ヘクセンハウスに神のお力を


「申し訳ありませんが、今日は私の手作りのクッキーなのです……」

「雪乃さんの?なら、ますます興味があるわ、焦げていてもいただくわよ♪私も若いころは焼いたけど、酷い味がしたのよ♪」


 洋子様に食べてもらおうと、日曜日に戻ってきたとき、暇に任せてせっせと作ったのですよ……

 一応、『女子としての必要知識については、さらに閲覧すれば、理解の上、行使できる』という、神様からのお力を頂いたので、難なく作れました。


 神様に頂いたお力を、おそろしいほど実感した次第です。

 検索した瞬間にノウハウなど一発で理解でき、材料、調理道具さえあればどんなモノでも、美味に作れるのです。


 信じられないことに、イメージさえ出来れば、クッキーでお菓子の家、『ヘクセンハウス』まで作れるのです、型紙なしですよ。

 オーブンは古いタイプのモノしかないというのに、温度など『カン』が知らせてくれるというか……


 ジンジャービスケットの生地をつくり、せっせと作り始めると、あっという間に可愛らしいお菓子のお家が完成!


 なんだか、勢いで半ダースも作ってしまって……どうしましょう♪

 そのほか、クッキーのカテゴリーに入る、ロシアケーキも結構作ったのです。

 

 で、取りあえず月曜日に二人で、『ヘクセンハウス』を一つずつ食べようとしていたのです。


「これ、本当に雪乃さんが?」

「はい……お口に合うかどうか……」


 皇后様、驚いています。

 

 洋子様が、

「雪乃様、これをお一人で?」

「二人で一緒に食べようと思いまして……とにかく食べませんか?」


 で仲良く食べましたよ。

 ロシア・ケーキなどは、メイドさんにもあげました。


 我ながら美味しく出来ています、まぁ自信はあったのですよ♪


「宮殿の料理人のモノより美味しいわ♪」

「良かったです、まだたくさんありますので、よろしければお土産にいかがでしょう?」


「いいの?」


「皇太后様へも、お渡しいただければ……」

 で、残り四つの『ヘクセンハウス』を全てお渡しします。


「悪いわね、ところで図々しい頼みをもう一つ、息子の観戦に行くとき、貴女のお手製のお弁当を作って欲しいのよ、二人で作ってくれれば、なお良しね」

「雪乃さんなら、きっと美味しいお弁当を作ってくれると思うの」


「その……作ったことがないので、大したものは作れないかと……」

「構わないわよ、おにぎりだけでもいいから♪きっと喜ぶわよ」


 私は親王殿下にお弁当を作ることにしたのです。

 勿論、洋子様もお手伝いしてくれる事になったのですよ。


 翌週は校外運動会があります、なんてことは無い、遠足ですよ。

 でも、校外運動会というだけあって、歩きなのですよ!

 観光地へのバス旅行なんて、かけらもなかったです!


 でもお弁当のよい練習にはなりました、ただ足は痛かったですね!

 乙女に十キロも歩かせるのですからね!


 次の日曜日、私たちは土曜日から、バタバタと準備しているのですよ。

 気合い十分、愛する殿方に、乙女の真心を届けるのです!

 野菜の煮付け、下準備を済ませて、早めに寝ることにしました。


 日曜日、早朝から私たちは、愛する親王殿下のためにお弁当の準備!

 あれ、親王殿下が愛する人?いつの間に?そう言えば、お弁当を作るのが楽しくて……


「洋子様、おにぎりをお願い!」

 お弁当は三段重ね、四つも作ってしまいました。

 

 一段目は各種の小さい目の『おにぎり』……

 二段目は牛そぼろ旨煮、鶏の照焼、鶏つくね、ローストビーフ、お肉関係……

 三段目は海老芝煮、蓮根挟み揚げ、そのほか野菜や根菜類の煮物……

 少し小さめのお弁当箱にぎっしりと、詰めました。


 完全に和風ですね。


 あれ、勢いで作ったトンカツやコロッケはどうしましょう?

 

 結局、カツサンドとコロッケを挟んだコッペパン、ソーセージにポテトサンドを詰めた洋風バスケットも四つ……


「雪乃様、壊れていませんか!」

「えっ」 

「三人分にしては多すぎませんか?殿方は親王殿下お一人ですよ!」


「……」

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