87話 飛べた魔女は電波障害中

 今日も元気だカフェオレ美味い。

 眠気覚ましに再び漫画喫茶に引きこもった私はズズズとカフェオレを飲んでいた。外が寒かったので、生き返る。……そう思うと餅つき大会のご老人方は元気だな。何だろう。やはり食を極めた戦闘民族だからなのだろうか?

 それにしても、ボタン一つで温かい飲み物が出てくるとか本当に凄い。魔女の能力で発火ではなく、瞬間湯沸かし器的な能力を持っている人はいないだろうか? もしもあればとても便利そうだ。一瞬でお茶も入れられるし、お風呂も沸かせる。異界で利用した、銭湯とかすごい気持ちいし、できるなら風呂屋をやってくれないかな。

 でも引きこもり豚が突然入ってきたら周りがびっくりするので、異界の物を渡す形で交渉して、貸し切り風呂にして貰うのがいいかもしれない。……入浴剤とか喜ばれそうな気がする。

 そうしたら、【予言の魔女】と【癒しの魔女】と公爵令嬢を誘って、皆で温まるのだ。


「そうと決まれば、コルちゃん達の目を借りて様子を伺わないと……あー、まだ駄目か」

 コルポットのチャンネルは電波障害が起こり、映像が繋がらず、砂嵐だ。王子はいまだに何か私に隠し事をしているらしい。……もしかして、誰かとデートとかしているとか?

 うーん。無きにしも非ず。

 私もずっと婚約破棄、破棄、言っちゃっているし。あの顔だ。私がいない間に無意識にハーレムが出来上がっていてもおかしくない。

 ……そもそも。王子の周りの女性率高くないだろうか? 私は子豚なので除外しても、私が知っているだけでも【予言の魔女】と【癒しの魔女】、更に公爵令嬢の三人とは定期的に会っている。

 いや、落ち着こう。【予言の魔女】は義理だけど兄弟関係で、【癒しの魔女】は兄の嫁。公爵令嬢も別の人との結婚が決まっている。

 はっ?! 禁断の恋狙い?!

 目指せ昼ドラ?!


「まあ、冗談はさておき、どうしようかなぁ」

 本は大体見て回ってきたし、家電コーナーも見てきた。本当なら現地調達が地元の方には一番だろうけど、荷物がかさばると異界への空間が渡れないので、後で能力を使って購入だ。

 そんなわけで、いつでも一時帰宅が可能な状態だ。でも王子または公爵令嬢の使い魔の視界が借りられない限り、まだ帰ってきてほしくないと言われている気がする。


 仕方がない。また別の使い魔の視界を借りて、暇つぶししよう。上手くいけば王子の隠し事が分かるかもしれない。

 そう思って色々視聴してみたものの、やっぱり王子達が何を隠しているか、まったく分かりそうもない。ここに先ほど読んだ、バーローが口癖の見た目は子供、頭脳は大人な探偵さんがいてくれれば。もしくは、じっちゃんの名前にかけてくれる人でもいい――いや、駄目だ。彼ら二人が揃うと、確実に私が死ぬか犯人になる可能性が高い。映画編なら、漫画喫茶とか、今飲んでいるカフェオレが爆発するに違いない。やめて。私はリア充ではないから爆発したくない。

 だったらもう少し子供向けで、おしりが顔な探偵とか……いや、いきなりおしりが顔の人が出てきたら叫ぶな。IQは1104らしいので私より賢いのは確かだけど。

 そんなアホな事を考えながら使い魔チャンネルを変えていると、再び真っ暗な画面に出会った。

 音声も聞こえないし、前の時と一緒っぽい。


「また病気の使い魔? 性質の悪いのが流行っているのかな?」

 可哀想なので、今回も強制的に元の世界に帰ってもらおう。まったく。使い魔のご主人達はどうしたのか。ちゃんと病気になっても面倒を見てあげないと。

 遠足は家に帰るまでが遠足と同じように、契約だって無事に解除するまでが契約なのだから。

 私はぷりぷりと怒りつつも、使い魔達を助けるために転移した。

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