上泉洋子お姉様


 さて、バタバタと部屋を掃除し、カーテンを替えたかったのですが、寮の備品であり、性能重視のものらしく、替えられないのですね。


 絨毯も華美ということで、持ち込み禁止。

 慶子様が買って下さったドレスも駄目。


 ただ皇太后様と皇后様から贈られた品は、なんともいえない顔をされましたが許されました。

 当然、皇帝陛下からの『恩賜の時計』も、致し方無いとのことでした。

 

 寮室は机・イス・ベッド、何故か卓袱台、そして衣装ロッカーは備品でしたので、持ち込み不可でした。

 通達があったので大物は持ち込まなかったのです。

 で、クッションとか枕とか可愛い物を持ち込んだのですが、絨毯とカーテン不可は想定外、ドレスも想定外……


 模様替えも終わり、遅い昼食を取ろうとしていると、廊下をドタバタと荷物を搬入する音がします。

 まぁ、大した荷物など持ち込めないので、直ぐに終わるでしょうね。


 のんびりと、お弁当など食べようとしていると、トントンとドアをノックする音がします。

「今開けます!」


 ドアを開けると、なんとも可愛い娘さん……

 でも確実に上級生に見えます。


「隣で音が聞こえたので、ご挨拶に伺いました、上泉洋子、三年です」

「申し遅れました、私は今年入学した朝比奈雪乃、いま遅いお昼を食べていたところです、よろしければ上泉お姉様もいかがですか?」

「それは嬉しいお誘い、よろしいのかしら?」

「ご一緒頂ければうれしいですわ、歓迎しますわ」


「どうぞ」

 と、座布団を勧め、同じようにお皿にとりわけ勧めました。

 よかった、座布団も四つ持ち込んでいて。


 お皿やティーカップは一式持ち込んでいます、怒られなかったですからね。

 でお皿に取り分けて……

 なんせ五段重ね、ご飯もおにぎりと助六……残りの三段にはおかずがぎっしり……


 いつも不思議なのですが、この帝国の住民はどう見てもヨーロッパ系……なのに、社会風習は近代の日本……

 目の前のブロンドの髪の方が、お箸を持って助六を食べている姿は、違和感しかありません。

 大体、皇帝の紋章は『フルール・ド・リス』、菊花紋ではないのですよ。


「凄いですね!」

「そうでしょう、義理の姉様が気合いを込めて用意してくれたのですが……全部食べたらね、女にとって肥満は敵ですから……」

「夕食に食べるとしても多いのです」

「確かに、二人で食べても余りますね」


 この寮室、それなりに広いのですよね、卓袱台も四人ぐらいで囲めるのですね。


 上泉お姉様は見事なブロンドの髪、凜とした雰囲気があり、少し中性的な雰囲気があります。

 とてもお綺麗なのですね。


 見てくれと違い、案外気さくな上泉お姉様。

 二人でお重をつつき、長々と女子トークを楽しんだ四月五日でした。

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