とある家庭にもたらされた小さな奇跡。
かと思いきや、まさかの世界規模！
食糧問題に外交問題、ここまで風呂敷を広げてしまうと収拾がつかないのでは……？

と、途中まで思っておりました。
ラストで、広げた物語がぎゅっと濃縮されましたね。
冒頭の「奇跡」からの終盤「奇跡なんかじゃない」の流れが切ないです。

自主企画『【短編限定】より良い作品を書くための意見交流会』にご参加いただきありがとうございます。主催の森山満穂と申します。作品を拝読致しましたので、感想を書かせていただきますね。

まず、ストーリー設定がすごく面白かったです。風刺が利いていて、とてもよくできた作品だなぁと思いました。喜ばしいことだと思っていたことがだんだん戦慄の走る悲劇に変わっていく展開にどうなっていくのだろうと先を求め、いつのまにか物語に深く引き込まれていました。世界が混乱に陥る状況はリアリティがあり、現実世界の負の部分を上手く取り入れていて、素直にすごいなぁと思いました。
そして、結末がまたいい！主人公の悲痛な叫びが強く心に響きました。人智を超えた奇跡より平穏な日々が大切だったということに気づかされる台詞ですね。でも、父が生き返ったことを本当は喜びたかったんじゃないかなと思わせるような切ない結末に本当に胸が締めつけられて、泣きそうになりました。
あと、個人的にタイトルが物語と合っていて素敵だなと思いました。

欲を言えば、主人公の心情をもっと書いてもよかったんじゃないかなと思います。この作品では一貫して文章が説明的というか、俯瞰目線で描かれているので、その冷たい感じがまたこの作品に合っているとも思うのですが、世界の変化に対して主人公がどう思ったのか描かれていると、この作品はもっと良くなる気がしました。
初めに主人公が父と対面してどう思ったのか？母が殺されて、父と二人になった状態で主人公は何を思ったのか？最後のシーンに至るまでの心の軌跡。
中盤に主人公の家族にフォーカスした場面なんかを挟み込んでみたりして、主人公の心情の変化を描くと、物語の厚みがぐっと増すような気がします。

長々と失礼しました。あくまでも個人的な意見ですので、参考程度に読み流していただければと思います。棗さんの今後の執筆活動がより豊かなものになるよう祈っております。重ねてにはなりますが、企画に参加していただきありがとうございました。

ものすごく最高な作品でした。現実世界に死者が生き返るというファンタジー要素を加え、その要素が加わったことによって引き起こされる問題、変わっていく社会体制など、地に足がついたような流れでとても読んでいて楽しく、わくわくしました。流れも良い。主人公目線から始まり、社会がどんどんと変わっていく様を描写することで目線が遠くなり、最後にぎゅんと主人公の悲劇を描き出すこの書き方は読んでいて飽きません。一つ難点を上げるとするならば、主人公の心情描写の少なさ。銃で撃つ際、母が殺された際、どのような心情だったのかがあまりリアルに感じることが出来ません。心情描写をより明細にかくと、更に素晴らしい作品になると思います