第24話 諦めたくない

「...ン、、レン?」






「ん」






「なんだよぼーっとして…」






サイン会が終わり、呆然としていると

ケンが怪訝そうに顔を覗きこんでくる。







「ごめんごめん、なんの話してたっけ?」






「だーかーら!今日ずば抜けて可愛かった子がいたよねって」







「…そう?」






正直めぐが来たことの衝撃が多すぎてそんな事など気にかけていなかった。





だからその子の事はよくわからーー







「確か、、めぐちゃん!!」






「え?」






突然飛び出る名前に目を剥く。






「めぐちゃんって子、めっちゃ可愛かった!」






「あー、あの子は確かに可愛かったな」







「でしょー!」






「レンのファンっていうのが残念、、まあ僕のファンにも負けないくらい可愛い子いるけどさ」







「おい、ファンの顔にランク付けすんなよ」







「え、なになに怖いんだけど」







急に睨みつけた僕にわざとらしく怖がるふりをするケン。







「まさかオキニなの?」







「…めぐはそんなんじゃっ」







「?今の言い方じゃめぐちゃんと知り合いみたいに聞こえるんだけど」







「!!めぐは、、」






一瞬躊躇った後に僕はめぐとの関係を2人に説明し始める。







「えー?!そんな事ある!?」






全てを聞いたケンとソウマは驚きに目を見開いた。







「…正体知って来たって感じではなかったけどな」







「うん、、僕もそんな気がした」







ケンの言葉に僕は同意する。







「となると、、本当にレンのファン?」






「っ、、」






ファンという事は僕の事を好いてくれているということなのに僕の心は複雑だった。






レンは好かれてても詩音の事はどう思ってるだろうか、、?







あれから、正体に気付かれたと思った僕はめぐと距離を置くことにした。






そしてあの1ヶ月の間に起きた事は全て忘れると決めた。







だけど僕の目の前にめぐが現れた途端に嬉しくなって、だけど詩音ではなくてレンとして接されることが切なくて。







まだ忘れる事ができていないんだと、そして自分がめぐに惹かれているんだと嫌でも気付いてしまった。







自分でもどうしてこんなに彼女に惹かれているのか分からない。







「…で、その子はお前の正体をまだ気付いてなかったわけだけど、、また会いに行くのか?」






「ファンと密会なんてバレたら最悪だよ?」







2人の言葉に返事ができない。






だけど……だけど僕はーー






「……僕は諦めたくない」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る