小惑星三国戦争

フジセ リツ

開拓使

第1話 小惑星へ

 "小惑星は、宇宙の原野に無数に転がる輝く金の石である"


 後年の宇宙開拓史研究家J.J.サガンは、名著の[小惑星連合の成立]で、こう述べている。

 小惑星連合の成り立ちは、次のとおりである。


ー西暦2020年、小惑星探査機が地球に小惑星帯から持ち帰った土には、その後の小惑星開拓を決定付ける有用な鉱物スニタニーが含まれていた。

このことが、後のエネルギー改革を促す結果となる。


2020年代はエネルギーの転換点であった。

つまり、2010年代までエネルギーとして依存していた石油から、電気への転換であり、人々は電気であれば環境に良いと両手を挙げて喜んだ。

自動車メーカーは、挙って、大気汚染を引き起こすガソリン車から、電気自動車への転換を図った。皮肉なことに、火力発電こそが、大気汚染の要因の一つであったのだが。

人々がそのことに気付いたのは、電気自動車が普及した後のことだった。


発電には、環境破壊が伴う。

 核発電は数多の事故で停止に追い込まれた。

世界の人々やメーカーにとって、望んでいたのは、大気を汚染せず、森林伐採の必要のないクリーンな発電であり、エネルギーであった。


小惑星で採取された土には、研究者の長年の研究の結果、地球上には存在しない鉱物が多く含まれていることが判明したのである。


その一つであるスニタニーは、地球上に存在しない新たな鉱物であった。2077年、ペルーの科学者A.バグス博士がスニタニーにある複合化学物質を添加すれば、容易に自己発電が可能となる発見をし、スニタニーの獲得こそが世界の新たな目標となった。


 西暦2080年代、地球の東端に位置する水没の危機にある旧日本国から、スニタニー獲得のため、小惑星帯へ向かう多くの移民船が宇宙へ解き放たれ、スニタニーを目指し、スニタニーラッシュの幕が切って落とされたのであった。

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