神の思し召しはいずこにありや?


 残された皇帝陛下が、

「皇后よ、聖女は信じられないほど聡明だな」

「雪乃さんは神が遣わした聖女、何か価値観が違うのでしょう」


 皇太子殿下が、

「それにしても惜しい、男だったら……しかし幸いだ、帝国に遣わされたのだから……何が何でも帝国にいてもらわなくては……」

「幸い、情に厚い女性のようだし、その辺から攻めたのは良策だった」


「弟には悪いが、万一雪乃嬢が未亡人となっても、帝国にとどまっていただくようにしなくては……とにかく『王女』にしたのは良策でした」

「弟は気づいていないようだが、武芸も名人クラスと報告がきている」


 皇帝陛下が、

「どういうことか、手あわせでもしたのか?」

 皇太子殿下が、

「雪乃嬢の住まいの前には、憲兵の分署を作るように命じているのですが、何人か軍の武術師範を混ぜていたのです」

「その者達の見るところ、並々ならぬ武術の嗜みが垣間見える、と報告していた」


 皇后様が、

「その話ね、慶子も云っていたわ、薙刀は直心影流薙刀術と思われるけど、多分、自分よりも強いって」

「薙刀で慶子より強いのって、後は宗家なのだけど、その宗家がね、華族高等女学校で雪乃さんをみたそうよ、感想がね、古今無双だそうよ……」


「その雪乃さんが、我が家に嫁に来てくれるなら、母親としては有り難いと思っています、息子がお尻に敷かれても、文句など有りませんね」


 皇太子殿下が、

「雪乃嬢を娶るなんて、弟に譲りたいですね……娼婦でも買いに行ったら、殺されそうですから……」


 皇太后様が、

「いろいろ私たちが、雪乃さんの人生を振り回したようですね」


 皇帝陛下が、

「母上、確かに気の毒ではありますが、神が遣わされたのですよ」

「しかし、神は今回の件、聖女の希望を通し、それを利用することは、是とされておられる、そのように思えるのです」


「皇太后様、ペニシリンが良い例ではありませんか」

「あの時、神の御文に『聖女は心して受け取り、ミズホの国に恩恵を与えよ』とありました」

「雪乃さんはその御文の指示により、知識を披露したのでしょう」

 皇后様がおっしゃっています。


「神の思し召しはいずこにあるのか……雪乃さんは神の玩具なのね……」

「たしかに、雪乃さんをなんとしても手放すわけにはいかないわね……」

「『毒を食らわば皿まで』、雪乃さんの情に泣きつくのが正解なのでしょうね」


「皇太后様、案外に雪乃さんは楽しんでいると思いますよ」

「私の見るところ、この地の女の習い、『S』を楽しんでいるように思えますから」


 皇后様が、そんな感想を述べますと、

「そうなの?ならそれなりにすれば、いいのよね、雪乃さんが望んでいるなら、こちらとしても、心が痛まないわ♪」

 なにか、舌なめずりしているような皇太后様でした。

 

「母上、あまり露骨な手段は避けて下さいよ」

「大丈夫よ、仕方無い状況に持ち込んで、情に訴えれば良いのでしょう?」


 皇太子が、

「女というより部下にしたいですね、雪乃嬢、本人がその気になれば軍司令官も出来そうに思えるのですよ」

「同意するが、なってもらっては困るぞ、あの才能は民政に使用して貰わねばならぬ」


「とにかく、聖女を帝室の一員として良かったと思う……帝国にとって、聖女の出現は神の祝福であろうな」

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