最低ランクの冒険者、勇者少女を育てる 〜俺って数合わせのおっさんじゃなかったか?〜【旧題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!

農民ヤズー

第1話いつかの未来

「俺について行った先に輝かしい勝利を見てるんだったら、それは幻想だ。俺は華々しい勝利なんてのは与えられない。できることは小狡く、小賢しく、卑怯に卑劣に貪欲に、ただ勝ちに行くだけだ。見ている奴は非難するかもしれないし、お前たちを軽蔑するかもしれない。それでもいいのか?」


 そう。所詮俺はその程度のやつだ。かっこいい勝利なんてできない。誰もが憧れるような、素晴らしい成果なんて出せない。

 できるのはただ一つ。みっともなく生き足掻くだけ。


 だがもし、もしそれでもいいと言うんだったら……。


「……冒険者に必要なのはカッコよく戦うことではなく、這いつくばってでも生き残ることです。そう教えてくれあなたですよね?」


 俺の言葉を聞いた目の前の少女は、もっと違う冒険者の姿というものを想像してたはずだ。もっと違う、冒険者というものの理想の姿。

 強く、カッコよく、凄い力で誰も彼も助けてしまう……そんな英雄みたいな冒険者の姿。


「あなたの教えを受けたのはたった一ヶ月程度のことだったけど、それでもその教えは私の中で『冒険者である私』を作る土台になっているし、そのことを間違いだとは思っていない。だから、今更その程度のことで迷うつもりも、惑うつもりも、ありません」


 だがそれでも、そんな本来の理想を捨ててでも勝ちたいと願い、俺みたいな最低位の冒険者に頭を下げている。


 そんな少女の姿を見て、俺は小さく息を吐き出すと俺を見る少女をまっすぐと見つめた。


「……なら、勝たせてやる」

「はい!」


 そして俺たちは動き出す。譲ることのできない大切な想いを守るために。

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