東乃K5-Eastern "K"s Five-

タカハシさん

クレイジー・ダイヤモンド:アダマンタイト(最初のほう)

…凡庸な。午睡に向いたようなけだるい昼。その下がり。

はたして事務所にどのような波風が立つと言うのだろうか。

否、なにもありはしない。

なぜなら波風の立つのが事務所の日常であり、今日もまた彼女という嵐、DDがドアを叩き、それこそ叩き割らんばかりの勢いで叩かれたのでこうしているのだ。

…甲冑兜の金髪女騎士に対して。


「…お言葉ですが、レディ」


「わが主を差し置いてレディと言ったな、貴様!

私は騎士、私こそが騎士である!表に出ろ、教育が必要なようだ」


「DDさん!落ち着いて!

所長もなんでここぞという時に迂闊なんですか!ワザと!?ワザとなの!?」


「いや、私は単に女性に対する礼儀としてレディと言ったまででだな」


「また私を女と言ったな!

これは侮辱である!表に出ぬならここで引導渡してくれよう!」


「DDさん!!」

「こいつめんどくせえ!騎士だとしてもめんどくせえ!」


「いい目をしているな少年。そう私は騎士だ。私こそが騎士である。

そして我が主上こそが唯一のレディ。何も面倒なことはないぞ」


「めんどくせえ!」

「めんどくさい」

「面倒臭い…」

「なるほど」


「…それと、騎士であることは承知している。今も二回聞いたので。

大事な事だと知ってはおりますがこちらとしても何卒聞いて頂きたいことがある。」


「…殊勝だな。

いいだろう、私もこの場では剣を収めよう。だが忘れるな、私は騎士だ。私こそが騎士である。覚えておくように。…して、要件はなんだ」


「三回目!?」

「実質四回目」

「いやもういいから」

「要件!所長!要件!!」


「…お言葉に甘えて。

竜とおっしゃいましたな。ユーサー・タン・ペンドラゴンと。そしてあなたは騎士。

この国にはコトダマという概念がある。これよりお話することはこれを念頭に置いて頂く必要があります。それは『発した言葉がその意味によって現実に影響を及ぼす』

という概念です。ここまではよろしいでしょうか」


「私も聞いたことがある。極東の民は迷信深いという知識だけはあったが、それは我が主の膝下でも同じこと。勝手に親近感を持っておりました。故に私も驚きはしません」


「…いま『親近感』って言葉に自分で反応して一瞬で口調変わったぞこの人」

「ツンデレだ」

「ツンデレフルアーマー女騎士とか属性盛り過ぎなんですがそれは」


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