第6話 ジェイドの4年間。
ジルツァークの話ではジェイドが合流するまで時間がある。
ミリオンはその間にジルツァークに聞いてみたい事があった。
「ところでジルツァーク様…聞いても良いですか?」
「何?」
「ジェイド…、彼に…彼の4年間に起きた事を教えてもらえませんか?」
「ミリオン?」
突然の申し出にセレストが驚く。
「なんで彼があんなに色々なモノを疑い憎んでいるのかを知りたいです」
「うん。いいよー」
ジルツァークはなんの問題もない様に答える。
「あの?宜しいのですか?」
「うん。きっとジェイドなら「構わない」って言うと思うし」
驚いて聞き返すセレストにジルツァークが笑顔で答える。
そうしてジルツァークが話し始めたジェイドの4年間は熾烈なモノだった。
4年前…亜人達はジルツァークの予定より早く穴から出てきて防人の街を占領する。
そして同時に多数の亜人達がグリアへ進行する。
途中の村や街は無視をしての電撃作戦。
何故グリアの場所を正確に知っていたのかは誰もわからない。
そしてジルツァークの支援が及ばない夜にグリアは襲われる。
城は一瞬で壊滅。
グリア王と王妃は最後まで戦ったが殺され、体の勇者として覚醒を始めていたジェイドは妹と逃げ延びようとしたが亜人に捕まる。何をしても殺されなかったが捕らえられた目の前で妹や家臣達が次々に殺されるのを一晩中みさせられた。
そして防人の街に連れて行かれ心を折るための拷問が始まった。
まずは市中引き回しで人間達からの石打や棍棒や棒による責めを何日も繰り返させられる。
そして夜には同じ人間による辱め。
だが辱めに関しては昼のうちに備えていたジルツァークの介入で防がれた。
「こればかりは止めたかったから介入したの。これは止めないとジェイドが完璧に壊れてしまって勇者が絶えてしまうから。
そうなると亜人の王にもモビトゥーイにも勝ち目がなくなってしまうの。
でもこれ以上の介入はモビトゥーイに介入をさせる事になるから…。
この世界は私とモビトゥーイ二柱の神によって生まれた世界。
私が一つ行動を起こすとモビトゥーイに一つの行動を許すことになる。そうなれば亜人を助けることも人を殺す事も出来る。
そしてジェイドは勇者。
勇者の為にこれ以上の介入をしてしまうとモビトゥーイがどんな行動に出るか、それで世界がどうなるかわからなかったから…
その後の私は見守って励ますことしかできなかったの」
それから年が変わるまでは心を折るための単純労働と人間による拷問。
細身だった体付きが筋肉質になるのにそう時間はかからなかった。
そして年が変わると戦闘奴隷にされたジェイドは役立たずで落ちこぼれの亜人の始末、亜人達に逆らったりおかしな態度を見せた人間の始末なんかを任されて殺し合いをさせられた。
殺しても死ねないジェイドは処刑人になった。
女子供も関係なく始末させられた。
どれだけ拒んでも「奴隷の首輪」からの激痛に動かされ、それすら克服をするようになると「支配の玉」と言う奴隷に強制的に言う事を聞かせられるアイテムで言う事を聞かせられて始末の片棒を担がされた。
去年の終わり頃…
ジェイドは「支配の玉」すら克服をした。
その後はずっと広場で朝から晩まで亜人と人間に痛めつけられるだけの日々。
それを好奇の見ていた人間達もジェイドに石を投げつける。
そんな日々だった。
「……そんな…」
「4年も…」
「勇者が3人揃わないと亜人の王やモビトゥーイを倒せない。
だから亜人達はジェイドを殺すか、心を折りたかったの。
でもその4年でジェイドは強くなった。
心も身体も強くなったの」
ジルツァークは暗い話を誤魔化すようにニコニコと笑って言った。
2人は何も言えなかった。
亜人達を街ごと吹き飛ばす決断。
獄長の行動を見抜けなかった失態。
単に防人の街に住み着いた亜人共を始末すれば人間達を助けられると思っていた浅はかな考え。
それらを痛感していた。
「あ、ジェイド来た!」
ふわふわと浮いているジルツァークが街のあった方角から歩いてくるジェイドに気付くと両手を広げて迎えに行く。
「ジェイド〜」
「ジル。2人は無事か?」
「うん。あそこで待ってるよー」
「よし、案内してくれ」
ジェイドが2人の元に着くと先ほどまでの険しい顔つきは無くなっていた。
「アトミック・ショックウェイブは見事だった。感謝する。
セレストも見事に退路の確保をしてくれて感謝をする」
「いや…僕たちこそすまない」
「あ?」
いきなり謝られたジェイドは怪訝な顔でセレストを見る。
「亜人達を甘く見ていたわ」
「どうした?」
ミリオンまで神妙な顔をしてジェイドを見る。
「セレスト達がジェイドの事を知りたいって言うから4年の話をしたんだよ」
「なんだ…そんなことか…聞いて楽しいモノではないが聞きたければ聞くと良い。構わない。
その事でお前達から油断が消えて亜人共を根絶やしに出来るのなら安いモノだ」
当のジェイドは鼻で笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます