうに眉を寄せて問いかけてきた。
「あの、言っておいてなんですけど、本当に大丈夫なんですか?」
「なんだ、俺は来るなってか?」
「い、いえっ! そんなんじゃ!」
「冗談だよ。まじにすんな」
俺は肩を竦めながら冗談めかして言ったのだが、宮野は慌てながら否定してきた。
……なんか前よりも反応ってか態度が硬くなってないか?
そんなふうに感じたのだが、考え過ぎだろうか。
もしそうだったらいいんだが、ただでさえこいつらの精神的なケアを失敗したばかりなわけだし、できる限り気にかけておこう。
「まあなんだ、改めて考えてみりゃあ、問題が問題になる前に一度行った方がいいのかもしれないが、もし行くんだったら、一人で行くよりもお前らと行った方がなんか軽く済みそうな感じがするからな。こう、今は生徒達の監督中だから、みたいな感じで」
「弾除け?」
「そんな感じだな。悪いな、なんかいい感じに使って」
「いえ、今までよくしてくれましたし、それくらいのことは、その、いくらでも平気です」
そう言ってもらえると助かるな。割とマジで。
「じゃあ一緒に観光すんのよね? まさか別行動だなんて言わないでしょ?」
そうだなぁ……
「それもいいかもな」
だって一人で行動してると、生徒の監督中って言い訳が使えなくなるし、そうなるとやっぱりジークの言っていた厄介ごとに巻き込まれそうな気がするしで、一緒に行動したほうが結果的に楽になる気がする。
まあ、その場合はそれはそれでこいつらの相手がめんどくさい気もするが、それは仕方がない。
と言うか、まあ……言うほど嫌ではない気がするし。
「え、ほんとっ!?」
「いいんですか?」
「まあ、一応教導官は生徒達と一緒の行動が推奨されてるしな」
学校側からの指示ではできるだけ一緒にいることが望ましいとされているが、絶対に一緒にいろってわけでもない。
だって学生からしたらずっと教師がお目付役としているわけで、それが俺達みたいに女子生徒と男性教導官とか、またはその逆とかだと伸び伸びすることはできないだろうからな。
まあ、あまりはっちゃけて問題を起こしたりするとお目付役である教導官の責任になることもあるので、離れないようにする人や、陰ながら見ている人もいるらしいが。
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