クレイジー・ダイヤモンド:ダイヤの剣( 日常風景?)
「銘を付けてないと言ったが…他でもない。
これは私が打った刀でな。刃引きをしてある。通常は殺傷能力のない単なるイミテーションとして保管してある。銃刀法違反に引っかかるわけにはいかんのでな」
「いいですね」
「は?」
「…なんの意味があるんスかそれ」
「通常は、と言ったろう
…そもそもこの国には刀狩りというものがあった。一般市民が本来持つものではないのだ。であれば我々もまたそれに従うほうが都合がいい。そのための刃引きだ。
警察権力をナメてはいかんぞ。特にこの国のものは優秀だ。私達など秒で検挙される
…そして非常時にはそれが活きる。いかにも丸腰を装って堂々と持ち歩ける。国家権力のお墨付きで武力を行使できるのだ。切れ味については私の能力で調整する。」
「は?」
「いいなそれ」
「で、調整って?」
「知ってのとおりだ。火で調整する。
むろん刀として通用する強度を達成するには火だけでは足りん。鍛える必要がある。
ならば鍛えられた部分のみを利用できることが絶対条件だ。
必要な強度と鋭さを保つ限界まで分子数を調整し、それだけを残して後を破壊する。
原理上はダイヤモンドでさえ切り裂く刃だ。また熱によって起こる変化は「斬る」行為に有利に働く。分子間の距離を膨張によって押し広げ、刃が介在する余地をより大きくする。また熱は振動を起こす。物体の強度が変動を始めるきっかけとなる。
そして『安定している』ことによって強度が担保される物質は変化に弱い。
これ以上ない相性だ。そして目くらましの効果もある。
その全てが一撃必殺を可能にする。」
「マイクラかな?」
「なるほどわからん」
「…ダイヤモンドは、切れないですよ」
「さよう。
切れないからこそダイヤモンドなのだ。こればかりはいかに鋭く頑丈な刃であれ変えられん。熱も関係ない。『炭素ならば燃える』などというのは所詮フィクションでしか起こり得ない。クリシェというやつだな。もはや”切れない”という事実こそがダイヤモンドの証であり、切れてしまえばそれはダイヤモンドではないと言っていい。
ではどうするか。
ダイヤモンドでなくしてしまえばいいのだ。
つまり『切れるという事実』を先に用意して、そこにダイヤモンドであった物質を役者として乗せ、それから切ればいい。難しいことではない。」
「ムチャクチャじゃないですか」
「わかんねぇ…」
「なるほど」
「瑠美ちゃんわかったの?すごくない!?」
「いや、わからん」
「いや君聞かれてないから」
「だけど…まだわからないことがあります
切れないことがダイヤモンドの証で、それが理論上は切れると言いました。
…じゃあ、なんで今でもダイヤモンドはダイヤモンドなんでしょうか」
「…は?」
「わかんねぇのが増えた!わかんねぇ!」
「その問いには過不足なく答えよう。
それはダイヤモンドが砕けるからだ。砕けるからこそ切れないとさえ言っていい。
砕けることによって切れるという事実を無効化している。
切れる前に砕けてしまえば”切れる”が成立する前に刃を受ける必要が消え失せる。
それでいて砕けてもダイヤはダイヤだ。矛盾は生じない。
最も硬い宝石であるという事実は、同時に砕けることを自らに許すことによってなおさらに”硬い”という評価を不動にしている。武器や防具には向かんということだな」
「わかんないです」
「わかんねぇ!」
「ダイヤで殴ったり殴られたりとかダイヤに失礼にもほどがあるんですけど!?」
「…最初からそういう話しとらんかったかね俺たち」
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